在宅医療の魅力と課題〜なぜ今在宅医療が必要なのか〜|在宅医療の基礎知識

患者が在宅医療に移行する主な理由は主に2つ。患者本人の希望と国の政策です。

今後も在宅医療の需要が高まることが予測されていますが、ここでは、在宅医療の必要性や魅力と課題についてお伝えしたいと思います。

(2016年9月時点)

在宅医療の需要が増大する理由

まず、一つ目の理由は国の政策によるものです。
厚生労働省の発表では、2060年に日本は3人に1人が高齢者となると言われています。一方で、1992年(平成4年)を境に、全国の病床数は減少の一途をたどっており、病院での看取りが約8割の日本では「看取り難民」が大量に発生するのではないかと危惧されています。

病床数の減少の大きな原因は、厚生労働省が平成13年に「病院完結型から、地域完結型への移行」を提言し、病院以外での「在宅死」を4割以上に引き上げ、段階的な病床数の削減計画を立てたためです。背景には加齢社会がもたらす膨大な医療費の削減という狙いがあります。

2040年には年間死亡者数は40万人増加すると予測されており、政府の政策で病床を増やせない分は、在宅の看取りで対応しなくてはなりません。

次に、患者本人の希望はどうでしょうか?
在宅医療法人の調査では、約7割の患者が最後は自宅で過ごしたいと希望している、とされています。実際の現場でも、(家族の意向は逆のことが多いですが)本人は早く家に帰りたいと思っているケースが多い印象を受けます。

急性期病院側もまた、積極的な治療ができない患者に関して、在宅医療や介護施設、長期療養型病院などへ早期に移ってほしいという希望があることから、地域包括医療体制が整えば、病院と患者本人の希望が合致し、在宅医療への移行はスムーズに行われ、在宅医療の需要は増大するでしょう。

在宅医療の魅力と課題

では、在宅医療に携わる魅力と課題は何でしょうか?まず仕事の内容から見てみましょう。

大病院での忙しい外来や病棟では、患者の生活背景にまで深く介入することはほぼなく、疾患を治療して終わりという経過がほとんどです。外来診察が「回転ずし診察」と例えられることもあるほどです。しかし、在宅医療では、よりよいサービスのために患者および患者家族とのコミュニケーションが欠かせません。

在宅医療は一人一人と丁寧に向き合うことで、充実感を得られる現場と言えます。

在宅医療の問題点とは

一方で、問題点にも目を向けましょう。

単独で患者を訪れることが多い在宅ケアでは、スタッフが患者および患者家族から言葉や身体的な暴力・セクハラを受けることがあります。
原因としては、利用者本人が認知症などで意思疎通が困難で、物事の良し悪しが判断できない、また、介護の状況に家族がストレスを感じていることなどが挙げられます。

逆に、密接なケアがストレスとなり介護職員が利用者を虐待するケースも残念ながら多く報告されています。
その原因として、単独訪問で助けがない中、自分の許容範囲を超えた介護サービスを提供しなければならないこと、意思疎通ができない利用者へのストレス、過密なシフトなどが考えられます。

ケース・バイ・ケースなので、こうすればよいという対応策を提示することは難しいものの、誰もが自分ひとりで背負いこまない体制が必要なのは間違いありません。

在宅医療従事者の給与面での魅力と課題

仕事は生活がかかっているため、給与面での問題は避けて通れません。特に介護福祉士の安給が問題視されていますが、在宅業務の需要が多いという点では職にあぶれる可能性が低く、魅力的な職業です。

では、少しでも給与を上げるためにはどのような点に着目すればよいでしょうか?

在宅医療は今後需要増大の一途をたどるため、どの事業所も需要拡大による人手不足となります。需要が高いものの、圧倒的にスタッフが足りないところでは、給料が高めに設定される傾向があります。
また、在宅医療は地域格差も大きいことが問題視されていますが、逆を言えば、在宅医療が未介入の場所ではビジネスチャンスがあるということです。

次に、事業所の財源となる介護保険制度に着目すると、半分の財源は国や都道府県、市町村による公費によるものです。要介護レベルやサービス内容により介護報酬は国により規定されているので、介護事業所としては、利用者に必要なサービスをどれだけ効率良く提供できるかが重要となります。

そのため、生産性向上に向け、保育士や准看護師などの資格を取るといった姿勢も給与アップが見込めます。また、資格を取り実績を積むことで、主任などの役職につくと、給料はさらに上がります。

在宅医療は魅力的。だからこそ長く続けられる環境を探そう

今回は、在宅医療の需要の増大という今後の展望と、在宅医療の魅力と課題についてお伝えしましたが、いかがでしたか?

仕事はやりがいと労働に見あった給料のバランスが取れてこそ満足感が得られるものだと思います。少しでもよい環境で在宅医療に携われるよう、自分の仕事場やキャリアプランを考えてみてください。

参考資料

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m12/is1206.html

医療法人社団 悠翔会
http://yushoukai.jp/platform/

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

 

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