排便コントロール|訪問看護の基礎知識

訪問看護師が行うケアの中で、とりわけ多いのが「排便コントロール」。実際、在宅療養されている方の多くが排便コントロールに関する悩みを抱えています。

今回は、そんな「排便コントロール」に関して、訪問看護の現場ではどのように行われているかをお話ししたいと思います!

排便コントロール…日常生活に及ぼす影響とは?|訪問看護の基礎知識

在宅療養されている方だけでなく、誰もが一度は便秘もしくは下痢で困ったという経験をされたことがあるでしょう。

その時の体験を思い起こしてください。

便秘の時…
食欲もわかないし、なんとなく全身の調子が悪い…。
かといって下剤を飲んで外出先でトイレに駆け込むなんてしたくないし。
下剤が効きすぎると嫌だから、学校や仕事に行く日や友人と会う日は飲みたくないなぁ…。

下痢の時…
腹痛や便意がいつ襲ってくるかわからないのに、外出なんてしたくないなぁ。
食べたらまた下痢するんじゃないかと思ったら食事もあまりしたくないし、家でじっとしていたい。早くなんとか治まってほしい…。

こんな気持ち、みなさんもよくわかりますよね。

その上、在宅療養されている利用者の方の多くは要介護状態、もしくは医療的なケアが必要な状態です。そのため、運動や食事、水分摂取なども健康な方よりも充足しにくく、また疾患や薬剤等の影響も受けて便秘あるいは下痢を来たしやすい状態になっています。
実際には便秘の方が多いようですが、便秘ー下痢を繰り返すタイプの方もいます。

こうした状況のため、日常生活を少しでも快適に過ごしていただけるように、在宅における排便コントロールは利用者の方にとって、とても優先度の高い重要なケアなのです。

排便コントロールの実際【1】アセスメント

実際の排便コントロールの方法を見てみると、在宅であるからといって特別なことはありません。
まず最初に問診・そしてフィジカルアセスメントを行い、腹部の状態や全身状態の異常をチェックします。

認知症などで本人が明確に答えられなかったり、情報が曖昧な場合は家族の方やヘルパー・デイサービスの記録などからも情報を収集し、排泄状況や食事摂取・水分摂取状況、活動状況等の確認を行い、便秘・下痢の原因と程度をアセスメントしていきます。

排便コントロールの実際【2】応急処置

訪問開始時から「そういえば、もう何日もお通じが出てない…」という方が多い在宅。
便秘の場合、まずいろいろな薬剤を試みるよりも前に直腸診・摘便で便の性状を見てみます。

結構多いのが、自己判断で浣腸を試してみたものの、思うように出ずに余計苦しまれる方もいますが、直腸まで便が降りてきていなければ浣腸も効果は望めません。
また、直腸内にあったとしても長期間排出されなかった便は石のように硬くなっていることが多く、浣腸だけで排出するのは困難です。その上、浣腸の使用は急な血圧低下や気分不快をきたす恐れもあるので初めて使用する場合は慎重に。

直腸診で直腸内に滞留する便が確認できたならば、指で直腸を刺激しながら便が降りてくるよう促しつつ、掻き出せる範囲の硬便を取り除きます。
腹圧が上手にかけられる方なら、出口を塞いでいた硬便さえ取り除けば、あとは自力で自然排便も可能な場合があります。浣腸を試みる場合もありますが、いずれにしてもできる限り苦痛や羞恥心が少なくなるよう利用者さんへの配慮も忘れずに。

また、寝たきりで筋力が低下している方など、腹圧が弱い方には、無理に摘便で出そうとするよりも先に温罨法やテニスボールを用いての腹部マッサージで腸蠕動を促すことも有効です。
いずれにしても、応急的に便を排出した後は必ずその状況を踏まえて再度アセスメントし、便秘を繰り返さないよう予防を図ります。

下痢の場合も、一時的なものであれば脱水に注意して水分摂取と安静を促し、血便や感染症の徴候などがある場合には医師に報告、必要があれば受診・投薬の指示に従います。
さらに、下痢による皮膚汚染は皮膚トラブルを招きやすく、わずかな間でも寝込んでいる間に褥瘡に発展しかねません。入浴や洗浄で皮膚の清潔を保ち、ワセリンやセキューラ、サニーナなどの撥水効果のある軟膏・薬液を使用し注意深く皮膚の観察と保護を行います。

排便コントロールの実際【3】継続的な観察と再発予防

便秘の場合は一度応急的に便を出したからといっても、その後もそれまでと同じ生活を繰り返していてはまた便秘を生じてしまいます。

そのため、原因や状態に応じて再発予防を日頃から図っていきます。

具体例としては

【1】こまめな水分摂取(できれば1.5〜2L/日を目指して)【2】定期的に排便できるようリズムを整える
(朝起きたら水分を取る、朝食後に落ちついてトイレに座るようにするなど)【3】不安や緊張の緩和・リラクゼーションー自律神経機能を整える
(足浴やアロマの活用など)【4】適度な運動と食事摂取ー体を動かし循環改善、食欲増進をはかる
(ラジオ体操やデイサービスへの参加を促すなど)【5】適切な薬剤管理ー医師と相談のうえ下剤・整腸剤の使用、量や服用時間の調整、服用方法の指導
(2日間排便がなければ寝前にラキソベロンを◯滴内服、翌日もなければ◯滴に増量…など具体的に)

などです。

また、下痢の場合も、便秘と同様に生活習慣の見直しと排泄のリズムが整えば自然と改善されることが多くあります。特に、便秘を気にして下剤を自己判断で調整してしまわれている方にはよくみられます。

胃や腸切除後の方など、消化機能の変化がある方では食事内容や食べ方でも下痢になりやすいため食事内容の観察と見直し、場合によっては宅配食や栄養補助食の紹介なども行います。

「排泄」をケアで快適に!

人にとって基本的な欲求である「排泄」。
これがスッキリできたかどうかでその日1日快適に過ごせるかが決まるくらい、大きな影響力のあるものですよね。

「命に関わるほどのものじゃないんだから」、とおざなりにせず、日頃からのケアをしっかりと行い、利用者の方が快適に暮らし続けられるようお手伝いしていきましょう!

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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