アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは―人生の最終段階での受けたい医療・ケアについて考える

人生の最終段階で受けたい医療行為はどのようなものか。みなさんは考えたことがありますか。終末期には約7割の人が自分自身で意思決定することができなくなるといわれていますが、そんな人生の最期に備えて準備するプロセスが「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」です。今回は、ACPの現状や、ガイドラインの詳細など、ACPにまつわる情報をお伝えします!

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは―リビングウィル、事前指示書との違いは?

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」と定義されています。

患者自身で意思決定できなくなる前に、今後の治療や療養について、患者と家族、医療・介護チームがあらかじめ話し合い、共有することを指します。

終末期の意思決定に関連するという点では「リビングウィル」や「事前指示書(アドバンスディレクティブ)」と似ていますが、それぞれに違いがあります。

まずリビングウィルは、生前の遺書として、終末期の医療行為についての患者の希望を示す文書になります。具体的には、終末期の延命措置や、緩和医療提供についての希望を示す際に用いられます。

事前指示書については、終末期の医療行為についての患者の希望のほかに、患者自身で判断することが難しくなった場合に、代わりに意思決定する代理人を明確にする際に活用されています。

そして、ACPは、今後の医療やケアについて、患者自身の希望を示す、という点ではリビングウィルや事前指示書と共通しています。

これら2つは患者ひとりで作成することも可能ですが、ACPは「家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合う」ことが必要になります。

医療や介護の専門家が介入することで、患者本人の希望や価値観に沿った医療方針を提案することができるようになり、患者や家族も最適な医療方針を選択できるようになるのです。

ACPの実情―認知度も実施率も、まだまだ低い!?

最近重要性が認識され、関心が集まりつつあるACP。

厚労省が2018年3月に公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(回答者数:4218名)では、アドバンス・ケア・プラニング(ACP)の実施について、一般国民の約6割、医師、看護師、介護職員については約8割が賛成と回答しています。

しかし、ACPの認知度はまだまだ低く、一般国民の75.5%が、医師、看護師についても約4割がアドバンス・ケア・プラニング(ACP)を知らないと回答しています。

ACPの実施状況についても、現時点ではあまり芳しくありません。

一般国民の約6割が人生の最終段階における医療・療養についてこれまでに考えたことがあると回答しているのに対し、これらについて家族や医療介護関係者と話し合ったことがあるのは約4割と、ギャップがみられることがわかります。

また、医療機関での実施状況についても、医師の66.2%、看護師の66.0%がACPを行っていないと回答しており、今後の実施についても約7割は検討すらしていないことが明らかになっています。


今後適切にACPを実施していくためには、まずは普及活動が必要といえるでしょう。

また厚労省は、よりなじみやすい言葉になるように、2018年11月にACPの愛称を「人生会議」としたことを公表しました。

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」とは

2018年3月に、日本でもACPの概念が盛り込まれた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が厚労省によって作成されました。

このガイドラインは、2007年に制定された「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版で、患者本人の意思を最後まで尊重するという意図から、名称が「終末期医療」から「人生の最終段階」という文言に変更されています。

また、今回の改定でACPの概念が盛り込まれたことによって、医師などの医療従事者から情報提供と説明を行った上で、患者本人が医療の方針を決定し実施するという従来からの原則に加えて、以下の3点が追加されました。

(1)患者の意思が変化する可能性があることを踏まえ、患者自身がその都度医療・ケアに対する意思を示し、伝えられるような支援を行う。本人との話し合いも繰り返し行う。

(2)患者が自身の意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族なども含めて、話し合いを繰り返し行うことが重要。また、話し合いに先立ち、患者の意思を本人に代わって推定する者として特定の家族をあらかじめ指名することも重要である。

(3)医療・ケアチームの一員として、介護従事者を追加。

ACPを踏まえた内容に変更されていますね。また、これらに加えて、医療ケアの方針決定手続きとして、話し合いによって決定した医療ケアの方針は、その都度文書にまとめておくことが明記されました。

ただし、今回のガイドラインでは、ACPの具体的な手順については明確に示されてはいません。

ACPや事前指示書については、日本医師会のほか、広島県、京都府、愛知県半田市などの地方自治体が、手引きや事前指示書を独自で作成しています。気になる方は一度チェックしてみましょう。

ACPと診療報酬・介護報酬

2018年3月に改訂され、ACPの概念が反映された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」ですが、2018年度に同時改正された診療報酬・介護報酬で、看取りに関する以下の報酬の算定要件として明示されています。

  • 診療報酬

在宅ターミナルケア加算(在宅患者訪問診療料)

訪問看護ターミナルケア療養費

  • 介護報酬

ターミナルケア加算

いずれも在宅で看取りを行う際に算定される報酬となっており、「人生の最終段階における医療の決定プロセスにおけるガイドライン」の内容を踏まえて話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本に、他の医療・介護関係者と連携して対応することが要件として指定されています。

認知度も実施率もまだあまり高いとは言えないACPですが、診療報酬・介護報酬の加算要件に加わったことにより、今後状況が変わるかもしれません。

まとめ

今回は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)をご紹介しました。現在関心が集まっている、人生の最終段階での意思決定。ACPという言葉になじみはなくとも、最期にどのような医療ケアを受けたいか、考えたことがある方も多いのではないでしょうか。

記事中でご紹介した厚労省の調査では、最期に受けたい(または受けたくない)医療について、家族などと話したことがない理由として、最も多く挙げられたのが「話すきっかけがなかった」ことでした。自分の最期の希望を考えたり、その希望を家族や大切な方と共有してみたり…この記事がそんなきっかけになれば幸いです。

厚生労働省:自らが望む人生の最終段階における医療・ケア

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisyu_iryou/index.html




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