認知症患者さんの服薬管理の注意点|訪問看護の基礎知識

在宅で生活されている認知症患者さんにとって、大きな問題となるのが「服薬管理」です。「あれ、いつ飲んだっけな?もう飲んだっけ?」「どの薬を飲んだらいいかわからん。」など、支援がないと大事な薬剤の重複・飲み忘れ・飲み間違いが日常茶飯事になっている方は少なくありません。

そのため、ケアマネージャーさんが立てられるケアプランを見ると、対象の認知症患者さんの全ての方(といっても過言ではないくらい!)において、訪問看護が関わるべき優先課題として挙げられています。

今回はそんな、在宅で暮らす認知症患者さんに多い困りごと服薬管理について、その服薬管理と支援方法の実際についてご紹介します!

認知症患者さんの”服薬管理”の特徴と重要性|訪問看護の基礎知識

在宅で暮らす認知症患者さんたちは、単純に認知症の薬だけでなく、我々が思っている以上に実に様々な薬を使っておられます。
というのも、実際の認知症患者さんたちの多くは、高齢になるにつれ様々な疾患に罹患され、複数の診療科から複数種の薬剤を処方されていることが多いからです。

もちろん薬剤師や医師によって作用の重複する薬剤がないよう整理され、できる限り薬剤を減らすようにと最低限の処方量にされるのですが、患者さんによっては
「耳鼻科は◯◯先生、心臓は◯◯先生、胃腸は◯◯先生…」
と、複数の病院にかかっている高齢者の方も多く、いつどこに受診してなんの薬を飲んでいるか医療者が把握できないばかりか、
「正しく(処方された通りに)飲んでるのに、過剰投与になっている(本当に必要な量以上に飲んでいる)」
というケースも少なくありません。

認知症の方の服薬管理が重要となる理由は、ひとつは薬剤を正しく服用し、疾患や症状に対して狙った通りの効果を出すため。そしてもう一つは『リスク(副作用)の回避』です。

人は加齢に伴い、筋肉組織の低下、排泄・代謝機能の変化などにより、年齢を重ねるにしたがって薬物動態が変化するため、たとえ健康であっても『薬が効き過ぎる』『副作用(薬物有害反応)が出やすい』というリスクが増してしまいます。

そのうえ、認知症により服薬アドヒアランス(患者自らの意思で、処方された薬を指示通り正しく飲む)が低下しているとなると、正しい治療効果が得られず体調そのものが維持できないばかりか、過剰投与によってせん妄や転倒(特に向精神薬や睡眠薬を服用している患者さんに多い)などの重大な副作用を招く恐れがあります。

そのため、認知症患者さんにとっては「必要な薬剤」を「必要なときに」「必要な量」を正しく投与できるよう、より厳重な服薬管理が重要となるのです。

認知症患者さんの服薬 -アセスメントのポイント-

実際に認知症患者さんの服薬管理を行う上で重要な視点としては…

① その薬、本当に必要?
服薬の目的や服薬量、服薬回数を把握し、その効果と副作用を考慮した上で、その方が生活する上でどうしても必要なのか、もし服用できなかったらどんな影響があるかを考えてみましょう。
またそのためには、現在の患者さんの身体状況のアセスメントが必要であることは言うまでもありませんね。

② 服用中の薬剤は”すべて”確認!
患者さんに「もらっている薬をぜんぶ見せてください」と言うと、最近病院から処方されたものから、現在は飲んでいない10年以上前の薬が出てくることがあります。
逆に、頓服薬、目薬や膏薬、貼付剤やサプリメント、市販薬(胃腸薬や便秘薬が多い)は申告漏れしやすい薬です。

また、在宅で多いのが本人・家族の自己判断での服薬の中断です。
思わぬ副作用や体の異変が生じている可能性もあるので、なぜ服用しなくなったのか(「これを飲むと調子が悪くなる」「もう良くなったからやめた」など…)、患者さん・家族の考えや意見もしっかり聴きながら、必ず現在の患者さんが何の薬をいつ、どれだけ使用しているのかを確認しておきましょう。
お薬手帳を見るだけでは、実際の服薬状況はつかめません!

③ 患者さん・家族の管理能力はいかほど?
”認知症”といっても、メモ書きやアラームで忘れず内服できる方もいれば、「薬」を飲まないといけないこと自体覚えていない方など、その管理能力は様々です。

・薬を飲まないといけないことは解っている?
・どの薬をどれだけ飲む?
・薬を自分で取り出せる?(PTP包装から取り出せる?一包化や補助具が必要?)
・いつ飲む?(指定の服用時間と、今日の日付や時間は理解できている?)
・服用方法はわかる?
・飲み込みにくくない?(舌の動きや唾液分泌の低下は?嚥下・口腔機能に問題はない?)
・ちゃんと飲んだか覚えていられる?(服薬確認は不要?)

…など、その方が薬を正しく服用するにあたって、どこが苦手でどんな助けを必要とするかを把握しましょう。

認知症患者さんの服薬管理 -服薬支援のポイント-

認知症患者さんの服薬状況についてアセスメントを進めていくと、患者さんが何に困って服薬管理がうまくいかないか、その原因が見えてきます。
実際の患者さんに対する時は、その原因別にそれぞれ必要な支援を検討していきましょう。

① 服薬アドヒアランスの低下
■ 服薬する日時と、服用したかどうかがわかるような工夫
・ 服薬チェック表
・ 服薬管理ケース
・ 服薬カレンダー
・ 薬袋に服用日時を明記する など

■ 視覚状況に合わせて見やすい(目に入りやすい)工夫
・ 薬袋の文字を大きくする
・ 見えやすい配色の工夫(紅白・白黒・黒黄…)
・ 視界に入りやすい位置に配置する など

■ 扱いやすい包装(手指の運動機能に合わせた)や補助具の工夫
・ PTP包装から切り分けない(1回量ずつ小分けにしたりシートを切り分けると、かえって指先でつかみづらい場合がある。※ただしシートの誤嚥に注意)
・ 薬を一包化する(※下剤など、日々調整が必要なため一包化しない方がよいものもある)
・ 「トリダス」など補助具の使用 など

② 嚥下障害
■ 嚥下しやすい工夫と飲み残しの確認
・ 剤型の変更(散剤・水剤・座薬や貼付剤など)
・ 服薬補助剤の使用(オブラートや服薬ゼリー、水オブラート)
・ 口腔内を予め湿らせておく
・ 嚥下しやすいポジショニング(座位姿勢を取り、頸部を軽度前屈位に保持)と自助具の活用
・ 嚥下後に残薬がないか口腔内を確認(誤嚥と薬の飲み残し予防)

③ その他
■ 薬を正しく保管できるような工夫
・ 軟膏など数種類処方はがある場合は塗布する部位を薬剤や薬袋に記載(”顔”・”足”など)
・ 冷所保存・遮光保存が必要な場合(座薬・点眼薬など)は予め家族と保管場所を決め、誤って口に入れたり危険がないよう注意
・ どうしても!絶対に正しく服用するための工夫(医療用麻薬など時間厳守・取扱注意の薬剤の場合)
・ 薬剤投与時間に合わせての訪問時間の調整/他職種との連携(ヘルパーによる内服介助・確認)など

<まとめ> 必要なのは患者さんが服薬を続けやすくする支援

入院中なら簡単な服薬管理も、在宅で認知症患者さん自身に管理してもらうとなると様々な課題が生じます。
必要に応じて家族、医師や薬剤師ら多職で連携し、少しでも患者さんがストレスなく、また確実に服薬を続けられるように支援していきましょう。

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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