認知症の現状・原因・種類・症状-知っておきたい基礎知識

最近、人の名前が思い出せない、大切なものをどこに片づけたか忘れたそんなときは「もしかして認知症?」と思ってしまうこともあるかもしれません。そもそも認知症とはどのような状態のことを指すのでしょうか。

いまや65歳以上の高齢者の71人が罹患しているとの統計もあり、身近な存在になりつつある認知症。最近では、漫画家の蛭子能収さんが、軽度のレビー小体型認知症であることを公表したことでも注目が集まっています。

今回は認知症の現状から原因となる疾患、主な症状など、基本的なポイントを解説します。

認知症とは高齢者の7人に1人は認知症

一旦正常に発達した知的機能が、脳の疾患など何らかの原因によって持続的に低下していき、6か月以上、日常生活に支障をきたしている状態を指します。
特有の症状が現れた状態を指す言葉であり、実は病気の名前ではありません。

厚生労働省の高齢社会白書(2016年度版)によると、認知症の患者数は年々増加しており、65歳以上の高齢者に限った場合、2012年の統計では462万人が罹患しており、有病率は15.0%と高齢者の7人に1人が該当することが明らかになりました。
また、患者数は今後も増加し続けると予想されており、2025年には675万人に及ぶ見込みです(*1)。

*1)内閣府:平成28年版高齢社会白書(概要版)23. 高齢者の健康・福祉https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_2_3.html

「加齢によるもの忘れ」との違い

高齢者の「もの忘れ」の原因は、加齢によるもの認知症によるものとの二つに分かれ、症状に大きな違いがみられます。

加齢によるもの忘れの場合、忘れるのは体験の一部で、本人にもの忘れの自覚があります。
進行することはほとんどなく、日常生活に影響がでることもありません。
一方、認知症の場合、体験したことそのものを忘れてしまうため、そもそも忘れたことに気づくことができません。

例を挙げると、前者は「財布をしまった場所を思い出せない」といった具合ですが、後者は「財布をしまったこと」そのものを忘れてしまいます。
そのため、本人は忘れたことに対して自覚がない状態になく、「財布を家族に盗まれた」という思い込みが生じることにつながります。

加齢によるもの忘れ・認知症の違い

加齢によるもの忘れ

認知症のもの忘れ

もの忘れの範囲

体験の一部

体験した全部

進行

進行・悪化しない

進行していく

日常生活

支障なし

支障あり

自覚

もの忘れの自覚あり

もの忘れの自覚なし

時間や場所の認識

認識がある

認識がない

認知症の原因となる代表的な疾患三大認知症

認知症の原因となる疾患は多くありますが、現在、日本で多く見られるのは「三大認知症」と呼ばれる次の3種となっています。

(1)アルツハイマー型認知症

最も多いのがアルツハイマー型認知症で、過去の研究では日本の認知症全体の約67%が該当することが明らかになっています(*2)。
脳にアミロイドβタンパクと、タウというたんぱく質が溜まり、記憶を司る海馬から脳全体が委縮していきます。

初期でみられるのはもの忘れなどの記憶障害ですが、症状が進むとさまざまな脳の機能が低下し、家事ができなくなるなど、日常生活に支障をきたすほか、空間認識能力の低下により、自宅の場所がわからなくなるといった症状がみられるようになります。妄想や徘徊など、介護する上で障害となるような周辺症状(BPSD)も現れるようになります。
さらに症状が進行すると家族など周囲の人の認識ができなくなり、末期の段階では自発性を失い、寝たきり状態となります。

残念ながら、根本的な治療法は見つかっていませんが、初期段階で適切な投薬治療を行うことで、症状の進行を遅らせることができるため、早期発見がカギとなります。

(2)血管性認知症

脳梗塞、脳出血などによって引き起こされる認知症で、アルツハイマー型認知症に次いで多く、全体の19.5%を占めています(*2)。
脳の血管が詰まる(脳梗塞)、破れる(脳出血)ことなどにより、障害を受けた部分の機能が正常に働かなくなることで生じます。

アルツハイマー型認知症は、脳全体が委縮し、徐々に症状が進行していくのに対し、血管性認知症は脳血管障害が起こるたびに、階段状に症状が進行していきます。
症状は、血流障害が発生した部分によって異なり、認知症だけでなく、手足の麻痺や嚥下困難など、さまざまな症状が現れることがあります。
また、障害を受けた部分次第では、記憶障害が現れても判断力や理解力に問題がないといったばらつきが見られることもあり、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。

(3)レビー小体型認知症

αシヌクレインというたんぱく質が脳に溜まり、レビー小体を作り出すことで、神経細胞が壊死してしまう認知症で、日本で発生する認知症の4.7%を占めています(*2)。
レビー小体が原因になる疾患というと、他にパーキンソン病が挙げられ、どちらも似たような運動障害が現れます。

症状としては、ほかの認知症と同じような記憶障害のほか、実際には見えないものや人がはっきりと見える幻視や、手が震える、転びやすいなどのパーキンソン症状、睡眠時の異常行動が現れることが特徴です。

これらの症状以外に、自律神経のバランスが崩れることで、便秘や立ちくらみ、発汗などの自律神経障害がみられることがあります。

*2)一般社団法人日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2017

認知症の症状-中核症状とBPSD(行動・心理症状)

認知症の症状は、大きく分けて次の2つに分けられます。

(1)中核症状

(2)BPSD(行動・心理症状)

 

(1)中核症状

大脳が委縮することで脳の機能が低下し、現れる症状を指します。
認知症の主症状であり、すべての患者にみられます。

代表的な中核症状は以下の通りです。

① 記憶障害

直前の出来事を忘れる、新しいことを覚えられない。
⇒ 同じことを何度も尋ねる、約束事や予定を忘れる、同じものを買い込む、など。

② 見当識障害

時間・場所・人物がわからなくなる。
⇒ 夜に出かける(起きた時間を朝だと思い込む)、季節に合わない服を着るようになる、外出先で迷う、自宅のトイレの場所がわからなくなる、家族が誰かわからなくなる、など。

③ 失語

ものの名前が出にくくなる
⇒「あれ」「あの」など代名詞が増え、複雑な会話が難しい、など。

④ 失行

運動機能に異常はないのにもかかわらず、以前できていた動作ができなくなる
⇒ 着衣失行(上着の袖に足を通してしまうなど、正しく衣服が着られない)、構成失行(模写やパズルなど、物をうまく形作ることができない)など。

⑤ 失認

視力、聴力など感覚機能に異常がないのにもかかわらず、対象を正しく認知できず、状況判断ができなくなる
⇒ 家族の顔がわからない、鏡に映る自分の顔を泥棒などと間違える、など。

⑥ 遂行機能障害

物ごとを順序だてて行うことができなくなる
⇒ 仕事、料理など、計画を立てて実行する作業が難しくなる。

「もの忘れ」以外の認知症の症状というと、「徘徊」、さらには「暴言・暴力」などのイメージが強いかもしれませんが、これらの症状は後述のBPSD(行動心理症状)で、認知症本来の症状(中核症状)とは異なるものになります。

(2)BPSD(行動・心理症状)

中核症状に、身体的要因・心理的要因・環境要因などの外的要因が影響して生じる症状をいいます。
かつては、周辺症状や随伴症状と呼ばれていました。
患者の性格や生活環境、経験、人間関係などが反映されて現れるため、人によってさまざまな症状がみられます。

BPSDは認知症そのものによる症状ではないため、必ずしも全ての患者に生じるわけではありません。
周囲の適切な対応によっては、症状が現れないケースもあります。

具体的に、次のような行動面、心理面の症状が挙げられます。

<行動症状>

① 徘徊

② 攻撃性(暴言・暴力)

③ 不穏・焦燥

④ 多動

⑤ 性的脱抑制・不適切な行為(不潔行為など) など

<心理症状>

① 妄想・幻覚

② 抑うつ

③ 不眠

④ 不安・誤認

⑤ 無気力・情緒不安定 など

実際に、自宅で生活されている認知症の方では、抑うつや不眠、情緒不安定などの心理症状がよく見られます。

BPSDは、認知症の進行具合によって現れやすい症状が変わっていくため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

例えば、アルツハイマー型認知症の場合、進行する過程を初期、中期、末期の3段階でみてみると、初期には抑うつや不安感が現れやすく、中期には幻覚、妄想、徘徊などが多く見られるようになります。
末期になると、食べ物以外のものを食べてしまう異食や、一切話さなくなる無言、うなり声をあげるなどの行動が現れるようになります。

また、BPSDは問題行動ともとらえられており、強く症状が現れた場合には、介護者の負担が非常に大きくなってしまいます。
介護者はどのように接することが必要なのでしょうか。

BPSDは、環境の変化やストレス、不安感などが原因となることがわかっています。
家庭内でのトラブルや身内・友人の不幸、居住環境・生活リズムの変化など、私たちにとってちょっとしたことであっても、認知症の方によっては大きなストレスとなることがあります。
また、認知症のせいで、これまでできていたことが次第にできなくなり、一番不安に感じているのは患者本人です。
患者の視点で考え、どのような対処が必要か、寄り添って考えることが大切です。

まとめ

今回は認知症の基本的な知識について解説しました。介護の現場での知識としてはもちろん、大切な家族や自分自身が認知症になる日がくるかもしれないそんな日に備えて、身に付けられたらいいな、と考える情報をまとめました。

いざ認知症の患者さんの対応をするとなると不安に感じることもあるかもしれませんが、それは患者さんも同じ。患者さんの視点で物事を考え、安心してケアを受けてもらえるような備えをしましょう!

<参考文献など>

内閣府:平成28年版高齢社会白書(概要版)23. 高齢者の健康・福祉
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_2_3.html

一般社団法人日本神経学会:認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

公益財団法人長寿科学振興財団:平成30年度業績集「認知症の予防とケア」https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/index.html

公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット 認知症
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/index.html

公益社団法人東京都医師会:かかりつけ医機能ハンドブック2009
https://www.tokyo.med.or.jp/medical_welfare/handbook2009

 

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