高齢者が気を付けるべき感染症-ノロウイルスによる感染性胃腸炎

例年12月ごろから流行し始める、ノロウイルスによる感染性胃腸炎。毎年集団感染が報じられますが、子どもや高齢者は重症化しやすく、特に注意が必要とされています。今回はノロウイルスによる感染性胃腸炎について、予防法や注意事項を解説します。

ノロウイルスとは

ノロウイルスは、主に冬に流行する感染性胃腸炎の原因となるウイルスの一種です。
乳児から高齢者まで、幅広い年齢で発生し、高齢者介護施設などでの集団感染が毎年報告されています。

大きさは直径30~40nmほどと非常に小さく、ヒトの体内(腸管)で増殖します。感染力が強く、100個以下という少量でも感染するといわれていますが、十分に加熱により感染性はなくなります。

ノロウイルスの症状と治療法

潜伏期間は1~2日間で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱です。
頭痛、全身倦怠感などを伴うこともあります。
また、感染しても症状が現れない場合や、軽い風邪のような症状で済む場合もあります。

通常はこれらの症状が1~2日続いた後回復しますが、症状が消えた後も1週間程度、長いときは1か月ほど、患者の便にウイルスが残ることがあり、二次感染に注意する必要があります。

ウイルスに対する治療薬はなく、基本的に対症療法が行われます。
嘔吐や下痢によって脱水状態に陥りやすいため、水分補給することが大切ですが、口から補給できない場合は、経静脈輸液(点滴など)が必要となります。

高齢者の場合、脱水症状のほか、吐いたものをのどに詰まらせて窒息状態になったり、誤嚥性肺炎を引き起こしたりするケースもあるため、特に注意が必要です。

ノロウイルスの感染経路

感染経路は、ほとんどが経口感染といわれています。具体的には、次のようなパターンが考えられます。

  • ウイルスによって汚染された食品(カキなどの二枚貝など)を、生または加熱が不十分な状態で食べた場合
  • ノロウイルスに汚染された手指、調理器具などを通して、汚染された食品を食べた場合。
  • 患者の便や嘔吐物を処理した後に、手指の消毒が不十分で、汚染された手指を通してウイルスが体内に入った場合。
  • ウイルスに汚染された場所(患者が触れた手すり、ドアノブ、テーブルなど)に接触し、手指を介して体内に入った場合。
  • 患者の嘔吐物や便の処理が不十分で、乾燥し、ほこりとなって空気中を漂い、ウイルスを体内に吸い込んだ場合。

ノロウイルスというと、カキなどの二枚貝を、加熱が不十分な状態で食べることによって感染する食中毒、というイメージが強いかもしれないが、現在は感染者を介したヒト→ヒトでの感染のほうが多く報告されています。

ノロウイルスの予防法

(1)食べ物はよく加熱する

ノロウイルスは熱に弱く、食品の中心部まで十分に加熱することで感染力をなくすことができます。
目安は、中心部を85~90℃で90秒間加熱すること。
ウイルスの汚染の恐れがある、二枚貝などの食品については、しっかり加熱してから食べましょう。

(2)手洗い

手洗いは、ノロウイルスの感染防止に最も効果的な手段とされています。
手洗いの時間、回数についてまとめられた研究結果をみてみましょう。

手洗いしていない状態で、100万個ウイルスが付着している場合、①流水で15秒手洗いした場合、約1万個が残存しますが、②ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすいだ場合は数百個、③ハンドソープで10秒も見洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返した場合には、約数個にまで減少することが明らかになっています。

森功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006より

外出後、調理前、食事の前、トイレに行った後や、患者の汚物処理やおむつ交換した後などは、必ず石けんでしっかり手を洗いましょう。

正しい手洗い方法については、厚生労働省のリーフレットにまとめられています。

https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/link01-01_leaf02.pdf

(3)嘔吐物、排泄物の処理方法を徹底する

ノロウイルスは感染力が強く、100個以下と少量のウイルスでも感染を引き起こすとされていますが、感染した人の便や嘔吐物には1gあたり100万~10億個と、大量のウイルスが含まれているといわれています。
二次感染を防ぐためにも、処理の際には細心の注意を払う必要があります。

また、ノロウイルスの消毒には、加熱のほかに、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤など)が有効とされています。エタノール(アルコール)や逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)では、十分な効果が得られないとされています。

具体的な処理方法は、次の通りとなります。

★嘔吐物、排泄物の処理方法

  • 嘔吐物の処理の手順を徹底します。
  • マスク、使い捨てガウン、使い捨て手袋を着用します。
    • ノロウイルスは飛沫感染の可能性も指摘されているので、マスクもします。
  • 嘔吐があった場合には、周囲 2 メートルくらいは汚染していると考えて、まず濡れたペーパータオルや布等を嘔吐物にかぶせて拡散を防ぐことが重要です。
  • ペーパータオルや布等で、外側から内側に向けて面を覆うように静かに拭き取ります。
  • 最後に次亜塩素酸ナトリウム液(0.1~0.5%)で確実にふき取ります。使用したペーパータオルや布はビニール袋に入れます。
    • 嘔吐物処理用品を入れた処理用キットをいつでも使えるように用意しておきます。
  • おむつははずしたら、すぐにビニール袋に入れ(2 重にするとなお安全です)感染性廃棄物として処理します。
  • トイレ使用の場合も換気を十分にし、便座や周囲の環境も十分に消毒します。
  • 使用した洗面所等はよく洗い、消毒します。
  • 処理後は手袋、エプロン、マスクをはずして液体石けんと流水で入念に手を洗います。
  • 次亜塩素酸ナトリウム液を使用した後は窓をあけて、換気をします。

「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(20219年3月)」より抜粋

まとめ

つらい感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルス。感染力が非常に強い上に、感染経路が多岐にわたるため、完全に予防するのは難しいかもしれませんが、手洗いをしっかりすることや、発生後の対処法についてきちんと把握しておくことで、感染のリスクを減らすことができます。流行が本格化する前に、きちんと対策しましょう。

<参考文献など>

厚生労働省:高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(20219年3月)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index_00003.html

厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html#14

東京都福祉保健局:社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/noro/manual.html

NHK:「手洗いで感染防ごう ノロウイルス」(くらし☆解説)

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/260467.html

森 功次 他「Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討」, 『感染症学雑誌』, 80:496-500,2006

http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf

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