訪問診療を受けている患者の“脱水”の診断と対処法|訪問診療・緊急往診のケースワーク(5)

訪問診療では患者さんが訴えるさまざまな症状に対応し、適切な対処をしなければなりません。在宅医療を行っていると、高齢者がいつの間にか脱水症を起こしているケースをしばしば見かけます。今回は、高齢者に多い症状のひとつである、脱水についてまとめてみました。

【訪問診療・緊急往診のケースワーク】

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脱水の原因と対処

水分が欠乏している状態を一般的に脱水といいますが、よく考えてみると、水分が欠乏するといっても、身体の水分分画のうち、どこで欠乏が起こっているのかによって話が変わってきます。

つまり、細胞内脱水が起こるようなdehydrationと、体液量が減っているvolume depletionは全く異なる考え方です。

今回はdehydrationについての話です。

 

〈症例〉 90歳男性 倦怠感

認知症があり、月1回ご自宅に訪問している方ですが、ある蒸し暑い梅雨の時期、ここ1週間ほど食欲が落ちていると家族から連絡があり、往診に向かいました。

 

往診時の状況

血圧は120 mmHgと保たれているものの、心拍数102とやや頻脈であり、口腔粘膜の乾燥もあり、脱水症の診断となりました。

もともと30年来の高血圧のため動脈硬化が強く、日頃から夜間多尿による頻尿に悩まされており、主治医からは極力飲水を控えるようにとの指示が出ていました。頻尿に対して抗コリン薬を服用していることもあり、日頃から口渇感を訴えていたものの、「口渇感があるのは薬のせい」だと考えられていたようです。

 

往診時の対処における留意点

高齢者が脱水症になると、初期症状としては以下のような症状が出ます。

・食欲低下

・口腔内の乾燥/口唇の乾燥

・なんとなく元気がない

・わきの下が乾燥している

・微熱

・ツルゴールの低下

など

特に高齢者の脱水症は、一見すると風邪のような症状であることもあり、家族から「風邪をひいたみたいで」と相談を受けることがあります。しかし、脱水は放っておくとそのまま重症化することもあり、在宅医療においては常にその可能性を想定しておくことが大切です。

 

高齢者の脱水症の見つけ方

では、高齢者の脱水症を見つけるにはどういった身体所見が重要なのでしょうか。Hooper Lらの報告1)によると、血漿浸透圧>295 mOsm/Lを脱水症の定義とし、急性疾患によって入院した高齢者27例について、脱水症の有無と身体所見の感度・特異度を検討しています。この中で、身体所見としては口腔内の乾燥、わきの下の乾燥、眼窩のくぼみ、ツルゴールの低下、CRT(capillary refill time)延長、意識レベルなどを評価しています

この中で特異度が最も高かったのがわきの下の乾燥で、89%でした。また、眼窩のくぼみやCRT延長も83%と高く、これらの所見があれば脱水症の可能性が高いと考えられるでしょう。

一方、感度については、元も高い口腔内の乾燥でも56%にとどまり、「この所見が無いから脱水症ではない」と判断できる所見は無い、ということになります。そもそも症例でも出てきたように、頻尿で抗コリン薬を飲んでいるような高齢者では、かなり高い確率で口腔内の乾燥が出ますので、そもそも評価ができないケースも実際には多くあります。

 

もう1つ文献を引用してみます。Steiner MJらによる報告2)では、脱水症を診断する身体所見の小児における感度・特異度について、メタアナリシスを行っています。

CRT(capillary refill time)延長、ツルゴールの低下、腹式呼吸、粘膜の乾燥、眼窩のくぼみ、全身状態不良などを評価した中で、特異度が高かったのはCRT(capillary refill time)延長、ツルゴールの低下、腹式呼吸で、それぞれ85%、76%、79%でした。そして、感度については、粘膜の乾燥が最も高く、86%でした。次に全身状態不良が80%でした。

 

このように、小児においては、口腔内が乾いているということは、比較的感度の高い身体所見であることが分かりますし、反対に高齢者における感度は低いということが言えるかもしれません。

母集団や対象を変えれば結果が変わる可能性は十分ありますが、やはり高齢者における脱水症というのは、高齢者以外の脱水症よりも総合的な判断が求められるのはおそらく間違いないでしょう。

 

※CRT(capillary refill time)の評価についてCRT(capillary refill time)とは、毛細血管再充満時間のことで、一般的には爪を圧迫して放話したときに色が戻るまでの時間を測って評価するものです。基準としては2秒未満が正常と覚えているかもしれませんが、実はその判断にはやや注意が必要です。なぜなら、年齢、室温、明るさ、部位、圧迫時間などの影響を大きく受けるためです。

まず年齢としては、新生児は3秒、子どもから成人は2秒ですが、10歳年齢が上がるごとに3%程度延長することも知られており、高齢者では4秒程度でも正常な場合も多々あります。また、室温の影響も大きく、1℃変化するとCRTは0.21秒延長することが知られています。圧迫する指は、通常第1指、第1趾が推奨されていますが、高齢者では爪の変形がひどい場合もあり、評価が困難な場合があります。

このように、簡便な手法であり汎用されていますが、それだけで脱水症の診療をするには不十分であることは覚えておきましょう。

 

在宅ならではの工夫・注意点

在宅医療でも点滴はできますし、中等度以上の脱水に陥っている場合は特に有効ではありますが、毎日点滴を継続することは大変です。そのような時に、在宅では経口補水療法が役立つ場合があります。

経口補水療法に用いるのは、それに適した組成の飲料が適しています。その組成は、小腸において最も水や電解質の吸収がよいとされる配合を目安として作成されています。最近ではコンビニでも薬局でもOS-1をはじめとした経口補水液が売っていますので、それを購入しても構いませんが、即席で作るとすれば、水1Lに対して砂糖(ブドウ糖)20-40gと塩3gを混ぜるといいと覚えておくと便利です。

水分の補給に際して糖分の有無を意識しない医療者もいますが、実はブドウ糖が入っている方がより水分の吸収効率が上がることがわかっており、基本的には入れることが望ましいと思われます。

 

訪問看護師や他職種にお願いしたいこと

脱水症の高齢者の看護や介護をする上で大切なのは、身体所見をきちんととることと、水分の出納の管理です。
脱水症かもしれないと考える場合には、尿量や飲水量をカウントするよう、簡単にその場で表を作っておき、家族に記録してもらうと、医師が訪問した際に大変参考になります。

また、経口補水療法がしっかりできれば不要な点滴を避けられることも多々ありますので、きちんと家族に飲ませ方を指導することも大切です。もちろん、心機能が悪い場合にはやみくもに飲ませると心不全を誘発する可能性がありますので、医師への相談も必要です。

そもそも、まず「この人は脱水症ではないか」と疑ってみることが重要なことですので、日頃から脱水症の身体所見をとる癖をつけておきましょう。

 

まとめ

今回は脱水の評価と対処についてお話致しました。脱水は高齢者では比較的多い症状のひとつであるものの、本人や家族は脱水が原因だと気づいていないこともよくあります。生活の場まで足を運んで診察する訪問診療では、脱水の有無について日常的に積極的な評価を行うことが可能であり、重要です。ぜひ日常診療のルーチンとして、脱水の評価も行っていきましょう。

 

参考文献

1)Hooper L et al. Water-loss (intracellular) dehydration assessed using urinary tests: how well do they work? Diagnostic accuracy in older people. Am J Clin Nutr. 2016 Jul;104(1):121-31

2) Steiner MJ, DeWalt DA, Byerley JS et al. Review: capillary refill time, abnormal skin turgor, and abnormal respiratory pattern are useful signs for detecting dehydration in children.

JAMA 2004;291:2746–54

 

writer

しゅうぴん先生

普段は急性期病院で医師として勤務しながら、定期的に訪問診療も行い、最後まで患者さんに寄りそう医療を行っています。
また、正しい医療情報の普及を行う活動をライフワークとし、昼夜問わず精力的に活動しています。

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