認知症かも?っと思ったら|在宅医療と認知症(7)

認知症という病気について、学んできましたが、今回は認知症かも?と疑問を抱いた場合にどのようにしたら良いかをドクターの視点から提案していきたいと思います。

 

【在宅医療と認知症】

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疑ったら早めに一度受診を

一般的には認知症という名前自体が強いマイナスなイメージをもたれています。告知の段階で、「私は認知症なんだ」と真っ向から受け止められる方はなかなかいないはずです。そのため個人の受け入れ方によって対応の方法は違ってきます。

認知症に気づくパターンは大まかに二つ。
「認知症かも?」とご本人自らが疑った場合と、「認知症ではないか?」とご家族が気づく場合です。

自分で兆候に気づいた場合

自分で気づいた場合には、抱え込まずに受診されることをお勧めします。

自分ひとりで考えていても答えは出ませんし、思考もふさぎがちになりやすいです。
また先の回でも触れましたが、もし治すことのできる認知症であった場合には悩むだけ損です。結論に早めに到達するためにも一度受診してみることが大切です。

昨今の医療制度改革により、大きな病院、特に400床以上のベッドをもつような高度な医療機関へ、いきなり自分の都合で受診することが難しい時代になっています。そのため、あらかじめかかりつけ医がある場合はそこから、ない場合には近隣の内科もしくは精神科、心療内科クリニックから認知症診療をかかげている医療機関を紹介してもらい予約枠を確保することがお勧めです。

家族が認知症の兆候に気づいた場合

さて問題は、後者の場合、つまり家族が認知症の存在を疑った場合です。

正確には、最初は患者さん自身もおかしいなと自覚はしていた時期があったのかもしれません。しかし様子をみているうちに、もしくは自分が認知症かもと相談できないで時間が過ぎ、症状が進行してしまった場合なのかもしれません。
こうなると受診時には家族にわいわい言われながら半ば無理やり連れてこられるものだから、ご本人は受診そのものに対して最初から乗る気でないことが多いですね。

こんな経緯から、いざ診察室に入った段階では症状をご本人に伺っても自覚していないことが多く、その症状の多くをご家族が説明し、ご本人は首をかしげながら不本意そうな表情で聞いているケースがよくみられます。このような状態から診療が開始された時、医者としてその患者さんとのかかわり方にひと工夫を設けなくてはなりません。

 

最初の受診で患者さんとの関わり方に工夫を

まずそもそも受診のきっかけがご本人の意志ではない場合、本人は受診を辞退したいと思っています。そのため認知症に大切な症状を見守るための継続した通院が困難な場合も多く、ご家族のみが受診され薬だけでも欲しいと言ってくるパターンもあります。こうなるとさすがにやり切れないものがありますね。

 

このようなことをできるだけ防ぐために、私の場合はまず患者さんご本人と仲良くなれるように「とにかく会話」をします。

検査のような難しい質問ばかりのやりとりではなく、何かしら共通点がないか話題を探します。その会話の内容の中から得られる情報で認知機能を評価していく方法をとります。

例えば1日の過ごし方、特に睡眠、食事の内容、趣味、最近楽しいと思ったこと、嫌だと思ったこと、出かけたエピソードなど、ある程度どんな風に日常を送っているのか聞いていきながら、会話のテンポ、回答の内容、文章構成、取り繕いなども含めた表情の変化を観察しながら、よもやま話をしていたらいつの間にか診察ができている状態を作るのです。

認知症を自覚することは、自分を否定されるように感じます。そのため外来ではガチガチの認知症検査やテレビドラマであるような固い表情で診察するような厳粛な雰囲気は極力避け、むしろ少し砕けるような雰囲気を演出すると心を開き受診の継続も可能になっていきます。

更にはこれを家庭も実践することで受診の動機付けにつながるかもしれません。

ポイントとしてはできるだけ受診する際に自己否定感を増大させるような雰囲気をつくらないことです。

 

おそらく認知症の検査などをするために受診を家族に促されているケースでは、患者さん自身、言われなくても自分がなんとなくおかしいことなど気付いていることが多いでしょう。
一緒に暮らしてきた家族同士の会話では「認知症なんじゃないの?」という直接的な表現で疑いがかけられることが多いようです。実はこれが受診を難しくさせる火種になっているのです。

 

患者さんの立場に寄り添って

ここで一つ、家族内での患者さんの立場について考えてみましょう。

一般的に家族内では認知症は高齢となった親がかかる病気です。親は子供を育て家族の大黒柱としてこれまで家庭を支えてきた自負があり、そんな立場の生活が家族ができてから子供が大きくなるまで、つまり20~30年程度続いています。そしてすっかりその自尊心は自分の人生感にも染み付いています。

逆に、大人になった子供の立場になって考えると、判断力の低下や頼りなさといった親の老いていく部分が目立ち、しっかりしてくれとついつい親をダメ出しし、強く指摘してしまいがちになります。

しかしこれは親からしたらプライドを傷つけるもので、子供に生活や能力の障害を指摘されるほど落ちぶれてはいないと態度を硬化させがちになってしまいます。

ここで大事なことは患者さん本人が家族の指摘を受容できるようにしてあげることです。

例えば、

「最近私はあなたをみていると認知面で心配が募るし自分たちも不安になる。これが認知症なのかどうなのかをはっきりするためにも医療機関へ受診してほしい。あなたがこれからも自分たちの親であることに違いはないしその尊厳を踏みにじることはこれからもない。受診することが家族のため、そして自分のためであると思ってお願いしたい。」

という内容を出来るだけ優しい言葉で説明し、ご本人の言葉に耳を傾けつつゆっくり誘導してあげることが大切です。

 

現代においてもアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症をはじめとした認知症は不治の病です。
さらに言えば医師にかかっても完治が望めるものではないことも確かです。

患者さんからすると認知症というレッテルは急に脳の治らない異常を突き付けられたものと同じです。そのショックは患者さん本人からしたら計り知れないものであり、最初の受診はその不安や心配の始まりとも言えます。そのため極力ご本人の味方となって寄り添う姿勢をみせることが大切です。

 

認知症の特徴的な5つの症状

以下の症状に自覚があるもしくはご家族内で心当たりがある場合は医療機関へ受診してみることをお勧めします。

  1. もの忘れがひどい 
  2. 判断・理解力が衰える。
  3. 場所・時間がわからない。
  4. 人柄が変わった
  5. 不安感が強い。
  6. 意欲がなくなる。

 

おおまかに分けてこのような5つの症状に注意して観察してみてください。

これらの項目に関して難しいのは、それが病的な範疇のものか、それとも正常なレベルのものかです。

明らかに認知症だと言い切れる場合は迷う必要がないのですが、「ここ数カ月くらいでなんか様子がおかしいかな…」くらいだと初期の認知症の可能性があり、判断が非常に難しいことが多いです。これに関してはやはり家族内で判断せずに受診で判断を仰ぐのが良いでしょう。

 

実のところ医師側も極初期の認知症の患者さんが本当に認知症であるかどうかを正確に診断することは困難な場合が多いのです。

患者さんからお話を伺う中でピンとくる行動、会話のパターンがあれば自信をもって初期の認知症とお伝えしますが、初回診察の段階からそのように白黒はっきりする方は少なく、医師側も頭を悩ませながら通院していただき症状を観察していくことがほとんどです。そして結果として長らく症状が進行せず認知症でなかったと判断される場合もあります。

 

まとめ

認知症は日々の生活と強く結びついていることが多いため、その診断自体も患者さんの人となりが見えてこないとできません。そのためには患者さんと医師との嘘偽りのない良好な関係が築かれなければ正確な診断は難しいでしょう。

 

認知症が疑われた場合、患者さんが十分に了承した上での受診と、信頼のおける医師の元での継続した通院が最も大切なポイントとなります。

 

参考:認知症ねっと https://info.ninchisho.net/

 

writer
浅野翔吾(あさのしょうご)
2006年 東海地方にある急性期病院にて初期研修 2008年 神経内科専修医 2009年 日本内科学会認定内科医 2012年 日本神経学会神経内科専門医 2016年 日本内科学会総合内科専門医 病院勤務の傍ら近隣の在宅医療クリニックにて共同診療に参加している。

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