介護離職すると負担が増える!?介護離職の実態と支援策|在宅医療の基礎知識

両親や配偶者、子どもなど、自分の大切な人に介護が必要になった。そんなときにあなたはどうしますか。まずは仕事をしながら介護をしてみるけど、専念するために仕事を辞めるしかない…そう思われる方もいるかもしれません。このように介護を機に離職する「介護離職者」は年間10万人増え続けているといわれています。

今回は介護離職者の現状と、抱える大きな負担、政府や企業のサポートについて解説します。

介護離職の現状

総務省が実施した、平成29年就業構造基本調査によると、15歳以上で介護をしている人は627.6万人。
そのうち、有業者(就労によって収入を得ている人。現在お休みしている人も含みます。)は346.3万人となっており、男性の方が有業率が高くなっています(介護者のうち、男性65.3%、女性49.3%)。

半数以上の介護者は働きながら介護に取り組んでいるということになりますが、男女とも40~50代は特に有業率が高くなっています。
また、男性は正規社員(79.9万人)、女性はパート・アルバイトなどの非正規社員(104.1万人)が最多となっています。

一方で、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した人は9.9万人
離職者全体の1.8%とそれほど多くが該当するわけではありませんが、2007年以降毎年10万人ずつ増え続けているともいわれています。

介護離職者の内訳は、男性が2.4万人、女性が7.5万人と女性が8割を占めており、年齢別では50代が37%と最多となっています。
ちょうど働き盛りの年代が該当していますね。
また、雇用形態別では、男性は半数近くが正規社員(1.1万人)で、女性は7割が非正規社員(5.2万人)であり、介護離職による経済損失は年間6500億円にも上ると試算されています。

なぜ介護離職するのか

厚労省の委託事業として三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した、介護離職についての調査では、介護を機に離職した理由について、男女ともに、「仕事と手助け・介護の両立が難しい職場だったため(男性62.1%、女性62.7%)」が最も多く、「自分の心身の健康状態が悪化したため(男性25.3%、女性32.8%)」、「自身の希望として「手助・介護」に専念したかったため(男性20.2%、女性22.8%)」と続きます。

冒頭でご説明しましたが、40~50代といった主要な介護者の年齢層はいわゆる「働き盛り」の時期と重なり、会社で主要な役職についているケースもみられます。
重要なポジションだからこそ、休んだり時間調整をしたりすることが難しく、支援制度が活用しづらい。
その結果、仕事と介護の両立が難しくなり、退職せざるを得なくなってしまうのです。

実際に、離職者が手助・介護のために利用した制度についての調査では、「利用していない」(47.6%)が最多となっており、「有給休暇(年次有給休暇、積立年次有給休暇、その他会社独自の有給休暇制度を含む)」(32.3%)がそれに続きます。
介護休業制度、介護休暇の利用率については、10%程度と低い割合となっています。

介護休業制度、介護休暇、有給休暇などの休暇を利用しなかった理由については、「介護に係る両立支援制度がないため」が最も高い割合(45.2%)で、「自分の仕事を代わってくれる人がいないため」(20.5%)も上位に挙げられています。
また、「介護に係る両立支援制度を利用しにくい雰囲気があるため」(10.5%)を選択する人も多く、職場の雰囲気が問題となっていることも伺えます。

なお、「半日単位、時間単位等の休暇制度」、「遅刻、早退又は中抜けなどの柔軟な対応」といった柔軟に勤務時間を調整する制度の利用については、離職者と比較し、就労者の方が利用率が高いという結果が出ています。

介護離職者が抱える負担

介護離職者の多くは、仕事と介護の両立が困難であることや、両立による負担を解消したいという理由で仕事を辞めることを決めています。

では、介護離職した場合、本当に負担は解消されるのでしょうか。

離職後の負担について、「負担が増した」(「非常に負担が増した」、「負担が増した」)と回答した人は、「精神面(64.9%)」、「肉体面(56.6%)」、「経済面(74.9%)」といずれも半数以上を超えています。
つまり、負担が増すのです。

具体的にどのような負担を抱えることが多いのでしょうか。それぞれ見てみましょう。

・肉体的負担

就労者と比較すると、離職者の方が、介護の頻度、回答者自身が担う介護の内容が多くなり、一人で抱え込んでしまう傾向がみられることがわかっています。
一人で全てをこなそうとして心身ともに疲れてしまうのです。

特に、介護者が担う手助・介護の内容については、就労者と比較した場合に大きな差がみられる項目があります。
それは、「排泄や入浴等の身体介護」。
就労者が6.8%なのに対し、離職者は30.9%と大きな差があります。
そのほかにも離職者の方が、自身が担う介護内容が多い傾向がみられ、親族・事業者といった他者に頼らず、ひとりで介護に取り組んでいることも明らかになっています。

このようにひとりで抱え込んでしまう背景には、離職により収入源が断たれることも一つの理由と考えられます。
収入が得られないからこそ、介護サービスを利用する経済的余裕がなくなってしまうのです。

・経済的負担

続いて、収入源がなくなることによる経済面での負担が挙げられます。

明治安田総合研究所の報告によると、介護のために離職し、介護に専念する人のうち、生計の維持に苦労していると回答した人は、男女とも3割程度を占めることがわかっています。

特に40歳代については、男性は50.0%、女性も34.0%と、50~60代と比較してより多くの離職者が経済面で負担を強いられている現状が伺えます。
経済的な準備ができないまま離職してしまう人が40代に多いことが背景にあると考えられています。

また、いったん離職してしまうと再就職が難しくなることも明らかになっています。

大和総研の報告によると、介護離職後の再就職率は、介護離職者全体の3割にとどまり、年齢が上がるほど困難であることや、たとえ前職が正規社員であっても、離職期間が長くなると非正規社員としての就業となってしまうことが多いことも明らかになっています。

・精神的負担

肉体的な疲労や、経済的な不安が募ることで介護者がイライラしがちになります。
また、仕事を辞めることで社会とのつながりがなくなり、要介護者と自宅で向き合う生活が続くと、社会からの孤立を感じ、これらが積み重なり「介護うつ」を引き起こすケースも見られます。
最悪のケースでは虐待などの事件につながる可能性もあり、注意が必要です。

離職者への支援

団塊世代が後期高齢者になる2025年を控え、今後働きながら介護に取り組む人は増加するといわれています。
介護と仕事の両立ができるように、政府、企業とも介護者の支援に取り組んでいます。

まず、政府については、2015年11月、安倍内閣は「一億総活躍社会」の実現に向けた重点課題「新3本の矢」の一つとして、「介護離職ゼロの実現」を取り上げています。

施設・在宅介護サービスの基盤確保、介護職の人員確保といった、要介護者の受け皿の整備に向けた施策に加えて、介護に取り組む家族へのサポートとして、相談・支援体制の充実、介護休業・介護休暇を取得しやすい職場環境の整備といった支援策についても実施されつつあります。

企業では、仕事と介護の両立に向けた支援制度が導入されています。
2016 年3月に改正育児・介護休業法が成立し、介護休業を分割して取得できるようになるなど、以前より制度が利用しやすくなりつつあります。
一部について簡単にお伝えします。

・介護休業制度

対象家族1人につき通算93日間(分割して3回まで)取得可能。

・介護休暇

対象家族の介護、病院の付き添い、介護サービスの利用に必要な手続の代行のために、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、休暇を取得できる。原則、1日又は半日(所定労働時間の2分の1)単位で取得可能。

・介護のための時間外労働の制限(残業時間の制限)

時間外労働時間を1か月24時間、1年150時間に制限。この範囲を超えて時間外労働をさせてはならない。

・介護のための所定労働時間短縮等の措置

所定労働時間を短縮する制度、フレックスタイム制度、時差出勤などの所定労働時間短縮措置か、労働者が利用する介護サービスの費用助成のいずれかを行う。対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年間に2回以上の取得可能。

また、介護休業制度を利用し、介護休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80%未満に低下したなどの一定の要件を満たした場合には、ハローワークへの支給申請によって、介護休業給付金を受け取ることも可能です。

まとめ

年間10万人が介護によって離職する日本。しかし、介護離職によって生じる負担はとても大きなもので、肉体的、経済的な負担だけでなく、不安感や孤独から生じるストレスといった精神的な負担も抱えることとなります。辞めてしまう前に、職場や親族、介護事業者のサポートが得られないか、一人で抱え込まずに周囲へ相談することが大切です。

しかし、職場の雰囲気を理由に、いまだに介護の両立支援制度の利用が進んでいないのが現実です。まずは企業の風土を、そして無理せずに周囲のサポートを利用しても良い!と思えるよう、私たち自身の意識を改革することが必要なのではないでしょうか。

<参考文献など>

総務省統計局:平成29年就業構造基本調査

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html

経済産業省:第1回 産業構造審議会 2050経済社会構造部会

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/001.html

厚生労働省:平成24年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書(平成24年度厚生労働省委託調査)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/h24_itakuchousa.html

内匠 功(2016)「介護離職ゼロ」をめざして,『生活福祉研究 通巻92号』

https://www.myilw.co.jp/publication/myilw/pdf/myilw_no92_feature_4.pdf

内閣府:規制改革推進会議 第7回保育・雇用ワーキング・グループ 議事次第

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/hoiku/20190109/agenda.html

厚生労働省:育児・介護休業制度ガイドブック

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」