夏の訪問看護の注意点〜訪問看護師が夏を恐れる理由とは〜|訪問看護の基礎知識

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私たち訪問看護師にとって、1年で最も恐れる季節、「夏」!
というのも、私たちが訪問する在宅療養者のほとんどは抵抗力・体温調節機能の未熟な小児、そして高齢者の方たち
そんな彼らに、夏の暑さは容赦なく襲いかかり、いとも簡単に脱水、熱中症、そして最悪の場合には意識障害を招き、命の危険にさえ陥れます。

今回はそんな、私たちがもっとも警戒する「真夏」の訪問看護の注意点をお伝えします!

なぜ夏が危険なの?意外な在宅の落とし穴

看護師なら誰しも知っているナイチンゲール。
その彼女が唱えた看護における基本であり、かつ在宅で最も難しいこと、それは「環境調整」です。
年中を通して一定の室温・湿度が保たれる病院や施設と違い、在宅においては療養者自身、もしくは家族の手で環境調整を常にしなくてはなりません。

しかし、高齢者の方は加齢に伴い、寒暖の変化に鈍感になっていきます。そのため、真夏であっても…たとえ常に室温が30℃を超えていても、汗だくになっていても、どんなに気象予報で注意を促されていても、自身の感覚に頼って冷房をつけない方が実に多いのです。

高齢者の方は特に、身体の水分量も加齢に伴い減少するために発汗が減少し、体内に熱がこもりやすくなるため、こまめな水分補給と環境調整で脱水・熱中症を予防することが必要なのですが、暑さとその危険性を感じにくい彼らには、それはとても難しいこと。
まして、認知症の方や、介助なしでは動くことが難しい方はなおさらです…。

また小児の場合も、大人とは体内の水分のバランスが異なり、脱水になりやすい傾向があります。汗腺の発達も脳の発達も未熟であり、特に脳機能障害がある子では体温調節がうまくできず、いわゆる「うつ熱」を生じやすく、容易に脱水、熱中症を起こしてしまいます。
また高齢者の方と同様、自分で判断したり、周囲の人に訴えかけて環境を調整する、ということが難しく、とくに重症心身障害児の場合は周囲の手助けだけが頼りです。

こうしたことから、訪問看護師にとっては夏、特に彼らの環境調整に気を配り、未然に危険を予防できるようにすることが最も重要な役割となるのです。

真夏の訪問看護のポイント①環境調整

「家族にクーラーをつけてもらえばいいじゃないですか」
利用者さんについて相談すると、当然そう言われる方がいます。

最初にお伝えしておきますが、まず在宅では大前提として、自宅にクーラーがあることは当たり前ではありません。
実際に訪問しているお宅を見ると、訪問開始時点ではクーラーを設置していないところが少なからずあります。

そしてもう一つ、こうした状況では”家族”の支援を得られることがもちろん望ましいのですが、現実はそう簡単ではありません…。
頼みの綱である家族にも、もちろん仕事があり自分の生活があります。
いくら利用者にとって重要か理解いただいていたとしても、24時間365日、ずっと家で環境に気をくばっていてもらうことは不可能なのです。

また、暑さを感じていない高齢者の方、認知症の方ではせっかく家族や私たちがクーラーをつけていても、誰もいないと「もったいない」と自分で消してしまわれる方も…(悲しいことに、こういう方が多いです)。
さらに、介護サービスも限られた時間、曜日にしか訪問することはできず、「1週間のうち誰も(サービスも来客も)家にこない日がある」という療養者も少なからずいらっしゃいます。

こうした状況を踏まえ、私たち訪問看護師はどのような援助をするかというと以下のようになります。

<初回訪問時>居住環境の把握

たとえ初回訪問が冬でも春でも、冷暖房器具の有無や家の間取りを把握し、適切な室温・湿度等の調整が可能かどうか把握しておきます。
夏に向けては特に、「いざという時に冷房が使えない」ということがないよう、できるだけ早めにご本人や家族に必要性を説明し、冷房器具を整えてもらうようにしています。
(※扇風機でも最近は温度・湿度調節機能のあるものがありますが、昔ながらの古いものでは室温自体を下げる効果は期待できません。必ず実際のものとその効果を確認します。)

<各訪問前>週間の天気・気温の推移のチェック

利用者の方が脱水・熱中症になるリスクを予測し、必要と判断すれば訪問予定日時を変更したり(夕方の予定を昼にしたり、日を早めたり)、電話などで安否確認を行い、緊急訪問の必要性がないかなど状況を確認します(家族やケアマネージャーがされる場合も)。

<訪問時>
①バイタルサイン・全身状態の確認
利用者ご本人には自覚症状はなくとも、脱水や熱中症が疑われる時には必ず何らかの他覚症状が現れます。

めまい・顔のほてり・あたまがぼーっとする(話しかけても反応が鈍い)、倦怠感・頭痛・吐き気、体温上昇・体熱感といった熱中症の初期症状の有無、また水分・食事の摂取量と排泄量(in-outバランス)に異常がないか確認します。

これらの症状がみられた時には、水分補給(できれば糖分と塩分を含む経口補水液を)をすすめ、クーリングを実施しつつ、部屋を涼しくしてしばらく様子を見ますが、それでも改善が見られない場合や、同居家族が不在の場合、また翌日が休日などで何かあった際の対応が難しいときには無理せず早めに受診してもらうように促します。
また往診医がいる場合には状況を報告し、指示を仰ぎます。(点滴の指示などが出れば実施します)

②室温調整…換気や冷房調整を行います。

③その他…「何か様子がおかしいな」と思ったときもそのままにせず、家族やケアマネージャー、主治医に報告し経過を注意深く観察します。

真夏の訪問看護のポイント②予防行動の習慣化

高齢者の方は特に
「水分をとりましょう!」「お茶を1日にこれだけ飲みましょう」
といくら口をすっぱくして言っても、夏だからといって水分を取ることを意識したり、気温に注意することは難しいものです。
むしろ、トイレが近くなるから、と水分を控える方が多く(とくに夕方以降)、それが習慣化している方も多く見受けられます。

そのため、普段の訪問時から、『訪問看護さんが来たら一緒にお茶をする(お話を聞きながらお茶をする)』・『1日に水筒(またはペットボトル)1本は空にする』などの約束を決めておきます。
そして、気分よく継続してもらえるよう、できていなかったとしても非難することはせず、できているときには大げさに褒め称えます。主治医や家族、デイサービスのスタッフなどとも共有しておくと、みんなから褒め称えられてより効果を実感できるのか、習慣化しやすいようですよ。

このようにして、普段からいざというときにも予防行動を意識せず行えるよう習慣化する働きかけを根気強く行っていきます。

真夏の訪問看護のポイント③多職種連携

先ほどもお伝えしたように、一人の利用者の方の生活を24時間365日安全に支えるには家族、訪問看護、それ以外にも多くの関係職種の支援が必要です。
また、どんなに注意していたとしても、それぞれの職種だけでは利用者の状態を継続して把握することは難しいもの。しかも在宅では必ずどこかに「穴」(誰もみていない時間)ができます。

(病院でももちろんですが)在宅では完璧に利用者の安全を守るということはできません。ですが、できる限り安全に快適に暮らせるよう、その「穴」によるリスクを最小限にできるよう、連絡ノートの活用や電話等での申し送りをこまめに行い、多職で連携して、継続的に利用者の安全を守ることが重要です。

<まとめ> 病院にはない苦労の多い夏の在宅現場

こんな風に、夏の訪問看護には病院看護にはない大きな苦労があるのです。
どうか病院の看護師の皆さんは、必ず患者さんを退院させる前に自宅の環境を確認してあげてくださいね!(そして、もし可能であれば…少し涼くなるまでは病院に置いてあげてください笑)

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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