学生時代の患者さんの「家に帰りたい」という思いに接し、また、救命救急センターを退院する患者さんや呼吸器をもって退院する患者さんを目の当たりにしたことで、利用者の思いを大切に支援できるのが訪問看護師のやりがいだと気づき、この世界に飛び込みました。
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学生時代の受け持ち患者さん「家に帰りたい」
私が、学生時代に受けもった患者さんは、肝臓がんで先が長くないと言われていました。
その時、患者さんは奥様に向かって「畳の上で死にたい。家に帰りたい」と言われました。奥様は、「ごめんね。私ひとりじゃ連れて帰ってあげれないのよ」と、とても申し訳なさそうに話されていました。
『なぜ、自宅に帰ることができないのだろう。本人の願いを叶えることができないのだろう。』今となれば、この一番目の疑問が私の訪問看護師としての基本であり、大切にしていることです。
退院後の患者さんは、どんな生活を送っているのか?
就職してすぐの私は、高次救命救急センターで働きました。30床あるバックベッドには、呼吸器が10台以上作動しているとてもハードな病棟でした。
救急隊が搬送する患者さんはとっても重症度が高く、多くの家族の驚きと悲しみに出会ってきました。
救命救急センターは、患者さんを救命できたとしても、後遺症をかかえて退院していきます。退院後、その人を含め家族はどんな生活になっているのだろう?これが私の2番目の疑問でした。
訪問看護師は家族や本人の不安を一つ一つ解決する存在
急性期病棟で働いているとき、訪問看護師と一緒に退院指導を行いました。その患者さんは、酸素濃縮器と呼吸器を継続する必要がありました。
訪問看護師は病棟にきて、患者さん・その家族と顔合わせを行い、消毒や消耗品など細かいことの打ち合わせを行ったあと、試験外泊を経て退院されました。
その時、私は家族や本人が病状や機器の管理に対して多くの不安を抱いており、訪問看護師はそれを一つ一つ解決していくということを改めて知りました。
訪問看護師としての支援は「思い」を大切に
訪問看護師として働くようになると、様々な新しい光景を見ることができました。
自宅に訪問すると、そこで生活している患者さんと家族は、外出をし、好きなものを食べ、お孫さんに囲まれ、とてもいい顔をされていました。
また、他の利用者さんは娘の結婚式のために言葉を準備し、くしゃくしゃの笑顔と涙で父親としての役割を果たしていました。
訪問看護は利用者の思いを大切にし、看護の知識を生かした支援をすること、そして内服薬などの医療的ケアだけではなく、利用者さんの生活を整えることを大切に考え取り組んでいます。
訪問看護は利用者が望んでいる生活の支援
訪問看護は、利用者が望んでいる生活を送るために、生活を整え、医療を提供する必要があります。今の日本は、自宅で最期を迎えたいと思いながら、8割の人が病院で死を迎えています。
利用者の笑顔をみることや家族と一緒に「おつかれさまでした」と利用者さんを見送るということは、自己満足ではありますが、看護師として充実しています。
そして、私は、それが訪問看護師だと思っています。

救命救急センターで働いたあと、急性期病棟、訪問看護ステーションで働いてきました。
ひまわりのように1本の茎で立ち、大きな花を咲かせるような、元気な看護師を目指しています。