【訪問看護事例】息子の存在が一番のくすり!認知症をかかえる70歳代女性利用者さん

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最近では認知症に対する薬も広く知られるようになり、認知症のタイプなどによっても種々の薬剤を使いわけられるようになってきました。

しかし、そういった薬で認知症自体の進行を食い止めることができたとしても、認知症からくる症状自体には効果が乏しく、人によっては「副作用が出ただけで、何の効果も得られなかった」・・・という方もおられます。

今回は、そうしたよくある認知症の方の、「これが一番効いた!」という特効薬のお話をご紹介します。

訪問看護事例の基本情報

患者紹介
● 年齢:78歳
● 性別:女性
● 症状:記憶障害、易疲労感、高血圧(弁膜症)
● 家族構成:夫との2人暮らし
長男が車で2時間ほどのところ(他県)に居住

介護サービス等の利用状況
● 配食サービス(毎日/昼と夕食)
● 訪問介護(週2回・・・掃除、洗濯、安否確認)
● 訪問看護(週2回・・・体調、服薬管理、入浴介助)

患者さんの悩み〜大好きなお風呂に入りたい!でもしんどい…

佐竹さん(仮名)への訪問を依頼されたのは、とある年の夏。

それまでアルツハイマー型認知症を患うご主人を介護しながらも、なんとか自分の身の回りのことはされていた佐竹さんでしたが、心疾患もあったためか体力の低下が徐々にすすみ、ヘルパーの方に洗髪だけは介助してもらうように。

しかし、それも次第に「しんどい・・・」と断られることが増え、みるみる間にほとんど寝たきりの状態となってしまったのだそうです。

こうして受けた訪問看護への依頼内容は、体調の観察と入浴・清潔のケア。
ご本人としても、「大好きなお風呂にはなんとか入りたい!」と初対面のカンファレンスの時点ではっきり仰っていたため、まずは佐竹さんがなぜお風呂に入れないほど弱ってしまったかの原因究明とその改善・体調を整えるところからスタートし、できるだけ早くお風呂へいけるように、という目標で動き出しました。

患者さんの訴え~私、どうなってしまったの?不安でたまらない

カンファレンスでの初対面後、3日後に初回訪問の日がやってきました。

入浴介助も想定して、念のためカンファレンスに参加した看護師2人で訪問しましたが、(佐竹さんは私たちのことを覚えているか・・・?)
ドキドキしながら、また初めましての挨拶をする心づもりをしつつご本人のもとへ。
しかし、残念ながら佐竹さんは覚えてはいませんでした。

が、改めて自己紹介と訪問目的をお話すると
「いやー、いいわー!!!私あなた大好き♡」となぜか熱烈歓迎のムードに。

先輩看護師の笑顔や声のトーン、話しかたなどが佐竹さんを安心させたのか、それ以降も訪問する際は名前はなかなか出てきませんでしたが、顔認証だけでホッとした様子でスムーズに色々お話をして下さるようになりました。

しかし、いつも決まってTさんが話すのは「不安」の塊について。
お話を聞いていくと、徐々に表情が和らいで笑顔になっていくのですが、必ずといっていいほど訪問の始まりは「不安」の話から。

その内容の1つは自分の体調のこと。便が出ないこと、動くとドキドキしてしんどいこと。
そしてなぜそうなるのか分からない、「自分はどうなってしまったの?」としきりに尋ねます。

もう1つは息子さんのこと。
受診のタイミングに合わせて、佐竹さんたちの様子を見に遠方から週末に帰省する息子さんですが、聞くと「下痢するからこの薬(下剤)は飲まなくていい。」「もっとしっかりしてくれないと、もう帰ってこないよ!」と佐竹さんに言われるのだとか。
訪問を重ね、息子さんともお話してみると、息子さんも佐竹さんのことを考えてのこととわかりましたが、佐竹さんにはかえって『息子に捨てられる・・・』と余計な不安が増してしまう様子・・・。

こんな風に、不安がたくさんありすぎて、なかなか本来の目標(入浴)に辿りつけない佐竹さん。
というわけで、入浴よりもまずはこの不安をなんとか払拭しよう!というのが次なる目標になりました。

ケアすることでできる不安の解消

佐竹さんの”私、どうなってしまったの?”という不安は、意外とすんなり解消の糸口が見出せました。
「便が出ない」という不安は、以前飲んでいた下剤では下痢をするから、と中止されていたことと、食事の量自体の少なさ、水分量の少なさが要因のようで、それらを整えると自然に解消されました。
食欲も出たことで疲れやすさも少しずつ改善し、気づけばお顔もふっくら。日中ほぼ寝たきりだったのが、縁側で座っている日もでてきました。
「動くとドキドキする」というのも、しっかり降圧薬の内服ができるようにと内服カレンダーで管理をすることで徐々に改善されました。

しかし、一方の「息子さんに捨てられる」という不安だけは私たちではなかなか解消できず・・・。
時には涙を浮かべて訴える佐竹さんに、ただただお話を聴き、「本気で息子さんが佐竹さんを見捨てることなんて絶対にない、息子さんはこう言っていたよ。」と、佐竹さんが悲観的に捉えていたことを、私たちが知る限りの事実から励ますことしかできませんでした。

薬よりも看護よりも家族の支え! 特効薬=息子さん!

そうして訪問するうちに、体調はすっかり落ち着き、入浴もすんなりできるようになっていった佐竹さん。

ただ、突然「今もう朝なのに、なんで真っ暗なの?!みんなどこいったの?!」「今日はいつ来てくれるの?!本当に来てくれるの?!」など、早いときには朝の4時からステーションへ電話が鳴ることもしばしば・・・。
そしてそれは、決まって息子さんと言い争いをし、息子さんが自宅へ戻っていかれた後のようでした。

おぼつかない足取りで、外に出て行こうとする佐竹さんを心配して、そんな時には早めに訪問したり隣家の方に様子を見にいってもらうようにしていましたが、私たちにできることはわずか・・・ただそばにいて、落ち着くまでゆっくり話しを聴くことだけ。

息子さんが帰ってきた時や、息子さんから電話や手紙(メモ)をもらった時には上機嫌で、認知症があることも忘れるほどお話上手な佐竹さん。
きっとそれが本来の佐竹さんの姿であり、息子さんがそれを取り戻す唯一の薬のようでした。

まとめ

佐竹さんのように高齢者のみの世帯で、たよれる家族が遠方にいらっしゃる方も、最近は少なくありません。当然、常に家族がそばにいることは難しく、「介護にも医療にも長けた専門職に任せるほうがいいケアをしてくれる」といって、医療・介護サービスを早期に導入して下さるご家族の方もいらっしゃいます。

・・・ただ(それはもちろん光栄なことではありますが)、実際のところ、佐竹さんのように、やはり家族にしかできない”ケア”、家族にしか与えられない安心感があり、それはとりわけ認知症の方のように「安心」が薬になるようなご病気の方には最も大切なことなのではないかと思います。

まわりにいらっしゃる認知症の方はいかがでしょうか?
認知症ではなく、孤独という”不安”に病まされていませんか?

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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