高齢者の多剤服用に要注意!ポリファーマシーとは|在宅医療の基礎知識

年齢を重ねると抱える持病や心身の不調はおのずと増えていくもの。それに合わせて増えていくものが「薬」です。薬は病気の治療や症状緩和において大切なものである一方、多剤服用によって有害事象を引き起こしやすくなるなどのリスクを抱えているます。

今回解説するのは、昨年から運用されている「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」に加え、6月には療養環境別の留意点をまとめた各論編が発出され、重要性が増している「ポリファーマシー」。まずは、問題点や対策について、基本情報をご紹介します。

ポリファーマシーとは

ポリファーマシーは、「Poly」と「Pharmacy」を組み合わせた言葉で、不必要に多くの薬を併用することで副作用などの悪影響が起きる状態のことを指します。

「ポリファーマシー=多剤服用」と誤解されがちですが、多剤服用が必ずしも悪いわけではありません。
多剤服用によって、薬物有害事象や服薬過誤、服薬アドヒアランス低下(飲み忘れ、飲み間違いなど)といった問題が引き起こされている状態を、「ポリファーマシー」といいます。

 

では、具体的に何種類の薬を飲むと「ポリファーマシー」と呼ばれる状態になるのでしょうか。
薬剤数に関しては、患者さんの病態、生活、環境などによって状況が変化するため、明確な定義はありませんが、薬物有害事象が薬剤数にほぼ比例して増加するという報告のほか、6種類以上が特に薬物有害事象の発生増加に関連したというデータがあります。

ただし、6種類以上の薬剤が必要な場合や、逆に3種類であっても有害事象が引き起こされる場合もあるため、薬剤数ばかりに注目するのは不適切です。
患者さんの状態を確認しながら、処方の見直しや減薬に取り組むことが大切です。

※有害事象:薬剤の使用後に発現する有害な症状、または徴候。薬剤との因果関係の有無は問わない。

ポリファーマシーの問題点

では、多剤服用によって引き起こされる問題点とはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

・有害事象、副作用が起きやすくなる

次に挙げる例のように、薬を正しく服用しないことにより、有害事象が起きやすくなってしまいます。

(例)薬同士の相互作用によって、薬が効きすぎてしまう。別の病院で処方された同じ薬効の薬を複数服用することで、過剰投与となってしまう。薬の飲み忘れ。患者さんの自己判断で勝手に服薬を中止する。病院での処方ミスが起こる。 など。

・アドヒアランス(正しい用法用量で服薬すること)の低下

正しく服用しないと、残薬が増えてしまうほか、医師が治療効果を正しく評価できなくなってしまいます。

・QOL低下

たくさんの薬を飲まなければいけないことは、患者さんにとって手間となります。

・薬剤費の負担が大きくなる

必要以上に薬が処方されることによって、患者さんの自己負担費用が大きくなってしまいます。

 

高齢者とポリファーマシー

高齢者は特にポリファーマシーに注意が必要といわれています。

理由① 合併症により、多剤服用になりやすい

高齢者の場合、加齢に伴い様々な疾患や、慢性的な症状を多く抱えるようになり、これらの疾病の治療や症状を緩和のため、多剤服用になりやすいといわれています。

実際に、厚労省が発表した、全国の保険薬局での処方調査によると、75歳以上の高齢者の24.8%が7種類以上、41.1%が5種類以上の薬剤を処方されていることが明らかになっており、多く高齢者がたくさんの薬を併用していることがわかっています。

また、様々な合併症を抱えているため複数の医療機関を受診したり、新たな不調を感じるたびに新しい医療機関で受診したりすることにより、処方される薬剤の全体像が把握しづらいことも要因の一つ。
薬による有害事象や副作用を、薬で対処し続ける「処方カスケード」と呼ばれる悪循環に陥る可能性もあります。

理由② 加齢により、有害事象が起きやすい

高齢者の場合、加齢により肝臓や腎臓の代謝機能が低下していることから、通常と比較して、最高血中濃度の増大や、体内での成分消失に時間がかかる傾向がみられます。その結果、通常の用量であっても有害事象を引き起こす可能性があり、特に注意が必要であるとされています。また、薬同士の相互作用による影響も受けやすいといわれています。

 

ポリファーマシーを防ぐために

複数の薬剤を服用している患者さんが、薬による有害事象と疑われる症状を抱えている場合や、服薬アドヒアランスが低下している場合など、ポリファーマシーと疑われる問題が見られた際に必要となるのが「処方の見直し」です。
中止や減薬が可能な薬はないか検討を進めます。

ただし、減薬によって、患者さんが抱える疾患や身体症状を悪化させてしまっては本末転倒です。
やみくもに薬の量を減らすのではなく、患者さんの疾患や症状、薬剤の情報、生活習慣など、多職種が連携し把握して、処方の優先順位をつけることが必要です。
減薬が難しい場合は、体への負担がより少ない薬に変更することや、正しい用法用量で薬を飲めるような工夫をするなどの対策も有効です。

そして、処方見直しにあたって特に注意すべきなのは、「老年症候群」と呼ばれる次の症状が現れた場合です。
これらの症状は、薬による有害事象として現れることが多い一方、一般的な老年症候群としてつい見過ごされがちですので、留意する必要があります。

老年症候群:ふらつき・転倒、記憶障害、せん妄、抑うつ、食欲低下、便秘、排尿障害・ 尿失禁など

また、上に挙げた症状以外にも、難聴、視力低下、手指がうまく動かない、といった症状が現れることがあります。
難聴は薬の用法・用量や薬の効果についての理解がうまくできず、正しく服用できないことにつながり、視力・手指の機能低下については、シートがうまく扱えず、薬の取りこぼしや、紛失を引き起こすおそれがあります。
加齢による不調と単純に捉えるのではなく、服薬管理の観点からも患者さんの身体症状を把握することが重要です。

 

まとめ

多くの高齢者が多剤服用している現状から、ポリファーマシーの対策は必須であるといえます。漫然と処方し続けている薬はないか。生活習慣改善によって減薬できないか…。これら問いに答えるべく、医師、薬剤師、看護師が連携し、患者さんの心身の不調だけでなく、生活習慣や服薬状況まで幅広く把握し、処方を見直すことが大切です。

 

<参考文献など>

厚生労働省:「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」の通知発出について

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000208852.html

日本老年医学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf

日本医師会:超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き

https://www.med.or.jp/doctor/sien/s_sien/008610.html

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