訪問看護におけるターミナルケア(終末期看護)の概要|訪問看護の基礎知識

病院の在院日数が短縮され、『時々入院、ほとんど在宅』と提唱されだした昨今、私たちのいる訪問看護の現場で避けては通れない「ターミナルケア」。

「死」もまた人の人生の一部。とはいえ、まだまだ訪問看護師でも在宅での「看取り」には戸惑いを感じることが多々あります。

今回はそんな、人の人生に寄り添う訪問看護において、大切な「ターミナルケア」の基礎知識をお伝えしようと思います!

訪問看護のターミナルケアの特徴【1】対象者

「ターミナルケア」と聞くと、ほとんどが末期がんの患者や高齢者を想像されることが多いでしょう。
しかし、実際に在宅でターミナルケアを必要とされる方は、がんや高齢者の方が多いのはもちろんですが、脳卒中や神経難病、心疾患、腎疾患など、実に様々な疾患・状態の方も含まれています。

さらに、患者さんご自身の状態や最期の迎え方に対する認識も様々です。
末期がんの患者のように、はっきりと余命を宣告された上で自宅で最期を迎えると明確な意思表示をして自宅で過ごされている方もいれば、心不全や腎不全など慢性疾患で長期療養を続けた上で、徐々に状態が悪化して、ゆっくり家族で話す間もなくそのまま…という方もみられます。

また、最近では単身世帯も多く、ひとりで自宅で最期を迎える方も少なくありません。
さまざまな事情はありますが、そうした場合にはケアマネージャーやキーパーソン(親類・友人・近隣の方…時には家政婦さん、という方も)も交えて十分話し合い、本当にひとりで安心して自宅で最期まで過ごせるか、緊急時はどうするか、「◯◯な時には緩和ケア病棟へ入院する」などの取り決めをしておく必要があります。

いずれのケースにしても、本人・家族の方にとって間近に迫る死の現実を受け止めることはそう簡単ではありません。
したがって、訪問看護におけるターミナルケアの対象者は、利用者さん本人はもちろんのこと、そのご家族や親しい方も含めて考えることが必要となります。

互いに死を少しずつでも受け止め、今ある生と、大切な家族や親しい人・ものたちと過ごせる時間を少しでも長く、より楽しめるようにお手伝いすることが、訪問看護におけるターミナルケアの大切な使命なのです。

訪問看護のターミナルケアの特徴【2】症状コントロール

終末期(ターミナル期)では、その程度や感じ方は人それぞれながら、疼痛や呼吸困難、倦怠感などさまざまな苦痛や不快感が生じます。
そのため、訪問看護師は主治医と連携しながら細かな状態の変化を観察し、それらの苦痛や不快を予防・緩和する方法を検討してその都度対応していきます。

時には利用者さんの不安に寄り添い、ただひたすらお話を傾聴しその意思決定を支援したり、また時には辛い便秘に対し排便コントロールや食べやすい食事の工夫、またある時にはアロマを用いた部分浴やマッサージ、リンパマッサージなど、リラクゼーションや循環をよくする目的のケアをしたり…と、訪問看護師は実に様々なケアを行います。

また、症状コントロールを図る上では医師だけでなく薬剤師との連携も重要です。
「在宅では薬を十分使えないのではないか?」という不安の声を聞くこともありますが、そんなことは決してありません。
在宅においても、必要となればオピオイド薬(鎮痛性麻薬)の使用も可能ですし、薬剤師が訪問して副作用の確認や服用方法の指導・管理、また症状/副作用を見て量を医師と相談して調整してもらうことも可能です。

ちなみに、医師・薬剤師の定期訪問を待つ必要はなく、随時訪問看護師が状態を細かく報告し、早め早めの対応で少しでも早く苦痛をとり除けるようにと働きかけることも必要です。

なお、利用者さんだけでなく、苦痛や不快をあらわにする利用者さんをずっと近くで見ているご家族にとっても症状コントロールができるまでは辛いもの…。

在宅においてはご家族にレスキューや屯用薬の使用をお願いすることも多いのですが、なかには薬剤の使用をためらう方もおられます。
その際は、丁寧に使用方法と使用のタイミング(寝る前、◯時、痛みが◯点を超えたら…など具体的に)、どういう時には看護師・医師に連絡をすればいいかを説明し、安心して薬剤を使用してもらうことが重要です。

そしていつ・何を使用したかがわかるよう、メモをとっておいてもらうようにすると、24時間通しての症状コントロールにも大いに役立ちます。

なお、訪問看護は必要であれば、1日複数回、毎日の訪問も可能です。状態の変化に応じて、必要なケアの量も、利用者・家族の心理的な不安も大きくなるため、訪問回数や時間を柔軟に変更することも考慮しましょう。(※ただし、介護/医療どちらの保険を使うか、また疾患や状態によって自己負担の額が大きく異なります)

訪問看護のターミナルケアの特徴【3】すべての過程がグリーフケアに

訪問看護におけるターミナルケアでは、亡くなられるまでの間はもちろんのこと、利用者とともに長い時間を過ごし、最期を見送った家族や友人たちのその後の「生」にも着目します。
もちろん、病院でもグリーフケアはされますが、関わりの濃さや長さ、何より利用者さん本人が生きてきた「家」「風土」の中でされる在宅看取りでは、その後もそこで生きていく家族らの人生を、より強く意識せずにはいられません。

グリーフケアとは。遺族のQOLを左右する悲嘆のケア|在宅医療の基礎知識

2017.04.03

訪問看護は、今ある「生」と、大切な家族や親しい人・ものたちと過ごせる時間を少しでも長く、より楽しめるようにと支援すると同時に、「死」を受け止めながら、少しずつその最期の時を迎える準備をしていきます。
そのため、グリーフケアは関わり始めたところ、また状態が変化を見せはじめたところから既に始まっています。

グリーフケアの対象は、時には利用者さんの親であったり配偶者、また時には子どもであることもあります。
時にはいろいろな話(たわいもない話、最近の出来事、楽しかったこと、昔はこうだった…など)を楽しみながら一緒に利用者さんへのケアを行ったり、マッサージなどご家族にできる簡単なケアを伝えること、また時には利用者さん本人とご家族との間で話をする”きっかけ”作りをすることもあります。
(どうしても身近な者同士では”なぁなぁ”になったり、避けてしまいがち…)

そうして、日々の関わりを通して徐々に「死」というものに対する不安、恐怖心、人生の最終段階が近づいていることを感じ生じる様々な心の葛藤、戸惑いを受け入れられるよう支援していきます。
そうすることで、利用者さん・ご家族らともに「生」と「死」に自分たちなりの意味を見出し、
納得のいく温かな最期を迎えることにつながります。

もちろん、グリーフケアをしたからといって死別による悲しみを避けることはできませんが、そうした生前の利用者との関わり自体がその後遺された人にとっては大切な癒しとなり、生きる糧となるはずです。

なお、亡くなられた後も、事業所にもよりますが、葬儀が終わって落ちついた頃を見計らって、家族のもとへお花を持ってお悔やみに訪れます。(電話でお悔やみを伝えるところも)
そして故人へ手を合わせ、家族の様子を伺います。
「力が抜けて、しばらくは何も手につかなかった…。」という方もいれば、「今でもここに寝ているような気がする。全然さみしくないの。」という方など様々ですが、必要以上に悲嘆が長く続いていないか、体調を崩したりしていないか(緊張が解けると同時に?なのか、結構多いのです)などを確認します。

また家族らとともに故人のことを振り返り、ともに思い出を語ります。実は、これは家族だけでなく、関わった看護師自身へのグリーフケアでもあります。
心を込めて看護したスタッフにとっても、利用者さんとの死別は大きなストレスになります。
自身のケアを振り返り、無力感や喪失感をはねのけて次の利用者さんへよりよい看護を提供するためにも、とても大切な一つのケジメなのです。

訪問看護におけるターミナルケアは人生の最期に寄り添う重要なお仕事

実際に体験してみないとなかなかイメージしにくい、訪問看護におけるターミナルケア…。
ですが、「つらい」「悲しい」以上に、「人の温かさ」「感動」を感じることの方が実はずっと多いのが訪問看護でのターミナルケアだったりします。

訪問看護に興味がある方もない方も、ぜひ一度、その現場を体験していただければと思います。もしかしたら…人生観さえ変わるかもしれませんよ!

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

在宅ターミナルケアで必要な利用者様の精神ケア|在宅医療の基礎知識

2016.05.30

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