在宅医療クリニックの“組織マネジメント”成功4つのポイント

在宅クリニック経営のポイントを解説する特集企画の第二弾。今回もみどり訪問クリニックの院長、姜琪鎬先生と、事務長の波村美絵さんから教えていただきます。

前回は在宅クリニックにおける「集患」のポイントをお伝えしました。今回は集患と並んで重要な「組織マネジメント」のポイントをお伝えします。

(プロフィール)

姜 琪鎬(かん・きほ)先生

医療法人 みどり訪問クリニック 院長

1990年、名古屋市立大学医学部卒業、泌尿器科学教室に入局し、その後安城厚生病院、旭労災病院等で従事し、泌尿器科の専門医資格を取得。1998年、医療と日本を俯瞰したい思いから米・Emory大学経営学大学院に入学。2000年に卒業し、MBAを取得する。帰国後、医学教育動画を配信・販売する企業「ケアネット」に入社。DVD事業のエグゼクティブ・プロデューサーを務める一方、同社内のマネジメントにも携わる。2002年、取材活動中に英裕雄先生の訪問診療を体験したことで在宅医療に関心を持つようになり、週末を使って訪問診療を始める。2012年4月、名古屋市緑区に「みどり訪問クリニック」を開業。

 

波村美絵(なみむらみえ)

医療法人みどり訪問クリニック 事務長

1976年沖縄生まれ。九州大学大学院修了後、大学で法学を教える。のちに愛知県に転居する。元々医療への関心の高さから、外科系病院MSWとして勤務。MSW2年間勤務の後、ライターとして医療広報の専門会社へ転職。在宅医療への関心が高まり、2013年医療法人みどり訪問クリニックへ入職。現在に至る。

 

在宅クリニックの組織づくり“4つ”のポイント

スタート時は医師が1人、というケースが多い在宅クリニックですが、医師1人のときから「グループ診療」を前提に、業務アシスタントチームを含めた組織づくりの計画を練ることが大切です。

1.医師一人は危険!開業時から組織づくりを意識して

・業務フローの確立とチーム体制の整備

仕事の手順を誰が見てもわかるように言語化・ビジュアル化して、業務フローを確立しておくことは、クリニック運営にとって非常に大切な観点です。

業務フローの明確化ができていることで業務効率が上がり、スタッフを新規採用する際にも導入しやすくなります。

 

業務フローの整備と同時に整えていくべきなのが、診療アシスタントやドライバー、事務スタッフ等の医療を支えるバックアップ体制。

医師や看護師だけでは手が回らない部分があっても、優秀なバックアップがあることで、スムーズに進めることができるようになります。

 

・医師一人での最適化は、なぜ危険?

開業医が陥りがちなのが、いわゆる“俺様”組織。自分ひとりがやりやすいよう組織を設計してしまえば、新しく医師が入職しても長く定着しにくいのは当然ですよね。

自分以外の医師にとっても動きやすい仕組みができているか、常に意識的にチェックするようにしましょう。

 

2.医師の採用は先行投資

・医師を増やすタイミングとは?

地域に認知され患者数が増加してきたら、医師を増やすことを検討し始めましょう。

一般的な在宅クリニックの場合は、患者数50~60名が医師一人体制での採算ラインと言われていますので患者数を一つの目安にするのが良いでしょう。

 

しかし、医師の採用は容易ではありません。

採用経費も時間も莫大にかかりますので、医師採用は先行投資を行うつもりで、早い時期から先行して臨む必要があります。

 

・“人材の供給源”を探す

医師の採用は、転職エージェントを利用する他、大学病院などでアルバイトをしている医師を当たる方法もあります。

人材の泉”=供給源を探す」つもりで、まずは総合診療や家庭医療系といった、在宅と相性の良い医局に関係を作るなどしておくと、地道な活動がじわじわ効いてきます。

研修の受け入れや非常勤としての門戸を開けておくと、一気に将来の常勤医師の雇用に向けた可能性が広がります。

 

・入職1カ月間が定着のポイント

医師の採用には多大な時間と経費がかかりますので、早期に退職されてしまうと非常に大きな痛手です。

実際に半年で退職となった場合のロスを計算してみると、驚くと思いますよ。

だからこそ、医師のスムーズな入職と定着には細心の注意が必要です。

しっかりとガイダンスを用意し、入職した最初の1カ月間をとくに大事に考えて対応します。

 

具体的には、

・独りにさせないこと

・常に何か困っていないか気にかける

・院長や事務長が面談などを定期実施してフォローする

・定期的に多職種との関わりを持つ機会をつくる

・学会やイベントなどの刺激のある場に参加させる

などが大切です。

一般的なビジネス職の入社後フォローと共通する内容ばかりですが、これらは非常に重要です。

 

 

3.医師数に応じた組織をつくる

・医師のQOLを保つことが必要

患者数の増加に伴って段階的に医師を増やしていくわけですが、組織の体制は1人増えるごとに見直して整備する意識を持ちましょう。

常勤医と非常勤医のキャパシティを見極め、2人目の医師に疲弊が見え始めたら速やかに3人目の採用活動をスタートする。併せて看護師数やドライバー・事務員の体制も見直して行く必要があります。

医師のQOLを担保して働きやすい状態を作ることは、定着を促すだけでなく「医師が働きやすいクリニック」という評判が広まることに繋がります。これが次の採用に繋がって行くのです。

 

・院長は徐々にマネジメントにシフト

院長の実診療とマネジメントの比率は、クリニック運営において大変重要な観点です。

院長が取り組むべき業務は多岐にわたりますので、本来ゆとりを持って各業務に当たれるようにすべきです。

医師が1人増えた時点から、院長は自身の診療を徐々にセーブし、経営や組織マネジメントに注力できるようにしていきたいものです。(実際にはなかなか難しいのですが…)

 

4.事務スタッフを重視した組織設計

・事務スタッフの重要性

365日24時間対応が不可欠である在宅クリニックでは、診療や患者対応のため、必然的に院長がクリニックに不在な時間が長くなります。

しかし不在の時にも、クリニックでは次々と急な判断を要する電話がたくさんかかってきます。

 

例えば、病院からの受け入れ相談や、連携するケアマネジャーからの問い合わせ、訪問看護ステーションからの急変の連絡などなど、挙げ始めるとキリがないほど。

この時に「院長が不在なので折り返します」とばかり対応しているとどうしても対応スピードが落ちてしまい、連絡いただいた方々にも不安を与えてしまうことになります。

 

そこで、院長の代わりに“ひとまずの”判断と対応ができる事務長や事務スタッフの存在が重要になるのです。前回の「集患」編でご説明した信頼残高は、こうした対応の丁寧さやスピード感から積み上がって行くのです。

 

・事務スタッフのモチベーションを上げるために

事務スタッフの質の良し悪しは、クリニックの運営に大きく関わってきます。

しかし、医療の専門資格を持たない彼らは時として、医師や看護師らに対して引け目を感じてしまいがち。

そこで「自分たちは専門職である」と、彼らが誇りを持って仕事に取り組めるような位置づけをすることが大切です。

 

当院では事務スタッフのモチベーションを上げる取り組みのひとつとして「全国在宅医療テスト」※ を毎年、医師も含めて全員で受験して、院内でも点数を競いあっています。

結果、事務のスタッフが優秀な成績を上げていることで自分たちの知識とスキルに誇りを持つことができるようになり、自信を持って仕事に取り組めるようになっています。

 

このように、正確にできることが当たり前と思われがちな事務スタッフにスポットライトを当てる工夫が、優秀なスタッフを採用・定着させるためのポイントになります。

※全国在宅医療テスト:愛媛県の医療法人ゆうの森が主催する、在宅医療関連の知識を高めることを目的とした全国テスト。

 

まとめ:在宅クリニックの組織づくりとは

365日、24時間の対応が求められる在宅クリニックでは、外来診療クリニックとは異なるステップで組織づくりに取り組む必要があります。安定した成長を実現するためにはフェーズごとの戦略を開業当初から念入りに練ること、そして状況ごとに見直していくことが大切です。

医師を含めて、クリニックのスタッフ全員が高いモチベーションを持って仕事に取り組み、QOLの高い状態を保てるよう、マネジメントしていきたいものです。

 

 

医療法人みどり訪問クリニック

〒458-0007

愛知県名古屋市緑区篭山1-109-1 シティコーポ小坂南102

TEL:052-680-7030 FAX:050-3737-0026

http://midori-hcl.net/

 

(取材・文/磯貝ありさ、撮影/日置成剛)

 

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