訪問看護における「家族看護」とは?訪問看護師が考えるポイント3つ|訪問看護の基礎知識

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訪問看護の現場において、利用者さんのご家族の方というのは実に大きな影響力をもつ環境の一つ。とりわけ訪問看護師にとって利用者さんの長い療養生活を共に支えるパートナーであり、また同時に看護の対象でもあります。

では、実際にご家族に対して訪問看護師はどんな看護を行なっているのか?
今回は、そんな普段あまり目にすることのないご家族への看護について、特に訪問看護において注意すべきポイントをお話したいと思います。

家族看護のポイント1 世間にはいろんな家族のカタチがあることを理解すること|訪問看護の基礎知識

「少子高齢化」というワードも聞き飽きるほどになった昨今ですが、その影響を受け、現代では家族の形や家族のもつ機能まで大きく変化してきました。

というのも、昔は病人の看病も高齢者の介護も、家族の中で行われるのが一般的だった日本。
しかし、現代では実際に訪問させていただくお宅の大半が高齢者のみの世帯…。
地方ではまだお孫さんを含めた”ち○まるこちゃん”のような「3世代家族」もちょこちょこ見かけますが、高齢者の方の一人暮らし、もしくは夫婦のみの高齢者世帯の方がやはり目立ちます。

では、他の家族は?…というと、仕事や結婚などを理由に他所で暮らされているか、もしくは子どもさんがおられず、キーパーソンは友人やヘルパーさん、という方も珍しくありません。
甥っ子・姪っ子がキーパーソンとなっている方も意外と多いですね。

ちなみに、住居の形態も多種多様で、独居高齢者も増加している昨今ではいわゆる「サ高住(さこじゅう)」と言われるサービス付き高齢者住宅や、グループホームなどへの訪問看護もニーズが高く、訪問件数も増えてきています。

このような現状を踏まえ、”家族や家っていうのはこういうものだ!”と自分の持つ「家族」や「家」のイメージにとらわれず、社会の変化と利用者の方一人ひとりの実情に合わせて柔軟に理解を寄せていくことがまず訪問看護における家族看護の第一歩になります。

家族看護のポイント2 利用者さん・ご家族にとって常に中立だと理解する

訪問していると、利用者の方から「○○(家族)にこんなひどいことを言われた」「○○に怒られる」など、家族の方への不平・不満や苦情(?)のようなものを聞くことがよくあります。

が、一方でそれと同じく家族の方からよく言われるのが、「○○さん(看護師)はどうせ○○(利用者さん)の味方なんでしょ。」といったセリフ。冗談交じりであっても、ちょっと切ないこのセリフ…。

裏を返すと、「どうせ誰も私の苦労なんてわかってくれないんでしょ。」という、報われない日々の介護への嘆きや徒労感、孤立感の表れとも受けとれますよね。

確かに、私たちは日頃から利用者の思いに寄り添おうと接しており、利用者さんからも先述のような他人に言いにくいような話を聞くことも多いため、どうしても利用者びいきになりがちです。

しかし、看護・介護職が関わる以外の時間、利用者の細かな要求をキャッチし、身体的負担を抱えながらもオムツ交換や食事の準備など多くの日常生活の介護を行っているのは素人の”家族”。
それも365日・土日祝日も関係なくと思うと、”本当にしんどい中よくやってくださっている。そりゃあ、たまには家族の方だって愚痴やイヤミのひとつも言いたくなるよね…”と、客観的に考えてみると、家族の方の頑張りには本当に頭が上がりません。

ただ、実際のところ、家庭で十分な介護がされず、利用者さんの体調に何らかの影響を起こしているようなケースもあります。
そして、中には「これって介護放棄(虐待)…?もうちょっと家族の方でなんとかできないのか…。」と疑われるようなケースも確かにあります。
しかし、大抵の場合は家族の方も精一杯、ギリギリのところまで自分にできる範囲で頑張ってくださっているのです。

家族だけでは十分な介護・ケアが行き届かないから私たちのようなサービスが必要とされているのです。もしも利用者さんが家族に対する不満を訴えたとしても、利用者と一緒になって家族を非難する権利は私たちにはありません。

訪問看護をする上で理解していてほしいこと、それは利用者と同じく、家族もまた自分の理解者を求めているということ。どんな時も、常に訪問看護師は中立で客観的な立場としてあり、どちらか一方の肩を持つようなことは決してないようにしましょう。

そして時には1時間でも2時間でも、必要だと感じたらその思いをしっかりと聴き、日頃から溜まった不満や不安を吐き出してもらい(内輪では”息抜き”ならぬ”毒抜き”といっています。笑)、少しでも前向きに利用者さんとの生活を送ってもらえるよう、ご家族と向き合うことが大切です。

(ただし、本当に虐待の可能性が高いと感じた場合や、緊急性が高い場合はすぐにケアマネージャーに相談して市の窓口へSOSを求めましょう!)

家族看護のポイント3 100点満点を求めなず”いい加減”を見つけること

家族看護といえば、つい張り切ってやりすぎてしまうのが「家族指導」
特に訪問看護をはじめたてのうちはその加減がわからず、ご家族に余計なプレッシャーを与えてしまうことも多いものです。
もちろん、必要最低限のことは押さえないといけないのですが…大切なのはその”程度”。

例えば、”オムツ交換”
一般的に、病院では「日中は2~3時間ごとに体位変換とオムツ交換をし、夜間は寝る前に大きめの尿取りパットに交換するように」と指導されているところが多いかと思います。
しかし、退院直後の訪問で困っていることを聞いてみると、尿や便の「横漏れ」を相談されることが…。

その原因を辿ると、約束した定時にオムツを確認できていない為に、排泄物が吸収しきれていないこと、そしてパットのあて方に問題がある場合がほとんどです。
ただ、ここで再度「定時にオムツ確認をすること」と「パットのあて方」をご家族に指導することが全ての家庭での最善策かというと…ちょっと待ってくださいね。

〇その主介護者はなぜ、約束の時間にオムツを確認できなかったのか?(たまたま?それとも今後もできない可能性が高い?)
〇パットの正しいあて方を知って、本当にその通りできるか?
〇主介護者だけに毎回やってもらうのではなく、分担して手伝ってくれそうな家族はいないか?

など、様々な視点から、365日・24時間そのご家族が本当にその方法で介護を最小限の負担で継続していけるかを配慮して「100点満点」を目指すのではなく、「(この家族なら)これだけできたら十分」という目標を定め、それにあった指導をする必要があります。

在宅では、ご家族の持つ介護力も、元来の生活リズムも様々です。

病院でできたことが自宅ではできない、ということも当然たくさん出てきます。
特に初回訪問の時点で、ご家族だけでは”難しいかも”と感じたら、一時的に訪問介護などプロの手を増やすなどして、家族が落ち着いて介護・療養生活に馴染んでいけるよう支援することも考慮しましょう。(初めからご家族の満点を目指す必要なし。チームで目標点が取れればいいんです!)

まとめ

いろいろと複雑な要素の絡み合う、訪問看護における家族への看護。
難しくもあり、ですが、そこが面白いところでもあります。

訪問看護における家族看護で大切なのは、利用者さんの利益を最優先に考えつつ、利用者にとって一番の協力者である家族の負担を最小限に、そしてかけがえのない家族との日々を楽しく送れるよう、家族全体の力を最大限に引き出すことではないでしょうか。
そのためにも、私たち看護師が家族の良き理解者となり、時には陰になり日向になり見守ることがとっても大切なのだと覚えていてくださいね。

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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