加齢性難聴の基本的な症状と原因、診断方法|加齢性難聴の基礎知識(第1回/全3回)

医療・介護に携わる方なら、一度は難聴の患者さんを受け持ったことがあると思います。難聴患者さんとの意思疎通は時に難しく億劫に感じるかもしれませんが、難聴を放っておくと日々のコミュニケーションの機会が失われ、認知症が進行する可能性もあります。

「加齢性難聴の基礎知識(全3回)」のシリーズでは、QOL(生活の質)に大きな影響を与える「加齢性難聴」についての原因や対応方法を3回に渡ってお伝えします。

 

「加齢性難聴の基礎知識(全3回)」
第1回:加齢性難聴の基本的な症状と原因、診断方法 ‎
第2回:加齢性難聴の治療や予防のために知っておくべきこと
第3回:加齢性難聴患者さんとのコミュニケーションのコツ

加齢性難聴とは、どんな病気?

加齢に伴い、視力や筋力と同様に聴力も低下します。この加齢による難聴のことを「加齢性難聴」または「老人性難聴」と呼びます。
高齢者の中には「老人性」と表現すると嫌がる(ショックを受ける)方がいるため、医療現場ではオブラートに「加齢性」と表現することが多いです。

人が聞こえる領域を「可聴音域」と言い、多少個人差はありますが、低い音では20Hzくらいから、高音では2万Hzまで聴くことができるとされています。加齢性難聴では、全音域が聞こえなくなるのではなく、高音から聴力が低下します。

30代後半から聴力低下が始まる人もいれば、70歳を超えても聴力低下の進行が緩やかな人もおり、視力と同様に発症時期や進行速度など、個人差が非常に大きいのが特長です。

加齢性難聴の原因は内耳障害

では、なぜ加齢性難聴が生じるのでしょうか。

原因を説明するには、まず耳の構造についてお話しする必要があります。耳は外部から順番に「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」の順番に名前が付けられており、外耳の入口は一般的に「耳の穴」と表現されています。この耳の穴から鼓膜までが外耳、鼓膜より奥の耳小骨(じしょうこつ)という音の振動を増幅させる骨がある空間が中耳、その奥を内耳と言います。

内耳は、三半規管(さんはんきかん)という平衡感覚に関わる重要な器官と、蝸牛(かぎゅう)という聴力に関わる器官を備えています。加齢性難聴では、この蝸牛にある有毛細胞が減少することにより生じるとされています。
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加齢性難聴の診断 他に難聴を起こす病気とは?  診断には聴力検査が有効です。

健康診断で行う聴力検査では、高音と低音の2つの音を検査しているので、30代後半以上で高音のみが両側性に聞こえなくなった場合、加齢性難聴が疑われます。
しかし、健康診断では、スクリーニング目的なので、簡易的に2つの音域しか確認しません。そのため、初めて難聴を健康診断で指摘された人は加齢性以外の他の難聴の原因となる疾患が無いかどうかを、必ず耳鼻咽喉科で確認する必要があります。

難聴を起こす他の病気としては以下が挙げられます。

● 外耳の病気
・外耳炎
・耳垢塞栓

● 中耳の病気
・中耳炎
・耳硬化症

● 内耳の病気
・加齢性難聴
・突発性難聴
・メニエール病
・低音障害型感音難聴
・騒音性難聴

● その他
・聴神経腫瘍
・脳卒中(脳梗塞、脳出血) など

これらを考慮に入れて、耳鼻咽喉科では、問診や診察を行います。

問診や診察でのポイント

まず問診では、難聴が突然始まったものではないか、耳鳴りや耳閉感、めまいを伴わないかを確認します。これは、比較的患者数が多く、高齢でも発症する、内耳疾患の突発性難聴やメニエール病などを除外するためです。
加齢性難聴では徐々に進行し、めまいや耳閉塞感は起こりません。

次に診察では、外耳および中耳を確認します。高齢者では、長年の耳の掻きすぎ(特に竹でできた硬い耳かき棒による)や外耳の皮膚の衰えのために、耳垢(じこう)がたまりやすくなっており、長年溜まった耳垢による外耳炎や耳垢塞栓が原因で聴力が低下していることがあります。

外来によく「耳垢が溜まってるので聞こえにくいのでは」と心配してこられる方がいますが、耳垢が外耳を完全に閉塞するほど分厚く蓄積していない限り、耳垢が多少溜まっていても聴力にほとんど影響はありません。
そのため、実際は耳垢による難聴はまれで、ほとんどは加齢による難聴です。

中耳の診察は鼓膜の向こう側(中耳側)に液体が溜まっていないか、炎症を起こして鼓膜やその周囲が赤くなっていないかなどを確認します。

検査では、標準聴力検査やSISI検査などが行われます。標準聴力検査は必ず行われる検査で、250Hz〜8000Hzまでの聴力を測定します。
加齢性難聴の場合は、どの音域で聴力が低下しているかや、左右差が無いかなどを確認します。

SISI検査は加齢性難聴に特徴的であるリクルートメント現象を確認します。リクルートメント現象とは、小さい音は聞こえにくく、大きな音になると急に大きく聞こえてうるさく感じる現象です。
高齢者にとって大きな音は若い人と同様、またはそれ以上にうるさく感じることがあるのです。しかし、この検査をしなくても診断は容易であり、実際は大学病院などの大きな病院以外では行われていません。

難聴の傾向があったらまずは耳鼻咽喉科の受診をすすめてください

介護現場では、高齢者が多いため難聴患者さんと接することが多いと思います。退職後は健康診断を受けていない方も多いため、難聴を指摘されることなく放置されていることも少なくありません。

コミュニケーションがやや困難と感じる患者さんがいたら、検査が可能(意思疎通が可能)であれば、ぜひ耳鼻咽喉科受診をすすめていただければと思います。ほとんどが加齢性難聴ですが、上記に挙げたような他の疾患が隠れている可能性もあるからです。

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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