【訪問看護事例】認知症だって毎日Happy!人生を楽しみつくす90歳女性患者さん

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認知症になったら嫌だわ、と年齢性別を問わず認知症予防の情報に興味をもたれる昨今・・・。
確かに、認知症による様々な症状は生活のしづらさを感じさせますが、それ以上にみなさんが特に心配されているのは、認知症になったらまわりに迷惑をかけてしまうんじゃないか・・・?ということ。

訪問看護に取り組む中で、私がお出会いしたこの方はまさにそんな心配を吹き飛ばしてくれるような方でした。

もしかしたら、あなたのもつ認知症の方のイメージが変わるかも?そんなひとつの事例をご紹介します。

訪問看護事例の基本情報

患者紹介
年齢:90歳
性別:女性
症状:記憶障害、見当識障害(日時)、高血圧
家族構成:ひとり暮らし
近所に住む長男夫妻が毎日交代で様子を見に来てくれている。

介護サービス等の利用状況
・デイサービス(週3回)
・訪問看護(週1回・・・体調、服薬管理)

多少の無理も”やんちゃ”のうち!丈夫さが自慢の90歳

太田さん(仮名)の訪問看護を担当することになった当初、表向きはご高齢でお一人ぐらしのため「体調管理」を、という名目でしたが、本当の理由は認知症の悪化を心配されたご家族からの相談でした。
過去には病気で寝たきりだった太田さんのご主人へ訪問看護担当させていただいていたこともあり、顔を知った者同士ということで訪問開始はスムーズでした。

太田さん自身に特に大きな病気はなく、女学校時代から毎日走って体を鍛えていた、ということで実際に体調のほうには目立って問題はありませんでした。
しかし、むしろ家族の方にとってはその”元気すぎる”とも言えるほどの元気さが心配な様子…。

太田さんの自宅の裏には広い畑があり、太田さんはそこへ行って畑仕事をするのが毎日の楽しみであり日課でした。
とはいえ、太田さんは一人暮らし。ましてや、痛みはないとはいえ年相応の円背と筋力低下はあり、いつも歩く時には手押し車が手放せません。
それでも「寝たきりになったら嫌だから!足腰には自身があるから大丈夫!畑に行けなくなったらもう息子たちの世話にならないといけない。」と口癖のように言われます。

”これぞ大正生まれ”というのか、夫と家族、そして老舗の看板を長年支え続けてきた気丈な女将さんだけに、その意志は硬く、家族がどんなに危ないからやめるよう言ってもその日課だけは1日も欠かしたことはありませんでした。(家族には「畑には行ってない」とバレバレの嘘をついておられました笑)

行動の奥にはその人なりの理由がある

そんな太田さんの看護計画には、まずはご自身ではなかなか不調を自覚したり予防したりができない点を考慮し、念入りな体調チェックと環境調整(特に夏場の脱水や熱中症予防や冬場の冷え予防、内服確認)を組みました。
そして、それと同じくらい重要なのは「安全の確保」

一人で出歩いて転倒したり事故に遭ってしまっていたら・・・?!というご家族の心配も当然理解できますし、実際に一人で足場の不安定な畑に行かれることは危険だと思います。
そこで、私も太田さんに畑に一人では行かないように、と注意していました。
しかし、注意を促したその場では快く返事をする太田さんですが、それでも畑に行くことは止みません。

お嫁さんのサポートもあって体調はいつもバッチリ!の太田さん。問題は畑に一人で行ってしまうことくらい・・・。
畑以上遠くへは決していかないのですが、なぜ太田さんはそうまでして畑に行くのか?認知症というだけでは何の理由にもならず・・・試しにしばらく、ただひたすら太田さんのお話を聴いてみることしました。
すると、太田さんなりの理由と思いが見えてきました。

畑に行く理由は「彼女の負けん気」と「意地」だった

太田さんはいつも訪問するたびに決まって同じ話をされます。
女学校時代の話、嫁いできてからご主人を亡くすまでの家族の話、そしてデイサービスで再会した旧友の話です。

内容は、若い頃はなんでも自由にできて楽しかったという思い出と、嫁いでから家族のために様々な我慢や苦労をした思い出。

そして、今またデイサービスで旧友と再会し、一人になったらやりたいと思っていたことができる、自由な時間がたくさんある毎日が楽しい!!ということを満面の笑みをたたえて話す太田さん。

そんな太田さんの生い立ち、そしてその人生観を聴いているうちに、だんだんと太田さんも自分なりに一人で外にでることの危険を理解されていること、家族の言いつけは守れないけれど、それもただ理解していなかったり注意を忘れるのではなく、太田さんが持つ負けん気の強さや意地があっての行動なのだとわかってきました。

患者さんの本心を理解できれば、援助の内容は変わる!

太田さんはこれまで家族や家のため、自分よりも誰かのためを優先して生きてこられました。
ご主人を看取り、子供たちも立派に独立させ自分の役割を終えた今からが、また自分のために生きられる大切な時間として、やりたいことを全部やろう!と思っておられたようです。

いくら心配してとはいえ、周りの者がそれを止めさせようとしたところで、太田さんからすると余計な御世話なのでしょう。
結局、太田さんの畑行きの日課を変えるようなことはせず、もしもの時の備えとして「畑に行く時は帽子をかぶる」「帰ったら水分補給を!」など最低限の覚書を増やしたり、一緒に畑へいくことで、できる限り安全を守りつつ、太田さんの楽しみを奪わないようにと援助の方向を変えていきました。

もちろん、残念ながら、ご家族の心配は変わりませんが、きっとそんな太田さんを見ているうちに、少しずつでも肩の力を抜いて、「もう、しょうがないなぁ」のと笑って許していただけるようになれば・・・と思い、ともに見守っています。

患者さんからも多くの力をもらうことがあります

たとえ認知症を患っていたとしても、1日1日を幸せに過ごしているこんなおばあちゃん。ちょっと羨ましいと思いませんか?
周りに心配はかけたとしても、長年積み重ねて来られた人生観やその生き方からは、周りの人をHappyな気持ちにさせ、大きな力をもらうことがあります。
認知症だからといって、それが”迷惑”と思われるか、”心配”だけで終えられるかは、周りの環境や理解ひとつで大きく変わるのかもしれません。

認知症予防は大切ですが、その前に、まずは良い人生を送って、周りに素敵な人間関係(サポート体制)を作っておきましょう!

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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