専門職の助言を聞かないご家族の事例|在宅医療の相談事例 case2

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訪問看護、訪問介護の導入までの道のりを振り返ります。我流な介護を行っているご家族。衰弱していくご本人。そんな中、必要なサービスの提案をしても拒否をする状況。どのような関わりでサービスを受け入れてくれるようになったのか・・・。

 

<筆者プロフィール>

保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

福祉系学校を卒業し、11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員へ転身。現在34歳。東京都渋谷区の居宅介護支援事業所で、管理者として在宅介護の相談・支援を行っている。

 

相談事例の基本情報

・70代男性。要介護4。自宅で一人暮らし。
・今まで大きな病気や入院なし。不活発による廃用症候群により、布団で寝ており、ほぼ寝たきり。
・屋内の移動は、ご家族がご本人を座位のまま引きずり移動。
・トイレにご長男が座らせるが、排泄しないことが多く、ベッド上おむつ内で排泄。
・食事も少量しか食べなれない。
・発話はほとんどないが、大きな声で二者択一であれば、答えることが可能。
・外に出ることはなく、診察は往診。
・ご本人宅の隣の自宅に住むご長男を呼び出すボタンがあり、ご本人が用事あるときはそれを押す。介護保険では、訪問看護を利用。

ご家族
ご本人宅の隣の自宅にご長男(50代、独身)在住。1時間離れた他市に長女在住。ご長男は就労なし。毎日食事介助で自宅へ訪問しています。家族独自の介護方法があり、自己流の介護を実践しています。

住環境
一戸建ての1階がご本人の居室。ご本人宅の隣の自宅に住むご長男を呼びときは、呼び出しボタンを押す。浴室、トイレが狭い。

<相談内容>
ある日、退職間近のケアマネージャーから、「退職するから担当してくれない?」と依頼の電話が入りました。
概要を聞くと、「こちらの意見を取り入れてくれないご家族で、ご家族独自の介護方法・介護理念にのっとって介護をしている。往診の先生の助言も聞き入れないところがあって、サービスの導入も拒否的・・・。ご本人も衰弱してきていて」と。とりあえず利用者宅へ訪問することとなりました。

<今回の相談のポイント>
・ご家族なりの介護方針があり、往診医、ケアマネージャーの助言を聞き入れないご家族
・きちんとした介護が受けられてなく、衰弱傾向
・必要と思われるサービスの導入も、ご家族が拒否

1. 衰弱しているご本人との出会い

退職するケアマネージャーと利用者宅へ訪問。畳の上に布団が敷かれており、そこにご本人が寝ています。話しかけるが、目を開くのに時間がかかり、やっと目を開け、話しをします。
話しの内容も複雑なことは答えられない状態で、ぼーっとしている印象のご本人。
痩せており、衰弱している様子が伺えました。
退職するケアマネージャーより、「何を食べているのかご家族へ聞いても、はっきりとした返答がなく、食事内容を把握できない。介護ベッドを勧めたが「部屋が狭くなる」とご家族が拒否の状況なんです・・」と。

2. 専門職の助言を聞かない、家族介護の現状

ご家族へご本人にしている介護を聞きました。

①リハビリをしなくてはいけないので、トイレには必ず行かせて便座に座らせています。しかし歩けないので、引きずり便器まで連れていき、自分で立つようにさせています。
②食事の時には、座椅子まで連れてきて座らせて、レトルトのお粥等、食べさせています。
③入浴は、ベランダで子供用プールにご長女、ご長男で介助し、入浴しています。
④リハビリの一環として、布団で、起き上がりをさせている。実際は全介助でご家族が行っています。
⑤ご本人が呼び出しボタンを押さなければ、1日3回訪問しています。

3. 家族介護の現状を知って、感じたこと

訪問した印象として、ご家族としては、お父様に精一杯の介護をしてあげたいという気持ちは伝わってきました。

しかし、ご家族の思いが先行してしまい、ご本人にとって安心・安楽な介護では無いように感じました。また、どのように介護をしたら良いのか分からないという思いもあるように見えました。

ご家族の我流の介護が、「本人のためになっている」という自信が、ご家族にあるようですので、そこは否定せずに尊重しながら、支援をする必要があると考えました。

4. ご家族の思いを尊重した支援

まず、必要な支援を整理しました。

①介護ベッドの導入(褥瘡予防)
②食事内容の把握
③ご本人に必要な介護を、ご家族が受け入れてくれるよう、ご家族の思いに寄り添いながら、支援をする
④在宅チームが連携を取り、ご家族の情報ではわからない、現状を把握する

支援当初は、ご自宅への訪問を増やし、信頼関係を築くことを主としました。こちらからの提案は少なくし、ご家族の思いを聞く関わりを行いました。

そのような関わりを2ヶ月続けた後、少しずつこちらの提案を行いました。
取り急ぎ、褥瘡が形成されてしまう心配がありましたので、ベッドの導入を優先しました。
まず褥瘡の説明だけ行い、ご家族が「予防するにはどうしたらよいのか?」と聞かれた時に、初めて介護ベッドの提案をしました。
すぐに借りるとはおっしゃりませんでしたが、その1週間後、「介護ベッドを借りたい」と連絡が来ました。

これをきっかけに、提案方法は、相手が聞いてきたときに行うことにすることとしました。また相手が聞きたいと思うような提案を、徐々に行うことを支援方針としました。

5. 受け入れるようになったご家族。しかし新たな問題が・・・

その後、こちらからの提案を聞き入れてくれるようになった頃、訪問看護より相談がありました。
それは、「おむつに便が出たからきてほしい」と看護師を度々呼ぶということでした。
また、すぐ訪問しないとご長男が怒り出してしまうこともあるとの報告でした。
「便が出た、来てほしい」と訪問依頼がご長男からあり、訪問看護が訪問した週は、元々予定していた訪問日は来なくてよいと断ることが多くなり、訪問看護の役割が果たせなくなってきました。

私から訪問介護を勧めましたが、「訪問看護にお願いするからいりません」と頑ななご長男。そこで私は、アプローチの仕方を変えることにしました。

6. 立ち止まり、ご家族の思いを想像してみる

私は、どのようにしたら、訪問介護を受け入れてくれるのか、ご家族がどのような考えなのか、想像してみました。「ご本人のために、ご家族なりに一生懸命やっている介護・・・。ご本人を喜ばせたい気持ちがあるはず!!」

そこで、訪問介護の提案を「ヘルパーは、車いすで外に出すことも手伝ってくれます。車いすで外へ出て、リハビリもかねて、車いすを自分で漕いでみることも良いのではないでしょうか?また外に出ることが気分転換になり、ご本人も喜びますよ」と投げかけてみました。

7. 結果、助言を聞いてくれるようになったのか

その結果、「おやじも外に出たいだろうから、お願いしようかな」とのご長男からの返事。それを機に、訪問介護を利用することとなりました。

ヘルパーも「介護でわからないことは聞いてくださいね」と声をかけてくれたこともあり、ヘルパーにご長男が頼ることが増え、介護方法を聞くようなこともあり、最終的には、おむつ交換を訪問介護で行うことになりました。
これにより、本来の訪問看護の定期訪問の役割も果たせるようになりました。

【まとめ】 今回の事例のポイント

私は、支援が思い描いたようにいかないことに、悩みました。ご家族の考えが理解できないと怒りに近い感情にもなりました。
その時の私は問題の中核にいて、客観性がなくなっていました。

この事例を通して、主観的になってしまうときこそ、冷静に客観的に考えないといけないということを痛感しました。(「熱い心、冷静な頭」が大事ですね・・・・)
私たち在宅チームのペース・考えで物事を進めようとしてしまったことが、そもそも間違いでした。

利用者本位という考えのもと、ご本人、ご家族の理解度やその時の気持ちに合わせて、情報提供のタイミングをしなければ、無意味な情報になってしまうということを感じ、まさに寄り添うとはこういうことかと学ばせて頂いたケースでした。

writer
もりぞう

福祉系学校を卒業し、11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員へ転身。
現在34歳。東京都渋谷区の居宅介護支援事業所の管理者・ケアマネージャーとして在宅介護の相談・支援を行っている。

保有資格:社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員

月50万円のプランに在宅介護を諦めていたご家族の相談|在宅医療の相談事例 case1

2016.05.13

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