注目の新大綱を解説!認知症施策推進大綱まとめ(前編)|在宅医療の基礎知識

6月18日に閣議決定された「認知症施策推進大綱」。2017年に策定された「新オレンジプラン」の後継となる新大綱では、これまでの「共生」に関する施策に加え、認知症「予防」に関する内容が大きく拡充されました。では、具体的にどのような取り組みが推進されるのでしょうか。新大綱の具体的な施策について解説します。

ポイントは「共生」と「予防」-基本的な考え

今回の大綱のポイントとなるのは、認知症の人との「共生」と「予防」の二つを車の両輪として、施策を推進していること。

新オレンジプランでは、認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく生活し続けられるよう、社会全体で高齢者を支える「共生」に重点が置かれてきましたが、新大綱では認知症の「予防」についての具体的施策が提示されました。

「共生」と「予防」のそれぞれの意味合いは以下の通りとなります。

なお、新大綱の対象期間は、団塊の世代が75歳以上となる2025年までとなっています。

・共生

認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きる、という意味。
これまでの施策を引き継ぎ、生活上の困難がある場合でも、周囲のサポートや理解のもと、自分らしく尊厳を持って暮らし続けられる社会の実現を目指します。

・予防

予防というと、「認知症にならない」という意味を思い浮かべますが、ここでは「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味合いとなります。

認知症予防に関するエビデンスの収集・普及とともに、予防につながると考えられる「通いの場」における活動の推進など、認知症への「備え」となる取組みに重点を置いています。

認知症施策推進大綱―5つの柱

これらの基本的な考えのもと、次の5本柱の施策を実施していきます。

  1. 普及啓発・本人発信支援
  2. 予防
  3. 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
  4. 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
  5. 研究開発・産業促進・国際展開

それでは、具体的な内容についてひとつずつみていきましょう。今回は、1と2についてポイントを解説します。

1.普及啓発・本人発信支援

(1)認知症に関する理解促進

<Point>認知症サポーターの養成

認知症に関する正しい知識を持って、地域や職域で認知症の人や家族を手助けする、認知症サポーターの養成を推進します。

認知症サポーターの養成については、新オレンジプランでも積極的に推進されていた事業ではありますが、新大綱では養成講座の対象が拡大。特に、認知症の人と地域で関わることが多いことが想定される小売業・金融機関・公共交通機関等の従業員などをはじめ、人格形成の重要な時期である子ども・学生を対象に拡大しています。

<Point>子どもへの理解促進

認知症サポーター養成講座の実施に加えて、小・中・高等学校で、高齢者に対する理解を深めるための教育、高齢者との交流活動などを推進します。

<Point>医療・介護従事者等の専門職向け認知症対応力向上研修や認知症サポーターのステップアップ講座

2018年に策定された「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」の内容を盛り込み、普及すべきと明記されました。

参考:厚生労働省 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

(2)相談先の周知

地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなど認知症に関する相談体制の整備を行うほか、ホームページを通して相談窓口にアクセスできるよう環境を整備します。

(3)認知症の人本人からの発信支援

<Point>認知症の人本人からの発信

認知症の人が自らの言葉で、希望を持っていきいきと生活している様子を発信することを支援します。

本項についても、新オレンジプランにも記載されていたものとなりますが、今回新たに「認知症とともに生きる希望宣言」に関する取り組みが盛り込まれました。

認知症とともに生きる希望宣言」は、2018年11月に日本認知症本人ワーキンググループが表明したもので、新大綱ではこの宣言を実現した「認知症本人大使(希望宣言大使(仮称))」を創設する考えが示されています。

参考:一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ 「認知症とともに生きる希望宣言」

http://www.jdwg.org/statement/

<Point>認知症当事者による支援(ピアサポーター、本人ミーティング)

心理面、生活面に関する早期からのサポートを、当事者でもあるピアサポーターが実施するほか、本人同士が必要なことなどを語り合う「本人ミーティング」の普及を推進するなど、認知症の人本人による相談活動を拡大します。

主なKPI/目標

  • 企業・職域型の認知症サポーター養成数 400万人(認知症サポーター養成数 1200万人(2020年度))
  • 学び(社会教育施設での講座の受講等)を通じた地域社会への参画モデルの提示
  • 医療・介護従事者向けの認知症に関する各種研修における意思決定支援に関するプログラムの導入率 100%
  • 広報紙やホームページ等により、認知症に関する相談窓口の周知を行っている市町村 100%
  • 厚生労働省ホームページに全市町村の認知症に関する相談窓口へのリンクを掲載
  • 認知症本人大使(希望宣言大使(仮称))の創設
  • 全都道府県においてピアサポーターによる本人支援を実施
  • 全市町村において本人の意見を重視した施策の展開

2.予防

新オレンジプランでも、発症予防に向けた研究開発の推進、予防につながる運動や社会交流、趣味活動を行うサロンの運営推進などについての記載はありましたが、重点的な課題として具体的な施策、目標が設定されたのは、新大綱が初めてとなります。

(1)認知症予防に資する可能性のある活動の推進

<Point>高齢者の「通いの場」の拡充

地域において高齢者が身近に通える場等を拡充します。新オレンジプランでも、住民主体で運営するサロンなど、認知症予防につながる取り組みを推進していましたが、新大綱ではこれらの「通いの場」を、介護保険の保険者機能強化推進交付金(インセンティブ交付金)も活用し、拡充することが明言されています。

また、通いの場での、かかりつけ医、保健師、管理栄養士等の専門職による健康相談についても、認知症予防につながるとして推進する方針を示しています。

(2)予防に関するエビデンスの収集の推進

認知症の予防に有効と考えられる活動事例(市町村での認知症予防事業、認知症初期集中支援チームによる訪問活動、かかりつけ医や地域包括支援センターとの連携による早期発見・対応に関する取り組みなど)を収集し、全国に横展開するとの記載が盛り込まれました。

そのほかに、国内外の認知症予防に関する論文などを収集し、認知症予防に関するエビデンスを整理した活動の手引きを作成することのほか、国の介護保険総合データベース(レセプト情報など)の活用促進、2020年度から稼働予定の新データベース(CHASE)構築を進めるとのことです。

(3)民間の商品やサービスの評価・認証の仕組みの検討

認知症予防に有効と考えられる民間の商品やサービスの評価・認証の仕組みを検討します。

主なKPI/目標

  • 介護予防に資する通いの場への参加率を8%程度に高める
  • 認知症予防に関する取組の事例集作成
  • 認知症予防に関する取組の実践に向けたガイドラインの作成
  • 認知症予防に関するエビデンスを整理した活動の手引きの作成
  • 介護保険総合データベースやCHASEによりデータを収集・分析し、科学的に自立支援や認知症予防等の効果が裏付けられたサービスを国民に提示
  • 認知機能低下の抑制に関する機器・サービスの評価指標・手法の策定

まとめ

「共生」と「予防」が基本的な考えとなる「認知症施策推進大綱」。新設された予防については、「通いの場」の拡充が大きく掲げられました。認知症の予防に向けて、今後どのように環境が変化していくのか、要注目ですね。

新大綱解説(後編)については、来月掲載予定です。

<参考文献>

厚生労働省:認知症施策推進大綱について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00002.html

厚生労働省:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000064084.html

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」