認知症の種類|在宅医療と認知症(3)

認知症は脳の機能障害であって一つの症状の名前です。そのため正式な病気の名前ではありません。認知症には、症状引き起こす原因となる疾患があり、その原因は多種多様で複雑です。

今回は、認知症の原因となる病気で分類し、説明していきたいと思います。

 

【在宅医療と認知症】

認知症とは。事例から理解する認知症の症状|在宅医療と認知症(1)

認知症の原因は?原因とされている生活習慣や疾患、環境変化など|在宅医療と認知症(2)

認知症の種類|在宅医療と認知症(3

 

多くを占める変性疾患による認知症

認知症はおおまかに分けて変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病、レビー小体病、前頭側頭型認知症など)による認知症、脳血管性認知症、脳代謝性認知症、正常圧水頭症による認知症、脳腫瘍などによる認知症、慢性硬膜下血種による認知症、感染による認知症、薬物による認知症、低酸素による認知症による認知症があります。

患者さんの数では、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症が認知症患者全体のほとんどを占めています。

変性疾患による認知症がほとんどを占めているわけです。

 

しかし、その他にも原因と脳機能を障害する病気はたくさんあり、少ないものの中には治療可能な疾患もあるため、これらのどれに当てはまるかをできる限り確実に診断していくことが認知症診療のもっとも大きな役割となります。

 

変性疾患による認知症

脳神経細胞そのものや細胞同士をつなぐ神経線維が何らかの原因で自然に脱落し、脳機能が徐々に低下していく認知症のことを言います。

ある意味で本物の認知症と言っても良いでしょう。アルツハイマー型認知症はこの代表格にあたる疾患で認知症全体の中でももっとも多数の患者数を占めています。そのほとんどは脳内で発生する特殊なタンパク質を処理できなくなりそのタンパク質の蓄積が原因となって脳機能が徐々に低下していく疾患です。

現在でもまだ明確な治療方法は存在せず介護保険や福祉などの政策に頼らざる得ない疾患ばかりです。その他代表格であるレビー小体型認知症前頭側頭型認知症も同じくくりに入ります。

 

脳血管性認知症

第二回でも紹介したアルツハイマー型認知症と並ぶ代表的な認知症です。

認知症の原因は?原因とされている生活習慣や疾患、環境変化など|在宅医療と認知症(2)

2018.01.10

 

血管は生まれた時から動脈硬化が始まるとも言われています。

脳血管のほとんどは現在の画像検査でも捉えることのできないほど細かい毛細血管です。長きにわたる人生の中でその毛細血管のあらゆる場所で多発した動脈硬化がいずれは破れたり、詰まったりしてすることで確実に小さな脳ダメージが積み重なっていくこととなります。それがいつかは脳機能全体の認知能力に支障をきたすようになり発症した認知症を脳血管性認知症と呼びます。

 

動脈硬化を強めると言われる生活習慣病を有している患者さんに多くみられており、生活習慣病をコントロールすることで防げる効果があると考えられます。しかし動脈硬化を起こしやすいか起こしにくいかはもとよりその人が持っている体質でもあり、何も生活習慣病を持たない方でも動脈硬化を起こしやすければこの認知症を発症するリスクはあります。

逆に生活習慣病がある人でも動脈硬化を起こしにくい方であれば脳内の血管も正常に保たれ脳血管性認知症は発症しません。

 

脳代謝性認知症

脳も他の臓器と同じように血液や脳脊髄液から必要な物質の供給を受け、ブドウ糖をはじめとしたエネルギー源を代謝することで脳神経細胞としての活動を維持しています。

 

つまり脳神経細胞内の物質の代謝が阻害され発症した認知症であればどれもこれに当てはまります。

中でも甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの分泌低下)、ビタミンB1欠乏症(体内のビタミンB1不足)、肝性脳症(肝臓の機能障害)、低血糖症(血糖の低値、糖尿病患者など)、アルコール脳症(大酒家による慢性的なアルコール中毒によるもの)が多くみられます。

 

甲状腺機能低下症ビタミンB1欠乏症低血糖症による認知症はその不足している物質の補充を行えばもとに戻ることも多く、ある意味で治療ができる認知症といえます。

ただし診断がつかないまま長期間そのまま放置されると症状は固定、もしくは低血糖症の場合には命を落とすこともあります。

脳代謝性認知症において関連が深いのは生活習慣です。とくに食生活に著しい偏りもしくはアルコールの大量摂取者であることが多く、認知症を考える上で自宅での生活状態の聴取が非常に大切な情報となります。

 

正常圧水頭症による認知症

これは手術により治療が可能な認知症です。

 

脳周囲には脳脊髄液と呼ばれる液体が存在し脳や脊髄はこの液体の中に浮いている状態になっています。

この脳脊髄液は絶えず作り出されまた古いものは脳の外へ排出され循環しているのですが、この排出がうまくいかなくなると脳脊髄液が脳内でいっぱい存在する状態になり、中で脳を圧迫してしまうことになります。

その圧迫で脳機能全体が低下し認知症を発症することがあります。

 

高齢者に自然発症することもありますが頭部外傷後や脳出血後などにこれを起こすことが多く、画像検査や身体診察においておおよそ診断できます。

治療としては多くなりすぎた脳脊髄液を腹部などに流す通路作ってあげるシャント手術があり、これを実施することで改善します。

 

脳腫瘍による認知症

脳腫瘍によって引き起こされた認知症です。腫瘍周辺の脳が圧迫され、もしくは腫瘍に直接むしばまれ引き起こされます。腫瘍のできた場所またはその広がり具合、そしてその腫瘍の悪性度の程度により経過はさまざまです。

 

慢性硬膜下血種による認知症

これも手術治療で改善可能な認知症です。

脳の外側にある硬膜と呼ばれる硬い膜と脳の間に血液がたまりこれが脳を圧迫することにより引きこされる認知症です。治療は単純でこの血種(血のかたまり)を除去することで脳の圧迫がとれて症状が改善します。

 

高齢者、もしくは抗血小板剤など血液をさらさらにするお薬を飲んでいる方が転倒で頭部打撲をした時に起こりやすく、ゆっくりと血種がつくられるため頭部打撲から1カ月後くらいに様子が変化することも多いです。

 

感染による認知症

脳炎もしくは髄膜炎と呼ばれている脳へのばい菌の感染によって引き起こされる認知症です。

ばい菌と戦おうとする炎症反応や、ばい菌そのものの浸潤によって脳組織が破壊されるため急な発熱とともに認知症を発症します。

また感染症をどうにかコントロールした後もかなり重篤な後遺症を残すことも多いです。

 

とくに、ヘルペス脳炎に関しては発症初期から高熱と急激に進行する意識障害を起こすため、あまりの急激な炎症の波及で脳機能のダメージが大きく、発症から数日で命を落とすこともあります。

 

昨日までは認知症ではなかった人が急におかしなことを言いだしたり性格が変わったりした場合には要注意です。

これまで説明してきた認知症と違い、”急激に発症する”ため周囲のご家族の受け入れが難しいことがあります。

 

薬物による認知症

日常内服している薬によって引き起こされている認知症です。

もっとも代表的な薬は眠剤で中でもベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤は、比較的容易にに処方されることから認知症を誘発する事例も多いと言われています。

 

またその他に抗パーキンソン病薬、アレルギーや風邪薬などに使われる抗ヒスタミン薬、また胃潰瘍などに対する消化管潰瘍薬なども認知症を引き起こす原因と言われます。

認知症が疑われる時、これらの薬を内服している場合は可能な限り中止し、様子をみることで改善がみられることもあります。

昨今多種多様な薬を山のように内服する高齢者が増えていることもあり増加傾向にあるとされます。

 

低酸素脳症による認知症

心筋梗塞や不整脈などの突発的な心肺停止状態もしくはなんらかの重篤な呼吸不全により脳へ重篤なダメージをきたした状態を言います。

酸素がある程度の時間送られなくなったため脳神経細胞が障害され、その後遺症で発症する認知症です。程度は様々で脳へ酸素がいかなかった時間に比例してその障害は強く出現します。2~3分間程度であれば脳へのダメージはどうにか回避できますが、それ以上になると、少なくともなんらかの後遺症は残すことになるでしょう。

 

まとめ

今回は認知症の原因別に種類を分類し解説させていただきました。

認知症とはあくまでも症状の名前であって正式な病気の名前ではないことはここで強調しておきたいところです。認知症を引き起こす原因の中には治療可能なものがいくつか含まれており、それらに当てはまるかどうかが重要なポイントであることを心にとめておいてください。

 

writer
浅野翔吾(あさのしょうご)
2006年 東海地方にある急性期病院にて初期研修 2008年 神経内科専修医 2009年 日本内科学会認定内科医 2012年 日本神経学会神経内科専門医 2016年 日本内科学会総合内科専門医 病院勤務の傍ら近隣の在宅医療クリニックにて共同診療に参加している。

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