家族介護を担う若者/子どもたち「ヤングケアラー」を私たちはもっと知らねばならない。|在宅医療の基礎知識

高齢化が進みつつある日本。2025年には団塊世代が後期高齢者になり、高齢者の人口がさらに多くなると予想されています。また、政府が在宅医療・介護に重心を置きつつあることから、家族介護者の負担がさらに大きくなると見込まれています。

今回ご紹介するのは、きょうだいや両親、祖父母のケアに取り組む子どもや若者である「ヤングケアラー」について解説します。

ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、障害や慢性疾患、精神的な問題を抱えているなどの要因で、家族にケアが必要な人がいるため、本来大人が担うはずである家事や家族の世話、介護などを行う子どもや若者のことです。
18歳未満の子どもをヤングケアラー、18~30歳代までのケアラーを若者ケアラーと呼ぶこともあります(以降、まとめてヤングケアラーと呼びます)。

具体的には、手伝いの範囲を超えた、次のようなケアを担っている子どもや若者を指します。

・ 家事(買い物、料理、掃除、洗濯など)

・ きょうだいや家族の世話、看病など

・ 家族の介護(食事、入浴、排泄などの身体介助、見守りなど)

・ 家計のための労働

・ その他(請求書の処理、日本語以外が母語となる家族の通訳など)

家族へのケアに取り組むために学校に行けない、友だち付き合いが難しくなるといったことに加え、年齢が上がると、進学や就職、結婚、キャリア形成など人生に大きな影響を与えると指摘されています。
しかし、日本ではヤングケアラーに対する支援は現時点では行われていないのが実情です。

ヤングケアラーの現状

2017年に実施された総務省の就業構造基本調査では、30歳未満の介護者は21万100人と推計されており、2012年の17万7,600人から増加していることが明らかになりました。
また、15歳未満は調査対象外となっているため、実際の数はもっと多いと見込まれています。

これに対して50歳以上の介護者は、全体の約8割に上る484万500人(全体では627万6,300人)を占めており、若年の介護者が非常に少ないことがわかります。

どうしてヤングケアラーは近年増加しつつあるのでしょうか。
その背景には、ケアの現場が病院や施設から、在宅医療・介護へとシフトしつつあることや、核家族化が進み世帯構成人数が減少していることが挙げられます。家庭内でケアが必要となった場合に、大人だけでは対応しきれず子どもがケアの担い手にならざるを得ないのです。

また、共働き世帯やひとり親世帯の増加もヤングケアラー増加の要因となっています。
特にひとり親世帯については、祖父母と同居しているケースが多く、子どもがケアの担い手となるケースが多いといわれています。

ヤングケアラーが直面する課題

では、ヤングケアラーは具体的にどのような課題に直面しているのでしょうか。

2016年に、大阪歯科大学と関西学院大学が、大阪府の公立高校生5246名に対して共同実施した調査では、272名(5.2%)がケアを行っていることが明らかになっており、そのうちの44%はケアの頻度について「週4、5日以上」と回答しています。
ケアにかかる時間については、「学校のある日に2時間以上」と「学校のない日に4時間以上」がそれぞれ22%となっており、ケアに多くの時間を費やしていることがわかりました。

また、学校生活への影響についても問題視されています。日本ケアラー連盟が2016年に神奈川県藤沢市の公立小学校、中学校、特別支援学校の教員1098名に対して実施した調査では、家族のケアをしていると思われる生徒について、かなり多くの生徒が学校生活へ何かしらの影響があると回答しています。具体的には「欠席(56%)」、「学力がふるわない(42%)」、「遅刻(40%)」といった悪影響が現れています。

ヤングケアラーについては、現時点ではケアラーへの直接の調査が少なく、実態把握についての研究が始まったばかりの段階です。

しかし、藤沢市の調査では、回答者の4割がヤングケアラーという言葉を聞いたことがあると回答しており、認知度と関心が高まりつつあることも伺えます。
適切な支援を行うためにも、まずはヤングケアラーの存在について、多くの人に知ってもらうことが大切なのかもしれません。

ヤングケアラーへの支援策―イギリスの事例より

ヤングケアラーに対するサポートについては、日本では現時点では実施されていませんが、イギリスやフランス、スウェーデン、オーストラリア、ケニアなどでは既に調査や支援が行われています。

特にイギリスについては、1980年代からヤングケアラーの調査が開始され、地域の支援団体が主体となってサポートを行っています。
2014年にはアセスメントが法的に義務付けられるなど、先進的な取り組みを行うイギリスではどのようなサポートが実施されているのでしょうか。一部の事例をご紹介します。


ケアラー同士の交流の場「ヤングケアラー・プロジェクト」

ヤングケアラー同士で交流する場のことで、チャリティー団体やNPO、民間の支援団体が運営しています。
元々は地方で生まれた支援策ですが、現在はイギリス全土に広がり300団体が活動しています。プロジェクトを通してケアラー同士の交流を深めるだけでなく、子どもたちを家族のケアから一時的に解放する目的もあります。

週に一度集まって交流するといった活動のほか、同世代の子どもと学校や家庭の外で楽しい時間を過ごしてもらうため、テーマパークや映画館などへ外出するイベントや、ケアについての踏み込んだ議論を行うグループセッションなども実施されています。

ケアの量・責任の大きさ・精神的な影響を評価「アセスメントシート」

イギリスでは、取り組むケアの種類や量、どのような感情を抱きながら取り組んでいるかなどを把握するために、アセスメントシートが広く活用されています。支援団体は、ケアラーの責任や作業量を減らすためにどのようなサポートが必要か、アセスメントシートを通して判断します。

また、シートの結果を踏まえて、福祉や教育の専門家、教員などの関係者が連携し、家族全体をサポートする取り組みを行う地域もあります。
多職種連携によって、ケアラーだけでなく家族が抱える問題を解決することで、ケアラー自身の負担も解消していくのです。

まとめ

ヤングケアラーの実態についてまだ明らかになっていない点もあるものの、大きな負担を抱えていることが次第に明らかになりつつあります。
しかし、いまだにケアを「お手伝い」としか受け止めず、周囲が支援の必要性を感じていないことや、家族の役に立ちたいという意識が強いために、ケアラー自身も現状を問題視していないケースが多いことから、残念ながらヤングケアラーへのサポートはあまり進んでいません。

ヤングケアラーは今後ますます増加すると見込まれています。家族のために頑張る子どもたちが、同世代の子どもと同じような経験を積み、生きられるよう、行政や地域がどのようにサポートすべきか。今こそ考えるべきなのかもしれません。

<出典、参考文献>

澁谷智子(2018)『ヤングケアラー―介護を担う子ども・若者の現実』中公新書.

青木由美恵(2018)「ケアを担う子ども(ヤングケアラー)・若者ケアラー-認知症の人々の傍らにも-」:

http://www.dcnet.gr.jp/pdf/journal/t30_j_20180425_sousetsu06.pdf

一般社団法人日本ケアラー連盟 ヤングケアラープロジェクト:

https://youngcarerpj.jimdofree.com/

一般社団法人日本ケアラー連盟 ヤングケアラープロジェクト「藤沢市 ケアを担う子ども(ヤングケアラー)についての調査≪教員調査≫報告書」

濱島淑恵、宮川雅充「高校におけるヤングケアラーの存在割合に関する一考察」

総務省統計局:平成29年就業構造基本調査

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html

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