認知症の原因は?原因とされている生活習慣や疾患、環境変化など|在宅医療と認知症(2)

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今回は認知症の“原因”について解説していきたいと思います。

認知症とは第1回でもその定義を紹介しました通り「生後いったん正常に発達した種々の精神状態が慢性的に減衰・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」です。

つまり上記のような状況を引き起こす疾患すべてが認知症の原因疾患となります。

そのため認知症の種類にもさまざまなものがあり、おおまかに分けて変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病、レビー小体病など)による認知症、脳血管性認知症、脳代謝性認知症、正常圧水頭症による認知症、脳腫瘍などによる認知症、慢性硬膜下血種による認知症、感染による認知症、薬物による認知症、低酸素による認知症、ミネラルバランスの崩れによる認知症があります。

 

その中でも代表的な疾患4つは「アルツハイマー型認知症」、「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」があり、これらが全体の90%程度を占めているとされます。これら疾患に罹患することにより大脳機能に深刻なダメージがおよび、認知機能の低下につながります。

 

今回はこの4つの原因や予防に関して解説します。

 

【在宅医療と認知症】

 認知症とは。事例から理解する認知症の症状|在宅医療と認知症(1)

 

 

アルツハイマー型認知症について

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症“アミロイドβ”と呼ばれるたんぱく質が大脳内に蓄積され、これが大脳の神経細胞を死に至らしめることで起こります。

 

アミロイドβは活動する神経細胞がある限り誰の脳の中でも産生されるたんぱく質です。

そのため、適切に脳内で分解され処理されれば問題はありませんが、アルツハイマー型認知症の場合には“アミロイドβ”の処理が遅い、もしくは産生量が多いことによって脳内に蓄積されていってしまうのです。

 

そして遺伝が深く関連したアルツハイマー型認知症もあれば、それとは無関係に老化現象により発症してくる方もおられます。

現在この“アミロイドβ”の産生をコントロールする薬の開発が進められています。

 

アルツハイマー型認知症の予防

厳密にいうとアルツハイマー型認知症に関しての予防方法は今のところ明確なものはありません。

しかしアルツハイマー型患者さんとそうでない方の生活の仕方には発症前よりいくつかの違いがあるようで、十分な睡眠と社会的な交流が確保されている方は発症リスクが低いと言われています。

 

それは発症した後でも同じで規則正しい生活をしつつ、デイサービスへ積極的に通所したり、家族内でのコミュニケーションが保てている方のほうが症状の進行が比較的緩やかであるといわれています。

 

また親、兄弟などの近親者にアルツハイマー型認知症と診断された方がいる場合、とくに家族内に2人以上のアルツハイマー型認知症と診断されている場合は発症しやすい遺伝家系の可能性があり将来的にも注意が必要です。

 

ただし明確に遺伝性を示すアルツハイマー型認知症の家系は全体の5%以下しかいないと言われており、遺伝子をもっているからと言って必ずしも発症するわけではありません。

 

脳血管性認知症について

脳血管性認知症の原因

一言でいえば“脳血管障害”が原因で起こった認知症です。脳血管障害とは脳血管に異常が起きて発症する疾患のことで脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などが代表的です。それらが発生することで脳自体への直接的なダメージがおよび脳機能に支障をきたしてきます。

さらに脳血管性認知症は認知症の中ではもっとも生活習慣や環境が影響しているタイプといえます。

 

脳血管が破れる、詰まるなどの異常をきたして脳内の血液循環が不安定になると脳神経細胞にダメージがおよびます。

そのダメージが大きければ大きいほど発症直後から症状がみられるようになりますが、そればかりではありません。

 

脳はそのほとんどが非常に細かい毛細血管によって緻密に栄養されており、千数百億ともいわれる脳神経細胞を維持しています。

そのため小さな血管に異常が出ても実際に症状として明らかにならないこともしばしばですが、塵も積もれば山となるの言葉通り、極小さな脳ダメージが長い年月をかけていくつも重なることで全体的な脳機能は徐々に低下していきます。

脳血管性認知症とはそのような経緯で日常生活に障害が出たものを言います。

 

たとえば、多発性脳梗塞と診断される高齢者を勤務先などでお会いしたことはありませんか?

それひとつでは大きな症状は起こさないような小さな脳梗塞を何十年もの間にたくさん起こした状態を言います。

頭部MRIを撮影した時に指摘されることが多く、原因は若い頃からの不規則な生活習慣や不摂生、それに伴い発症した生活習慣病と言われています。

 

生活習慣病があるとなぜいけないのか?

それは主な3つの生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常症)が、いずれも動脈硬化に関連しているためです。全身の動脈硬化が進むにつれて例外なく脳血管にも動脈硬化がおよびます。そして抹消の見えない細い血管にもその影響はおよぶのです。

 

脳血管性認知症の予防

脳血管性認知症予防には、若い頃からの生活習慣の徹底した改善が大切です。

もちろん喫煙も同様に悪影響をおよぼします。

生活習慣病は検診で指摘されても実際に症状はないことからそのまま医療機関へ相談せずに経過をみてしまう、もしくは通院しても処方薬の効果に頼ってしまい自分の生活習慣を変えようとしない方がみられます。

しかし、これは大きな誤りで血液検査の数値だけが改善すればよいわけではありません。

 

健康診断等において血液検査をすればどの項目が高いだの異常だのとコメントされますが生物の高度な新陳代謝を血液検査のみで数値化し明確にすることは実際には到底難しく、いまだ見つかっていないような栄養の代謝経路がたくさんあるはずです。

そのため血液検査で示された数値はおおまかなものでしかなく、その数値が基準範囲内に入れば安心ということにはならないと考えておきましょう。

 

したがってよい食習慣や運動習慣などを積極的に生活に取り込み自身の新陳代謝がよい方向に変化するよう生活できた方が、はじめて動脈硬化を予防できるのです。

脳血管性認知症はある意味で予防可能な疾患といえますが、それは若いころから生涯にわたって健康を意識していく必要があります。

 

レビー小体型認知症について

レビー小体型認知症の原因

1976年、小阪憲司先生によって報告された認知症で、現在認知度が非常に高まっている認知症のひとつです。

“レビー小体”と呼ばれる特殊なタンパク質が脳神経細胞内に蓄積していくことで徐々に脳機能が低下していく病気で、大脳や脳幹などあらゆる脳のあらゆる場所にたくさん蓄積すると言われています。

アルツハイマー型認知症と同様に“レビー小体”が蓄積すると神経細胞が破壊されるため時間が経過するにしたがって認知症症状は進んでいきます。

 

レビー小体型認知症の予防

残念ながらレビー小体型認知症に関する予防方法について明確なものはありません。

しかし発症してしまった場合には「ドネペジル」と呼ばれるお薬が非常によく効くことがあり、内服することで認知症の管理がしやすくなる可能性は十分にあります。

 

前頭側頭型認知症について

前頭側頭型認知症の原因

全体の認知症患者の数%がこの認知症と言われています。40~60歳台の比較的若い方に発症することが多いです。

人格の変化や情動コントロールができなくなるため犯罪や暴力行為の原因なることもあります。

最近の研究によるとタウタンパクやTDP-43、FUSと呼ばれる複数のタンパク質に変化が加わり、蓄積していくことが原因で前頭葉、側頭葉の脳機能が低下していきます。

しかしなぜそれらのタンパクの蓄積で脳神経細胞へダメージが及ぶのかまではまだわかっていません。

 

前頭側頭型認知症の予防

現在のところ明確な方法はありません。認知症の特性から抑制が効かない情動的な行動をとることもあるため抗精神病薬などで鎮静し事故などを防ぐこともあります。

 

認知症の予防は困難なのか

以上、主に代表的な疾患に関して順番に解説してきましたが、これらをみると今のところ的確な予防方法は実のところ存在しないというのが答えです。

 

しかし努力できる部分もあります。

やはり生活習慣病や規則正しい生活、そして地域や家族とのつながりを意識して生きること、日常生活にいかに社会性を維持できるかがもっとも重要なことだろうと思います。

 

参考文献

脳科学辞典 http://bsd.neuroinf.jp/

アミロイドβタンパク質 http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%CE%B2%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA

Alzheimer’s association  https://www.alz.org/asian/overview.asp?nL=JA&dL=JA

 

writer
浅野翔吾(あさのしょうご)
2006年 東海地方にある急性期病院にて初期研修 2008年 神経内科専修医 2009年 日本内科学会認定内科医 2012年 日本神経学会神経内科専門医 2016年 日本内科学会総合内科専門医 病院勤務の傍ら近隣の在宅医療クリニックにて共同診療に参加している。

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