【2017冬】ワクチンが足りない?最新のインフルエンザ予防接種事情

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2017年の冬はインフルエンザワクチンが不足する可能性があるといわれています。テレビやインターネットなどの報道で、ワクチンの不足についての話題を目にした方も多いのではないでしょうか。

ワクチンが接種できるのか、不安にかられてしまうかもしれません。しかし、かならずしもワクチンが足りない訳ではないのです。ここでは、厚生労働省の資料を参考に状況をひも解いていきます。

2017年冬にインフルエンザワクチンが不足するといわれる理由

厚生労働省が、定期的に観測を行っている全国5000箇所の医療機関での患者数をみると2017年のインフルエンザ患者数は10月20日現在、全国で862人。

これは370人と例年並みだった2015年より多く、10月末に流行が宣言された2016年の数字1158人に迫る感染者数です。(※1)

2016年、インフルエンザワクチンの使用量は2642万本。

対して、本年度のインフルエンザワクチンの生産予定数は約2528万本です。(※2)

昨年度に迫る患者発生数でありながら、昨年並みのワクチン総量が確保できていない。

このことがインフルエンザワクチンが不足するといわれる理由です。

今年はなぜワクチンの今年はなぜ、ワクチンの製造が遅れたのでしょうか。

そのためには、まずワクチン製造の大まかな流れを知る必要があります。

 

インフルエンザワクチンができるまで

インフルエンザはA型、B型という種類の他、いくつかの亜種が存在し、流行するウイルスは毎年変わる可能性があります。

複数種のウイルスに対応できるように3種または4種のワクチンを組み合わせて接種用のワクチンを作成します。

しかし、昨年製造したワクチンが再び効果的とは限らないため、厚労省では毎年、ワクチンの対象になるインフルエンザワクチンの種類(ワクチン株といいます。)の選定を行います。

インフルエンザワクチンはこのワクチン株の選定結果が発表されてから生産にとりかかります。

ワクチンの製造には“鶏卵”を利用します。

管理されたニワトリから生まれた卵にインフルエンザ株を注入して増やした後、精製し薬品処理を行いワクチンの毒性を取り除きます。

製造したものは安全性確認のため、国家試験を受ける必要があります。

ある製薬会社の場合、ウイルス株選定後8月中にウイルスを製造。

その後、国家検定を受け、順次出荷をして、流行シーズンに入る前に供給を完了しなければなりません。(※3)

 

ワクチン株選定の遅れが大きく影響

ワクチン開発の出発点になるワクチン株の選定基準は、WHO(世界保健機関)の推奨と国内の感染状況を踏まえて検討されます。

通常5月から6月にはウイルス株の選定が行われ、ワクチンの製造にとりかかりますが、今年(2017年)はその選定がうまく行かず、昨年と同じワクチンを製造することになりました。

ウイルス株の選定と発表が行われたのは、7月中旬にずれ込んでしまいました。(※4)

ワクチン株の選定が例年より1カ月以上遅れたことで、ワクチンの製造量に影響が出てしまったのです。

では、本当にワクチンの量は足りないのでしょうか。

 

インフルエンザワクチンは必ずしも不足する訳ではない。

たしかに数字上でみれば、昨年に比べてインフルエンザワクチンの数が不足しそうですが、発表されている数字をみると、必ずしもそうとはいえないのです。

なぜなら、「毎年発生している余剰ワクチン」「ワクチンの報告単位があいまい」、という点に疑問が残るためです。

 

1.毎年発生している余剰ワクチン

昨年2016年度は2642万本、一昨年は2565万本のワクチンが接種されています。

しかし、生産されたワクチンのすべてが接種で使われる訳ではありません。

インフルエンザワクチンの製造量と実際に使用量を比較してみると、製造された本数に比べて、実際の使用量が大幅に下回っています。

2016年度は102万本、2015年は507万本のワクチンが使用されてない事実があります。

 

2.ワクチンの報告単位があいまい

厚労省が集計・発表しているインフルエンザワクチンの製造量と使用量の推移の数字も実態に即しているとはいい難い面があります。

報告では1mlを1本とし、1回の摂取量として計算しているのです。

しかし、厚労省のワクチン接種時の規定としては以下の様になっています。

 

  1. 6カ月以上3歳未満は1回0.25mlの量を(期間を空けて)2回接種
  2. 3歳以上13歳未満は1回0.5ml の量を(期間を空けて)2回接種
  3. 13歳以上は1回0.5mlを1回接種

 

しかし、製薬会社のバイアス(薬液を入れた容器)には1本のバイアスから複数回の接種を行うことも可能なものもあります。

つまり、1mlのワクチン容器から大人と子供合わせて2人や子供3人分の接種を行うことも可能であるのです。

以上の2点から、厚労省の発表数字はワクチン実用数の最低限の数字といえるのです。

事実、厚労省が2017年に行っている各都道府県への通達では、以下の様な要望が記載されています。

 

  • 可能であれば、1本のバイアスから複数回の接種を行うこと
  • 医療機関の在庫量の把握
  • 大量のワクチンが発注された場合の分割納入の実施
  • 大量の返品が予想される医療機関の監視や、医院名の公表などによる注意喚起
  • 地域間でのワクチンの融通を連携すること

 

厚労省がワクチン余りを問題として認識し、改善への行動を行っているのが良くわかりますね。

2017年、厚労省の計画では12月3週までに計画した2500万本余りのインフルエンザワクチンを供給できると予想しています。

ワクチンの余剰対策がしっかりと行われ、予定通りの供給達成されればインフルエンザワクチンが必ず不足するとはいえないのです。

 

流行状況を踏まえた適切な接種が必要です

インフルエンザのもっとも流行する期間は、例年12月から3月頃までです。

とくに流行するのが例年2月頃。

ここ数年の感染者数の数字をみても、1月中に1~2万人程度であった人数が2月には15~20万人に増加しています。(※1)

ワクチンの接種後、効果が持続する期間は5カ月程度。

接種してからインフルエンザへの抗体が体内で獲得されるまでには2週間ほどの時間が必要です。

また、13歳以下の場合は4週間の間隔を空けて2回の接種が必要です。

流行する期間を踏まえて12月中までの早めの接種を行うことが大切です。(※6)

 

インフルエンザワクチンの接種には助成がある場合も

インフルエンザワクチンの接種は基本的に健康保険の適用外になります。

しかし、一部の地方自治体や企業では、インフルエンザの予防接種に助成金を出している場合もあります。

高齢者や児童など対象はそれぞれ違いますが、確認してみるのもよいでしょう。

予防接種法(昭和23年法律第68号)にもとづく定期接種の対象者等については、接種費用が市町村によって公費負担されているところもありますので、お住まいの市町村や勤務先の健康保険組合に問い合わせてみるとよいでしょう。

 

慌てずに医療機関へ相談をして確実な接種を。

2017年はインフルエンザワクチンの生産数は例年に比べて少ない状況です。

しかし、接種をする側が必要以上にワクチンの不足に過剰に反応してしまう必要はないように思われます。

事前に予約をとり、家族でのまとまった接種などを行うことで、ワクチンの接種は問題ありません。

むしろ、医療機関側からは、今まで過剰に生産と破棄がされてきたインフルエンザワクチンの適正発注と使用が進むよいきっかけになるかもしれません。

かかりつけ医や地域の医療機関へ相談、予約をするほか、自治体によっては高齢者などに接種を推奨する制度を設けている所もあります。

インフルエンザの発生状況については、厚労省のサイトで都道府県ごとの発生状況を確認できます。(※7)

また、国立感染症研究所のサイトでは色分けした地図でインフルエンザの発生状況をみることも可能です。(※8)

インフルエンザは、日々の手洗い・うがいを行うことで予防が、ワクチンの接種で症状の発症や重症化を押さえることができます。

ワクチンが足りないといった報道に慌てず、医療機関などと連絡をとり、確実に接種して行きましょう。

 

参考・引用
※1 厚労省 インフルエンザの発生状況について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html

※2 厚労省 季節性インフルエンザワクチンの供給について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000177816.pdf

※3 デンカ生研株式会社 ワクチンの製造
http://denka-seiken.jp/jp/special/factory/factory01.html

※4 平成29年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/20170712.pdf

※5 厚生労働省 インフルエンザワクチンの添付文書
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000013nne-att/2r98520000013nz4.pdf

※6 厚生労働省 インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

※7 厚労省 インフルエンザと予防接種
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp1107-1f.html

※8 NIDU国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html

 

writer
石井 けん
子育てをしながら父母の介護を行う1児のパパ。子育てや働き方の記事を書くかたわら、医師へのインタビューを行うライターとしても活動中。

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