訪問介護の「調理介護」とは|ご利用者宅で実際に起きたエピソードをご紹介

訪問介護の「調理」は家事援助の一種です。一般的な調理、配膳、後片付けなどがサービス行為となります。
個々のニーズや条件、健康状態や好みに合わせて食事を提供するサービスでは料理の腕前だけではなく、医療や介護の視点からの様々な知識と想像力が求められます。

訪問介護の調理で数年ぶりのご当地の味を堪能

訪問介護の調理では、魚の種類や調理法にこだわりを持っている方が多くいます。焼き魚にしても、生臭いと感じれば食べていただけない利用者さんもしばしば。

ある日、地元の漁師さんが訪問先のご自宅に魚を差し入れてくれました。漁の期間が厳しく制限されているご当地の魚です。即興でその魚を煮つけにしました。食べ慣れていない自分からすると、煮ても焼いても生臭いと感じました。

しかし、利用者さんは「とても美味しい、何年かぶりに食べて懐かしい。家族みんなで毎年食べていたのを思い出した。」と涙を流されました。味に歴史あり。味覚から回想を引き出すことができた瞬間でした。

妻の味を再現できるか?卵の焦げ加減で大苦戦

訪問介護の調理では、台所の調理器具や環境で料理の出来栄えが左右されることがあります。
長年使い込んだ鉄のフライパンにはテフロン加工はされていません。病気で奥様を亡くした80代の男性は奥様の焼いた卵焼きが食べたいと言います。味加減を聞き取り、いざ焼いてみるのですが、鉄の使い込んだフライパンは焦げやすく、慎重に焦げないように焼き上げます。

出来上がった卵焼きを見て男性はおっしゃいました。「もっと焦げてないとダメだよ」と。毎回毎回、理想の焦げ加減との戦いの日々が始まりました。未だに合格点はいただけていません。

訪問介護の調理が「神の声」で料亭の味に早変わり

訪問介護の調理では、自立を少しでも促すために利用者さんと一緒に台所に立つ、献立を考える、味付けを助言してもらうなどをする場合があります。
自身で料亭を営んでいた利用者さんは、中度の認知症で意思疎通が難しくなっています。また、集中力も途切れてしまうので調理を終始共にはできません。

しかし、一口の味見で発する「塩をもう少し」「お酒を少し」で確実に料理の味が整います。経験からくる神の声。料理の質が格段に上がるばかりか、おかげで訪問介護員の料理の評価も家庭でうなぎ上りです。

電子レンジの中にメッセージ?気持ちはチーン…

妻が病弱で調理ができないご夫婦の朝夕の調理の支援に入ったケース。とても気持ちの優しいご夫婦で、「いつも美味しいよ」と言ってくださいます。後片付けはご自分たちでされるので、料理を提供するまでの支援。いつも完食されているものと思っていました。

しかし、電子レンジの中に酢豚や鳥の甘辛煮などの濃い味のスーパーのお惣菜を度々発見。もっと味の濃いものが食べたいのだと思い、味付けを変え肉料理も増やしました。しかし、相変わらず電子レンジの中にその存在を認めます。
そして訪問介護員の気持ちは「チーン…」です。

訪問介護の調理は体と脳に好刺激が期待できる

訪問介護の調理では単においしく完食してもらうことだけが目的ではありません。懐かしい味やほっとする味、「食べる」という当たり前の行為が不安なく満足できるということは幸福感につながります。
幸福感は心身の健康維持に良い影響を与えてくれます。

 

writer
toramaru

介護の現場のお仕事をいくつか経て、現在はケアマネージャーとして働いています。
目下の悩みは高校生の息子のお弁当の中身です。手を変え品を変え、節約食材でも毎日変化があるように頑張っています。

訪問介護における「調理」の理解と自立支援を促す手段としての活用|訪問介護の基礎知識

2016.10.25

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