訪問看護で考えておくべきご利用者の「QOL」とは|訪問看護の基礎知識

訪問看護師は常にQOL(キュー・オー・エル)の向上を目指しています。ご家族の努力によって既に快適な生活を送っておられる方もいらっしゃいますが、そうでない例も多くあります

ご本人の思いとご家族の思いに微妙なずれがあったり、ご本人の価値観が周囲と合わなかったり。いろんな場面を通してご本人にとって一番良い方法を今日も模索しています。

訪問看護のQOL(キュー・オー・エル)とは

QOL(Quality of Life)は「キュー・オー・エル」と読み、生活の質と訳されます。
ADL(日常生活動作)が充分にできない状態でも介助を受けることによって自分らしい生活を送って生きがいや幸福感を得られるように援助しようというものです。

在宅の場合、病院のように専門的なリハビリが行えないためにADLの向上は難しいといえます。しかしながら、ADLにおいては他人に気を使わず過ごせる自宅は理想的で、より自分らしい暮らしが送れる環境といえるでしょう。そうは言っても実際にはご本人の病状やご家族の生活環境などによって実現が難しい場面も多いのですけどね。

事例(1) 認知症でも家族の理解で楽しく暮らせる

実母の介護をされている娘さんとそのご家族が同居されているお宅がありました。
お母様は認知症があり、徘徊があった時期は大変だったそうですが、その頃は寝たきりに近い状態にありました。娘さんはとても熱心に介護にあたっておられました。

「すぐに忘れてしまうのですが、それでも母が笑っているとほっとします」と娘さんは仰います。健康だった頃の生活をできるだけ取り入れて今までの習慣を壊さないようにされている様子が伺えました。

ご本人には必ず毎朝、朝刊を手渡すそうです。すると、くまなく目を通して何やらメモをされるそうです。ちなみに、そのメモを見せて頂いたのですが達筆過ぎて読めませんでした。晴れた日には車いすで近所をお散歩。昔、お気に入りだった帽子を渡すとかっこ良く被ってポーズを決めるお母様は幸せそうな笑顔を見せてくださいました。

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2016.09.29

事例(2)本人の気持ちと家族の気持ちに寄り添った介護を

脳梗塞で片麻痺のあるご主人を奥さまが介護されているお宅があります。
ご主人は記憶力が良く、難しい漢字もよくご存じでした。片麻痺によって発音がおぼつかなくなってから徐々に認知症が進み、口数も少なく、表情も険しくなりました。

リハビリも拒否され、廃用症候群の傾向が出てきました。ご主人には自分の身体が思い通りにならない焦りと怒りがあるようでしたので、様子を見ながら声かけをしてうまくリハビリに誘導するようにしていました。リハビリによって筋力低下を防止して、自信を持って頂きたかったのです。

しかし奥さまは、それよりも現在のような胃ろうからの食事ではなく「口から食事ができるようになること」を強く願っておられ、主治医から許可を貰い、訪問リハビリで嚥下訓練を開始されました。

訪問看護でも通常のリハビリの後で嚥下訓練を行いましたが、ご主人は凄く嫌がられていました。現在も継続していますが進展はありません。ご主人自身がそれを希望されているのかもよく判らない状態です。

嚥下訓練の一環で少量のゼリーを食べる時のご主人は嬉しそうでしたから、奥さまもご主人のために良かれと思ってされたのでしょうけど、認知症と発語に障害のある方の本心を推し量るのは難しいです。

事例(3)本人が本当に望むQOLを見つけることが大切

60代の女性がひとり暮らしをされていました。彼女は上下肢の筋力が徐々に低下していく難病でした。歩行も徐々に不安定になっていて転倒の恐れも高くなっていました。実際、ふらついて転倒し、軽い打撲をしたり、起き上がるのにも時間がかかったりしていましたし、日常生活にも支障が出始めていました。

当然のことながら息子さんとの同居を勧めましたが、彼女は頑として聞き入れませんでした。それは息子さんへの遠慮もあったのでしょうけれど、彼女自身、自分の思うように暮らしたかったからだそうです。

相談の末、息子さんには出勤前や昼休み、帰途につく前、就寝前等、できるだけ訪問して頂き、あとは訪問看護とヘルパーさんで環境整備や日常の細々した援助をしてきました。牛乳パックやペットボトルのふたを開けやすくしておいたり、内服薬を取りやすいようにトレイに並べたり、服を着る順に広げて重ねておいたり。その後、結果的には入院されることになったのですが、自宅で自分の力で暮らすことができた日々は嬉しかった、と言われたそうです。

最後に 訪問看護こそQOLの理想のはずなのに

訪問看護はご本人が快適に在宅療養を送れることを目標にしていますので、QOLの向上はまさに訪問看護の目標と一致します。病院に比べて在宅は理想的なQOL向上の場であるはずなのですが、全てがうまくいくとは限りません。
その原因の1つは価値観の違い。人にはそれぞれの価値観があります。自分の物差しで測るのではなくその人に寄り添って思いを汲み取る姿勢こそがQOLの向上につながるのです。

writer
cocoa

看護師になって30数年。大学病院退職後、途中、育児や病気療養で中断した時期もありましたが老人病院、精神科病院、デイサービス勤務を経て8年前から訪問看護を始めました!

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