認知症の代表的な4つの症状|在宅医療と認知症(4)

認知症の原因となる疾患がいくつもあることは前回でもお伝えしました。今回はその中でも最も患者数の多い4つの認知症に関して解説していきます。

 

【在宅医療と認知症】

認知症とは。事例から理解する認知症の症状|在宅医療と認知症(1)

認知症の原因は?原因とされている生活習慣や疾患、環境変化など|在宅医療と認知症(2)

認知症の種類|在宅医療と認知症(3

 

認知症の分類には、初期症状と経過の診察が重要

実は認知症を分類するのには、いかに初期の頃の症状を確認し、その症状経過を診察できたかによります。

その理由は認知症のほとんどが進行性であるため、ひどく症状が進んでしまった末期の患者さんは反応に乏しい寝たきり状態の方が多くなるからです。

 

末期まですすんでしまった認知症患者さんは、その認知症に特徴的な症状が認められなくなっていることが多く、最初の症状をご家族より聞くより他ありません。そのため、末期に至っての正確な診断は正直難しいのが現実です。

 

今でこそ画像や特殊なタンパク質の検出、遺伝子レベルでの診断が少しは可能になってきていますが、残念ながらまだ一般市民病院などで楽にできる検査ではありません。

そのためより正確な診断、処置を受けるためにはできる限り初期から受診し、かつ長い期間診療を受けていくことが大切なのです。

 

今回は介護医療の現場で最も多く遭遇するであろう4つの認知症に関して、その特徴をお話していきます。

 

1.アルツハイマー型認知症

現在最も多くの患者数を占めている代表的な認知症です。

その原因に関しては第二回でも述べさせていただきました。

認知症の原因は?原因とされている生活習慣や疾患、環境変化など|在宅医療と認知症(2)

2018.01.10

 

アルツハイマー型認知症の特徴は「物忘れ」、つまり記銘力障害が最初の主症状となって表れてきます。

 

・いつも出来ていた買い物で買い忘れが増えている。

・家族や友人と一緒に出掛けたことを覚えていない。

・友人と会う約束をすっぽかす。

・以前は地図なしにも行けた場所に行けなくなる。

などが例として挙げられます。

 

ただし、最近なかなか人の名前が出てこない、「あれ」や「それ」などの代名詞の使用が増えたなどの症状で相談される方もおられますが、それ自体は認知症の症状とは言えません。

認知症でなくても人の脳の老化は時間と共に確実に進むものであり、忘れていることを指摘されて本人がそれを自覚し、思いだせる場合はそれを認知症症状とは呼びません。

最初は記銘力障害(物忘れ)で始まったアルツハイマー型認知症もゆっくりと確実に進行します。

物忘れの程度が酷くなるとさっき言ったこと、したことが完全に抜け落ちていて食事をしたこと、買い物でお金を払ったことすらも忘れてしまうことがあります。

 

この記憶の脱落はご本人にとっても混乱を招きます。

認知症の方の記憶はまだらに抜け落ちていることもあり自分からしてみたら日々暮らす日常にいくつもつじつまの合わないことが起こっているような状態となります。

 

例えば、ある日買い物をした際にお金が減ったが買い物したこと自体を忘れており、それをだれかにお金を盗まれたと解釈することがあります。

患者さんにとっては予定外な成り行きを、事実として受け入れることを周囲から強要されることもあるため、トラブルとなることがあります。

 

・自宅にいるのに「そろそろうちへ帰らなきゃ」

・今日は休日でありしかも数年前に退職しているはずなのに「会社に行ってくるよ」

 

など、認知症の方は過ごしている場所や時間、さらには時代すら、事実と異なった認識をしてしまうことがあるのです。

 

「認知障害」とは場所や時間、自分自身の立場やこれまでの人生などの記憶に基づいた積み重ねを認識する観念の障害でもあります。いわゆるその人らしさの根底を創る記憶が障害されることを主症状とするアルツハイマー型認知症では、人格変化やパニック、妄想のような混乱がたびたびみられます。

 

2.脳血管性認知症

前回も紹介したようにアルツハイマー型認知症と並ぶ代表的な認知症です。

 

血管は生まれた時から動脈硬化が始まるとも言われています。

脳血管のほとんどは、現在の画像検査でも捉えることのできないほど細かい毛細血管で形成されています。

長きにわたる人生の中で、その毛細血管のあらゆる場所で多発した動脈硬化がいずれは破れたり、詰まったりしてすることで、小さな脳ダメージが確実に積み重なっていくこととなります。

それがいつかは脳機能全体の認知能力に支障をきたすようになり発症した認知症を「脳血管性認知症」と呼びます。

 

脳血管性認知症の特徴は「まだら状の症状」です。

調子によって同じことが出来たり出来なかったりすることに特徴があります。

 

また、アルツハイマー型認知症では物忘れをはじめとして全体的な認知機能障害の低下がみられますが、脳血管性認知症の場合はもの忘れのみ、理解力のみ、言語のみが脱落するなど部分的な障害が多くみられます。

全体的にもできることやできないことが極端に違っていたりと、ムラのあることが特徴です。

 

もともとが脳血管障害であるため、運動機能に影響を与えたりすることも多々あります。

いつの間にか軽い麻痺を抱えており、手足の細かな運動が損なわれて転倒しやすくなっていることもあります。

症状が進むにつれて姿勢のバランスが悪くなるため、ご本人は転ばないように若干脚を広げて立位や歩行をしようとする傾向があります。

 

3.レビー小体型認知症

認知症の中でも、アルツハイマー認知症に次いで最近認知度が高まっているタイプです。

 

特徴として「幻覚」、特に「幻視」と「パーキンソン症状」がみられます。

レビー小体型認知症は視覚情報の異常が多く、壁やドアなどの模様やキズが人やバケモノの顔、もしくは無数の小さな虫に見えたりするため、患者さんは非常に気味悪がり動揺します。

それは非常にリアルでグロテスクなものが多いようで、これが見えることが原因で不眠となり一晩中虫を駆除しようと壁と格闘していたという話も聞きます。

 

また、パーキンソン症状も非常に特徴的で、動作が遅くなったり、無表情、小刻みな歩行が目立つようになり、転倒が増えるなどのケガのリスクも高くなります。

 

レビー小体型認知症の場合、一般的な認知症の症状と思われている物忘れなどは後になってから現れてくることも多く、先に幻覚やパーキンソン症状、更にはうつ傾向などの精神症状がみられます。

そのため知識がない場合には先に精神科へ受診しているケースも多いです。

 

更に、意識にムラがあることでもこの認知症は特徴付けられます。

ある時は頭がはっきりとしており、はきはきと返答する時がある一方で、ぼーっとしていて反応に乏しい時もあります。

意識の具合も日によって違うため、意識がはっきりしない時もあるものと理解を示してあげることが大切です。

 

4.前頭側頭型認知症

前頭葉、側頭葉が機能低下をきたした認知症です。

認知症患者全体の2~3%程度を占めていて4番目に多い認知症です。その他の認知症と比較して発症年齢が若干若く、進行がはやいことが傾向があります。

 

前頭葉は意欲や感情のコントロールを行っている部位で、その部分の機能障害をきたします。

発症すると意欲低下で何事にもやる気をなくしてしまったり、感情のコントロール、特に我慢が出来なくなるため自分の情動を抑制できなくなり易怒性や欲求への実現願望が増します。

 

例えば、花壇の花や店頭においてある商品を勝手に持ってきてしまったりするため、酷い場合にはそれを強盗などの反社会的な行動ととられトラブルや犯罪に発展する事例もみられます。

 

初期には運動機能上大きな障害が認められないことが多いため、勝手に自宅外へ出ていこうとしたり、暴力をふるったりすることもあります。そのため、監視役となる家族も疲弊してしまうことがたびたび聞かれます。

 

また側頭葉の機能として言語機能の障害が著しく出現することも知られており、普段流暢であった人が1年くらいの経過で明らかに発語が減り、会話すらできなくなっていく様子もみられます。

 

まとめ

認知症患者の大多数を占める4つの認知症に関してその特徴を解説してきましたが、初期症状においてはわかりやすく特徴が分かれますので、判別が可能です。

 

しかし、これら4つの認知症は、時間経過とともに進行し脳機能が著しく低下してくると、周囲からの呼びかけなどにも反応を示さなくなるような状態となります。

ここまで進行した場合には残念ながらどの認知症であったか区別をつけることは困難になってしまいます。

 

大切なことは初期の症状から医療機関へかかりつけ、発症時の症状が記録されていることがその後の診断にも大きな影響をもたらします。

writer
浅野翔吾(あさのしょうご)
2006年 東海地方にある急性期病院にて初期研修 2008年 神経内科専修医 2009年 日本内科学会認定内科医 2012年 日本神経学会神経内科専門医 2016年 日本内科学会総合内科専門医 病院勤務の傍ら近隣の在宅医療クリニックにて共同診療に参加している。

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