在宅医療と認知症ケア|在宅医療の基礎知識

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認知症患者さんに対するケアの仕方について国内外問わず研究が進み、訪問看護の現場においても様々なアプローチが実践されるようになりました。
今回は、そんな認知症ケアに関わる方にとってこれだけは覚えておいてという基礎的な知識をご紹介したいと思います!

認知症ケアの基礎的な考え方ーパーソン・センタード・ケア|在宅医療の基礎知識

認知症ケアというと、少し前までは認知症という疾患を対象として、病院や施設で働く職員の業務を中心に考えてケアされることが(残念ながら)一般的でした。
いまだに大学病院などの大きな施設であっても、徘徊や暴力等がみられる入院患者さんには早々に抑制帯を使用することがみられます。

しかし、そのような処置により、本来尊重されるべき患者さんの人間性や尊厳を無視したケアとなってしまっていたのです。

そこで、もっと認知症の方の生き方や生活、その方自身がどう感じているかを大切にして、医療者が一方的にケアの仕方を選択するのではなく、患者さんを中心にしてケアが選択されることが重要である、という「パーソン・センタード・ケア」の考え方が提唱されました。

この考え方は、訪問看護に携わる者に限らず、いまや認知症介護の基礎研修でも指導されるほど、広く認知症に関わる全ての職種に共通する考え方となっています。

”認知症の”人ではなく、認知症の”人”として捉える

かつて認知症に対する捉え方は、認知症を”人格と自己を破壊する恐ろしい病気”と捉え、認知症になってしまったら積極的な治療は難しいと考える方が多かったようです。

いまでいうBPSD(行動・心理症状)は「問題行動」「危険行動」と捉えられ、患者さんの安全のために、と抑制をされたり離床センサーで監視され、不用意に薬で鎮静化を図られたり、とその方の尊厳よりも行動を抑制することが”ケア”だと言われていました。

認知症の中核症状とBPSD(行動・心理症状)を理解する|訪問看護の基礎知識

2016.07.28

看護は患者さんの利益を損なってはならないはずなのに…不適切なケアによって、より認知症の方を不安にさせ、行動を抑制することで寝たきりにさせてしまう。普通に考えたらおかしいですよね。
しかし、認知症についての知識が広く普及されるようになったのも、ほんの最近のこと。
そのため、専門職の中でも認知症や、認知症の方に対する偏見や誤解がまだ根強く残っているのが現状です。

いまや認知症の方は462万人(2012年時点)とも言われ、2025年には5人に1人が認知症を患うとも言われている時代。
最近では、患者さんに害をなすようなこれまでの文化を捨て、認知症をひとつの”障害”として捉えて認知症の方をひとりの人として深く理解することを重視するケアに移り変わってきています。

BPSDについても認知症患者さんが自身のニーズを伝えるコミュニケーションの試みの表れであるというふうに理解し、人として、その方に対する洞察と理解を深めることがケアする側には必要だと考えられるようになりました。

家族のケアも欠かせない認知症ケアの1つ!

一般的にはまだあまり知られていないようですが、「認知症高齢者の介護者の半数以上にうつ状態が認められる」といった報告があります。
それほどまでに、認知症の方を日常的に世話をする家族は精神的にも身体的にも負担がかかっているのだとわかりますね。

「認知症高齢者を介護する」ということには特有の難しさがあります。
理解力や判断力の低下のため、思わぬ事故を起こさないかと常に気を配ったり、言ったことがなかなか理解できず何度も同じことを繰り返し言わなければならなかったり…。
それも、記憶障害のために人によっては日に何度も同じことを繰り返すのですから、たとえ大切な家族であっても毎日のこととなると相当なストレスになります。

その上、認知症という病気は状態によっては(特に初期は)なかなか周囲の人には気付かれないものでもあります。なかには「認知症であるということを周囲に知られたくない」という家族もおられ、その介護の大変さや苦労を周囲から理解してもらいにくいという特徴があるのです。

時には患者さん本人が「家族がご飯を食べさせてくれない」「家族が私のお金を取って行ってしまう」などと周りに話し、家族が思わぬ誤解を周囲に受けることもあります。

こうした状況もあり、家族だけで介護して負担を抱え込んでしまっているケースや、家族に対する周囲のサポート不足、周囲からのねぎらいの言葉や本人からの感謝の言葉が受けられないこともいっそう介護者を追い詰めてしまいます…。

そうして介護者が精神的に不安定になると、認知症患者さんの方への不適切なケア・言葉かけに繋がり、またそれがかえって患者さんの心理面を不安定にしBPSDを悪化させてしまうという悪循環へと陥る危険があるのです。

したがって、認知症の方のケアでは、その支えとなる家族の健康と穏やかな生活を守ることも重要なケアとなります。

特に在宅においては、認知症の方にとって家族が何よりの頼みの綱です。
ともに安心して暮らし続けられるよう、介護・医療・福祉のさまざまなサービスの活用はもちろん、家族だけでなく近隣住民・地域をも巻き込んで、一緒に見守り、手伝ってくれる仲間をつくりましょう。

認知症患者さんを持つご家族様への対応について知っておきたいこと|在宅介護の基礎知識

2016.09.29

まとめ

日本での認知症の方を取り巻く環境はいまだ昔の文化が根強く残り、なかなか安心して暮らし続ける社会であるとは言えません…。しかし、イギリスなど諸外国では「dementia town(認知症の街)」などと呼ばれる認知症の方に優しいまちづくりが進められるなど、認知症患者さんが安心して社会で暮らし続けられるよう社会全体で取り組みがされています。

日本もそうした国々にならい、専門職・一般人と関係なく誰もが認知症の方へ適切な対応ができるよう、認知症と患者さん・家族への理解を深めて頂ければと思います♪

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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