男性介護者に特有の悩みとは?男性介護者の現状

近年、高齢化が進む日本では、要介護認定を受ける高齢者も年々増加しています。そして同時に増えつつあるのが「男性介護者」。妻や親の介護に取り組む男性には、男性介護者特有の困難や課題を抱えていることが明らかになっています。

今回は、近年明らかになりつつある、男性介護者の実態と課題、支援策について解説します。

急増する男性介護者―その背景と現状

2017年度にまとめられた高齢社会白書によると、要介護者と同居する家族が主な介護者となっている割合は全体の6割に上り、そのうちの31.3%が男性であることが明らかになっています(*1)。

女性が多数を占める状況は依然変わりありませんが、1977年当時は、男性介護者の割合がわずか9%だったことを踏まえると、状況が大きく変化しつつあることがわかります(*2)。

  

この背景には、世帯構成の変化に伴い、主な介護の担い手が変化したことが要因となっていると考えられています。

2017年の国勢調査によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は2378.7万世帯で、内訳は「夫婦のみの世帯(773.1万世帯、32.5%)」、「単独世帯(627. 4万世帯、26.4%)」、「親と未婚の子のみの世帯(473. 4万世帯、19.9%)」と続きます。これらの世帯は年々増加傾向にあるのに対し、かつて主流だった「三世代世帯」(262.1万世帯、11.0%)については年々減少しつつあります(*3)。

 

その結果、これまで主に介護の担い手であった、子の配偶者(義理の娘)による介護が減少し、配偶者や、子による介護が増え、男性の介護者が増加したと考えられています。

実際に、2017年度の高齢者白書では、要介護者と主な介護者の続柄について、「配偶者」は26.2%、「子」は21.8%なのに対し、「子の配偶者」は11.2%と少なくとどまっています(*1)。

また、女性の社会進出が進み、家の外で働く女性が増えたことによって、介護の担い手が多様化したことも男性介護者が増加した理由の一つといわれています。

 

このような社会的要因を背景に、近年増えつつある「男性介護者」ですが、どのような方が家族の介護に取り組んでいるのでしょうか。

男性介護者の年齢については、最多が「60~69歳(27.7%)」で、次いで「70~79歳(22.6%)」となっています。また、女性介護者と比較して、「80歳以上」の介護者が多い(男性:18.7%、女性:10.2%)のも特徴です(*1)。

男性介護者から介護を受けている要介護者の年齢については、「80歳~90歳未満」が37.5%と最も多く、次いで「70歳~80歳未満」が30.4%で、平均は80.75歳と報告されています。介護者と要介護者の関係については、「妻(55.3%)」が最多で、「親(38.5%)」がそれに続きます(*2)。

「男性」介護者であるがゆえの困難とは

男性介護者には、女性の介護者とは異なる、男性であるがゆえの負担や困難があります。具体的にどのようなものなのでしょうか。

慣れない家事に対する負担

男性介護者の中には、炊事、洗濯、掃除、買い物などの家事の経験がなく、介護を機に取り組み始めるという方も多くいます。

実際に、慣れない家事に対して大きな負担を感じている介護者が多いことが明らかになっています。

 

特に食事については、介護者が特に困難を感じている介助活動の2位として「炊事(23.7%)」が挙げられており(*2)、多くの介護者にとって負担となっています。

献立を考えるだけでなく、糖尿病や嚥下困難など、持病や体調に配慮した食事の用意や、栄養管理など、きめ細かな作業が大きな負担となっているといえます。

 

また、介護保険制度の導入により、身体介護については公的な介護サービスを受けることができますが、家事をサポートする生活支援については、介護者が同居している場合、利用が認められないケースもあり、外部からの支援を受けづらいことも指摘されています。

入浴介助・排泄介助に対する精神的な抵抗感

排泄介助、入浴介助については、性別が異なるという理由から、介護者だけでなく要介護者が拒否するケースもみられ、とても多くの介護者が困難を感じています。

 

国診協の調査でも、介護者が特に困難を感じている介助活動の1位が「排泄介助(36.3%)」、3位が「入浴介助(21.2%)」に挙げられています。また、男性介護者が実際に行っている身体介助のうち、入浴・洗髪・身体の清拭については2割程度と、他の行為と比較して低く、介護事業者が主に担当するケースが多いことがわかっています(*2)。

 

性別に関連する悩みとして、下着や化粧品、洋服など女性特有のものの購入や支度が難しいという声も挙げられています。

社会的に孤立しやすい

男性介護者の方が、日頃感じている負担やストレス、悩みをひとりで抱え込みやすく、自分を責めてしまう傾向があるといわれています。

その結果、社会的な孤立につながり、要介護者への暴力や虐待などにつながってしまうケースもあると考えられています。

 

また、男性にとって社会とのつながりとなる「仕事」についても、介護との両立が難しく、離職せざるを得ない介護者が多く存在します。

 

国診協の調査では、介護前に「正社員・職員として勤務」していた男性介護者のうち、介護時にも同様の就労状況を維持していたのは 34.2%で、45.3%が無職になっている(定年退職による離職を含む)ことが明らかになっています。この場合、経済的な困難を抱えるだけでなく、社会とのつながりから隔離されてしまうという点でも注意が必要です。

男性介護者への支援策

このように多くの困難を抱える男性介護者ですが、残念ながら現時点では男性介護者に対する公的なサポート体制は整えられていません。

ただし、地方自治体によっては家族介護者をサポートする事業「家族介護支援策」の一環で、男性介護者の支援を行っている場合もあります。

地域の見守り活動、男性介護者向けの介護・料理教室、交流サロンなどが実施されているほか、おむつなどの介護用品の支給や福祉用具の貸し出しなど、経済面でのサポートを受けられることがあります。お住まいの自治体の情報を一度チェックしてみてください。

 

また、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(男性介護ネット)」や「荒川男性介護者の会『オヤジの会』(東京都荒川区)」、「男の介護教室(宮城県石巻市)」など、独自のサポート活動を行っている民間団体もあり、全国で活動が広まっているとのことです。

 

  • 男性介護者と支援者の全国ネットワーク(男性介護ネット)ホームページ

https://dansei-kaigo.jp/

  • 荒川男性介護者の会『オヤジの会』ホームページ(東京都荒川区)

http://www.arakawa-dansei-kaigo.jp/

  • 男の介護教室(宮城県石巻市)

https://www.otokonokaigokyoshitu.com/pages/2379280/page_201602191746

男性介護者が無理なく介護を続けるために-負担の解消策とは

様々な負担を抱えながら介護に取り組む男性介護者。負担を減らすためにはどのような解決策があるのでしょうか。

まず、介護者、要介護者の状態や希望に合わせた内容、回数の公的ケアをきちんと受けることが大切です

国診協が男性介護者に行ったヒアリング調査では、実施された支援の中で、特に効果的だと思われる取組・工夫として、「ショートステイやデイケアの利用」という回答が多く寄せられました。

介護者が自分の時間や休息の時間を持てるようになるほか、入浴などの負担が大きい身体介助についてサポートを受けられることにより、身体面、精神面の両面で負担軽減につながっています。

また、要介護者にとっても家族以外の外部の方と交流できるといったメリットがあります。施設ではなく住み慣れた自宅で介護受けたい場合には、訪問看護、訪問ヘルパーの利用も効果的です。

ケアの内容や頻度を見直すことで負担が軽減する場合もありますので、必要であれば地域包括支援センターやケアマネージャーに相談してみましょう。

また、公的なケアだけでなく、必要に応じてインフォーマルサービスを活用することも効果的です。

特に食事については、民間の配食サービスを利用するのも一つの手です。

地方自治体によっては、「生活支援型食事サービス」として、配食サービスの利用について公的な補助を行っている場合もありますので、活用を検討しましょう。

そして、介護者ひとりで負担を抱え込まないようにすることが大切です

地域の介護教室や交流会に参加することで、介護について学べるだけでなく、地域の支援者や同じ悩みを抱えた方とつながりを作ることができます。

周囲には、ケアマネージャー、医療・介護ケアチームなどの医療・介護の専門家、親族や家族、地域のサポーターや同じ境遇の家族介護者など、支えとなってくれる方がたくさんいます。

一人で抱え込まずに、周囲の力を借りながら、介護に取り組みましょう。

まとめ

近年増えつつある男性介護者。その存在が注目されるようになったのは最近で、支援や実態についての研究があまり進んでないのが実情です。しかし、高齢世帯の増加に伴い、男性介護者は今後ますます増加すると見込まれています。真面目に、一生懸命に介護に取り組むがゆえに孤立してしまう。そんな男性介護者も無理なく介護を続けられるよう、行政や地域、周囲のサポートが必要と考えられます。

参考文献など

(*1) 内閣府:平成29年度高齢社会白書

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/index.html

(*2) 社団法人全国国民健康保険診療施設協議会:平成22年度 男性介護者に対する支援のあり方に関する調査研究事業 報告書

https://www.kokushinkyo.or.jp/index/principalresearch/tabid/57/Default.aspx?itemid=97&dispmid=1547

(*3) 厚生労働省:平成29年度国民生活基礎調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/index.html

津止 正敏, 『男性の介護労働 ─男性介護者の介護実態と支援課題』

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2018/10/pdf/040-051.pdf

斎藤 真緒, 『男が介護するということ ─家族・ケア・ジェンダーのインターフェイス─』

http://www.ritsumei.ac.jp/ss/sansharonshu/assets/file/2009/45-1_04-02.pdf

斎藤 真緒, 『男性介護者の介護実態と支援の課題 ─男性介護ネット第1回会員調査から─』 

http://www.ritsumei.ac.jp/ss/sansharonshu/assets/file/2011/47-3_04-01.pdf

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