6月も要注意!熱中症-高齢者が注意すべきポイント|在宅医療の基礎知識

酷暑となった2018年。総務省消防庁のデータによると、2018年6月から9月の期間に熱中症で救急搬送された人は、過去最多の95,137人で、中でも65歳以上の高齢者については、45,781人(48.1%)と最多を占めることが明らかになりました。

熱中症が多いのは真夏だけではありません。梅雨の晴れ間がのぞいた日や梅雨明け頃など、体が暑さに慣れていない…そんな今の時期が実は要注意なタイミングなのです。

そこで今回は、熱中症の基本的な知識と、高齢者が注意すべき事項について解説します。

熱中症とは

私たちの体温は、熱の産出と放出によって一定に保たれており、運動などで体温が上昇した場合でも、汗や血流によって熱を体外に放出することで常にバランスが調整されています。

しかし、汗を大量にかき、体内の水分や塩分が減少したり、血液の流れが滞ったりすると、体温調節が適切にできなくなってしまい、体温が急上昇してしまいます。
その結果、引き起こされる体調不良の総称を「熱中症」と呼びます。

熱中症の症状

では、熱中症になると具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。

自覚症状としては、頭痛やめまい、吐き気などが挙げられますが、重篤化すると意識障害が現れる場合もあります。
高齢者の場合は症状が重症化しやすいといわれており、特に注意が必要です。

熱中症の症状については、重症度・緊急度からⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分類されています。
Ⅰ度については、水分・塩分の補給や、涼しい場所での休養により対応することが可能ですが、Ⅱ度については医療機関での受診が、Ⅲ度に至っては医師の判断により入院する必要があります。
意識がない場合は全てⅢ度と判断されます。異変を見逃さずに、直ちに救急車を呼びましょう。

Ⅰ度(熱失神、熱痙攣):めまい、立ちくらみ、大量の汗、筋肉痛、こむらがえり。意識障害はない。

Ⅱ度(熱疲労):頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下。脱水症状。

Ⅲ度(熱射病):意識障害、けいれん発作、高体温。

また、熱中症の予防には、脱水症とその前段階の「かくれ脱水」に注意する必要があります。

高齢者の「脱水症」と「かくれ脱水」とは?熱中症とともに要注意!|在宅医療の基礎知識

2018年7月30日

熱中症になったら-応急処置

熱中症と思われる症状がみられる場合、どのような対応をすべきでしょうか。

意識がない場合には直ちに救急車を呼び、涼しい場所への移動、体を冷やすなどの処置も同時に始めます

症状が軽い場合も、応急処置後、休養しても症状が改善されない場合は速やかに医療機関を受診してください。

①涼しい場所へ移動する

風通しのよい日陰や、エアコンで冷却された室内に移動させます。

②衣服を脱がせて体を冷却する

体からの熱を放出するため、ベルトやネクタイなどゆるめて、風通しを良くします。下着も身体を締め付けないものに着替えましょう。

次に、露出させた肌をうちわや扇風機、冷水にあてて冷やします。
首、わきの下、太ももの付け根など、皮膚のすぐ近く太い血管が通る箇所を、氷のうや氷枕で冷やしましょう。

冷凍庫でペットボトルを冷凍したり、保冷剤を冷やしたりしておくことで氷のうの代わりになります。
いざというときに備え、常備しておくことをおすすめします。

また、濡れたタオルを体に当てながら、扇風機などで風をあてる方法についても、体が汗をかいた状態となり、体温を下げるのに有効です。

③水分・塩分の補給

冷たい水分を自分で摂ってもらいます。
意識がはっきりしている場合は、口から摂取しても問題ありません。
大量に発汗している場合には、経口補水液やスポーツドリンクなど水分と塩分を含んだ飲み物が適しています。

意識障害がある場合や、吐き気がある・吐いてしまう場合は、口からの摂取は禁物。
点滴による処置が必要となりますので、直ちに医療機関を受診しましょう。

熱中症になりやすい環境とは

熱中症を引き起こしやすい環境については、環境、からだ、行動の3つの観点で、次の特徴が挙げられています。

①環境

気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、急に熱くなった日

②からだ(年齢、体調など)

高齢者、乳幼児、肥満の方、糖尿病などの持病がある方、下痢やインフルエンザなどによって脱水状態となっている方、二日酔い・寝不足などの体調不良、低栄養状態など

③行動

炎天下での運動、慣れない作業、長時間の屋外作業、水分補給できない状況

ここでポイントとなるのは、熱中症の危険性については、気温だけでは判断が難しいということ。
日本のような多湿な環境では、湿度、気流、日差しの強さなど、様々な気象条件を踏まえて判断する必要があります。

そこで参考になるのが、環境省が公表している「暑さ指数(WBGT)」です。
暑さ指数は、1954年にアメリカで提唱された熱中症を予防するための指標で、①湿度、②日射、輻射熱、③気温の要素を組み合わせて評価しています(湿度:日射、輻射熱:気温=7:2:1となっています)。
暑さ指数が28度を超えるあたり(気温だと31度以上)から熱中症による死亡者が増え始め、その後指数が高くなるに従って死亡率が急激に上昇することがわかっています。

暑さ指数については、環境省が全国840地点で毎日観測しており、実況値と予測値をHPに掲載しています。

環境省:熱中症予防情報サイト

http://www.wbgt.env.go.jp/

また、乳幼児と高齢者は熱中症になるリスクが高く、特に注意が必要といわれています。なぜ注意が必要なのでしょうか。高齢者の注意点について解説します。

高齢者の熱中症、特に注意すべきポイント―発生場所は「家の中」

高齢者はなぜ熱中症になりやすいのでしょうか。
一つ目のポイントは、老化による体温調節機能の低下が挙げられます。

私たちの皮膚は、気温を感知するセンサーとしての役割を果たしています。
このセンサーが暑さを感知することで、脳の視床下部にある「体温調節中枢」に信号が伝達され、血流が増えたり、汗をかいたりと体温を下げようと体が反応します。

しかし、高齢者の場合、皮膚のセンサーの働きが弱まっており、脳が暑さを感じにくくなっています。
その結果、気温上昇に体温調節機能が追いつかず、熱中症になってしまうのです。

また、暑さに鈍感になるため、冷房を使う、服を脱ぐ、といった体を冷やすための行動も遅れがちになり、これも熱中症を引き起こす要因となります。

さらに、若い世代と比較して、体内の水分量が少なく脱水状態になりやすいことや、口渇中枢の衰えにより、のどの渇きを感じづらくなるため、水分補給が遅れがちになることも要因といえます。
老化によって身体機能が低下していることから、症状が重篤化しやすい点についても注意しなければなりません。

そして、高齢者の熱中症で特徴的なのが発生場所。
東京都と政令指定都市の救急搬送者についてまとめられた2013年の報告によると、熱中症の発生場所について、若年層では運動中、労働中など、屋外での割合が高いのに対し、高齢者では住宅が最多で、半数超を占めていることが明らかになっています。
この背景には、体が冷える、環境に悪い、電気代がかかるといった理由でエアコンを使わないことや、暑さを感じにくいために、対策が適切に行われていない、といったことがあるようです。

また、兵庫県立健康生活科学研究所などが、京都府内の高齢者(生涯学習講座を大学で受講している人)に2010年に実施した調査によると、住宅内での熱中症の認知度は65.7%と、熱中症そのものの認知度と比較してかなり低いことがわかっています。
家庭での熱中症の危険性について、正しく理解されていないのも課題といえます。

高齢者の熱中症、予防策は

こまめに水分補給する

のどの渇きを感じにくいことや、トイレに行きたくないといった理由で水分を控える高齢者も少なくありません。
のどが渇く前に、コップ一杯程度の少量の水分を少しずつ摂取することが大切です(一度に大量に摂取するのは不適切)。
なかなか飲んでもらえない場合には、時間やタイミング(毎食後、就寝前、外出前など)をスケジュール化するのも有効です。

飲み物については、通常時は、お茶、カフェインを含まない麦茶などで大丈夫ですが、汗をかいた場合には、経口補水液やスポーツドリンクなど水分と塩分を含んだ飲み物が適しています。

経口補水液については、過剰な塩分摂取が心臓に負担がかるケースや、血圧上昇につながるケースがあるほか、腎臓に持病がある方についても摂取量について注意が必要です。
医師と相談の上、飲むようにしましょう。

また、食事については、水分補給の観点からも重要な役割を果たします。
食事から1日に摂取する水分は1Lと多量であることから、水分補給の意味でもきちんと3食食べることが大切です。

エアコンを使う

エアコンを使い、室温が28度を超えないように調整します。
体が冷えるなどの理由でエアコンを使いたがらない方もいますが、風向を調節し体に直接あたらないようにするなど、工夫して使うようにしましょう。
温湿度計を活用し、気温を目で確認できるようにすることも有効です。

また、冷房をつけたつもりが暖房をつけていた、という事例もあるため、エアコンの機能やリモコンの使い方などの理解を促すよう、周囲が配慮することも必要です。

服装を工夫する

ゆったりとした服のほか、綿や麻など通気性が良い素材やスポーツウェアなど吸湿性の高い服装が適しています。

暑いときには無理をしない

天気予報などで気温を確認し、気温が高い場合には外出を控えるなど、基本的な対策も行いましょう。

そして、水分補給のスケジュールやエアコンの使用状況など、家族や医療・介護スタッフ、近所の方などが見守ることが大切です
暑い日には、きちんと実行できているか確認の連絡をする、自宅へ訪問し目で確かめるなど、周囲が気を配り、必要であれば繰り返し注意するようにしましょう。

まとめ

今回は熱中症について解説しました。梅雨の時期ですが、油断は禁物。暑さに体が慣れていない、今だからこそきちんと対策し、健康な夏を過ごしましょう。また、夏に備えて、適度な運動で暑さに体を慣らす、しっかり食事をとる、といった基本的な体力づくりに今から取り組むのも良いかもしれません。

<参考文献など>

総務省消防庁:平成30年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況

https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/item/heatstroke003_houdou01.pdf

環境省:熱中症環境保健マニュアル2018

http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

環境省:熱中症予防情報サイト

http://www.wbgt.env.go.jp/

日本救急医学会:熱中症診断ガイドライン2015

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf

東京都福祉保健局:地域の見守りで高齢者等を熱中症から守る

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/koza/nettyusyou.html

熱中症予防声かけプロジェクト

http://www.hitosuzumi.jp/

柴田 祥江(2010)『住宅内の熱中症に対する高齢者の認知度と暑熱対策の実態』日本生気象学会雑誌, 2010年47巻2号 p. 119-129

https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/47/2/47_2_119/_pdf/-char/ja

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