訪問看護師が伝える、訪問看護と医師の連携の実際|在宅医療の基礎知識

訪問看護を利用されている方やその家族の方々にとって、在宅療養の心強いパートナーとも言える医師。その存在は、私たち訪問看護師にとっても同じくらい大きなものであり、医師との連携の質がケアの質をも左右すると言っても過言ではありません。在宅医を務める医師の方は、長年の経験をもとに、在宅でももっとより良い医療を!という熱い想いを持つ人格者揃い!

ですが、だからと言っていつもスムーズにいくことばかりではありません今回は、そんな訪問看護における医師との連携の裏側にある、知られざる苦労について体験談をもとにお話したいと思います。

”開業医”が全員ベテランではない。そして、なんでも知ってる訳でもない。|在宅医療の基礎知識

”看護師”といえば、「一生勉強が必要な大変な仕事」とよく言われますが、実際に次々と新しい治療や医療材料、ケア技術が研究・開発されるため、特に訪問看護の現場にいる者は利用者の方の多様なニーズに応えるためにも、業務外であっても勉強会への参加や自己学習を怠ることはありません。

そしてもちろん、医師も同じです。むしろ、看護師とは比べ物にならないほどの知識・技術が求められます。特に、大きな病院から地域の在宅支援診療所へと引き継がれる患者さんには、がんによる苦痛症状のコントロールや栄養・全身状態の管理、点滴・注射などの処置や褥瘡管理など、様々な医療的ケアが必要なケースが少なくありません。

そのため、私たち看護師はつい気軽に「○○先生なら当然知っているだろう」と、何かわからないことや不安があると医師に訊ねてしまうのですが、実はそこには意外な落とし穴が…。

というのも、在宅医の中には、在宅支援診療所ではなく、昔からの町医者(開業医)として一人で長年診療をしてこられた方もおられます。
そうした方たちは、数多くの症例を診てこられているだけに経験豊富で患者さんからの信頼も厚い方ばかりなのですが、中にはいわゆる”昔ながらのやり方”のまま診療されていて、
「え、未だにこんな薬使うの?!」
「えぇっ?!こんな処置方法で本当に大丈夫なの?!!」
と、思わず首を傾げてしまうような驚きの指示を出されることもあるのです。

すると、訪問看護師は医師の指示のもとに処置に当たることが大原則なだけに、「(しまった…!他の先生にお願いすればよかったかも…。)」と時には後悔することも…。

ちなみに、そんな時はどうするかというと、
「いやいや、最近はもっとこんな良いのがあるんですよ、先生ー!!」といいたくなるのをぐっと飲み込みつつ、とにかくまず医師を信じて指示通りにやってみます。

そして、それでもやっぱり改善を認めないようなら、その時またその医師に相談する、というのが訪問看護師の中での暗黙のルールとなっているのです。
一見まわりくどいようですが…利用者さんの安心・安全のためにも主治医を”立てる”のは必要なこと。
そして、たとえ自分が思う”最善”と異なったとしても、医師の経験と判断を信じ、医師との関係を良好に保つということも大切な仕事なのだと理解していなければなりません。

医師との関係によっては初めからそれとなく違う方法を提案してみたり、応急処置の場合は指示のない処置方法をとって事後承諾を得ることもありますが…治療方針や処置方法について医師に対し看護師が口出しするのは基本的に良く思われないと思っていた方がいいです!

チームの”足並みを揃えることは、最大にして永遠の課題…

在宅ではよく利用者本人・家族を支える人たちを在宅”ケアチーム”と呼びますが、特に終末期にある利用者の方の場合には、普段の身体状況を熟知し今後の経過を予測できる訪問看護師がそのチーム間の調整役をすることが多くなります。
しかし、そんな大事なときこそ一番の味方になってくれるかと思いきや、医師が意外にもチームの足並みを乱してしまうことがあるのです。

例えば、実際にあったこんな場面ー

とあるがん末期の女性の方で、中学生の息子さんと暮らしていたAさん。
まだまだ働き盛りのAさんは、もともと福祉の仕事をされており、ご自身の病気のことも、今後のこともよく理解された上で、
「今を逃すと帰れなくなる!どうしても最期は家で過ごしたい、最期まで頑張って生きたい!」と、入院での治療をすすめていた医師を振り切って在宅療養に踏み切られた方でした。

しかし、病院から引き継いだ在宅医は往診のたびにAさんへ、
「頑張らなくていいからね。」と繰り返します。
それを聞いたAさんと、Aさんの実母、そして息子さんは曖昧に返事をしたまま顔を曇らせていました…。

その後も、Aさん一家は在宅医には自分たちから思いを伝えることはありませんでしたが、訪問看護師として訪問中に話すAさんの姿や家族とのやりとりからは、『私はいくら頑張っても死ぬ…そんなことはわかってる。けど、少しでもあがいて家族と過ごせる時間を延ばしたいし、子どもの前では頑張った(懸命に自分らしく生きた)姿をみせたい。』との思いが、言葉にしなくてもひしひしと伝わってくるのです。
もちろん、在宅医に悪気はなく、辛い身体をおして一人で身の回りのことをしようとするAさんを気遣っての言葉だったと思いますが、Aさんたちは「この先生には私の気持ちはわかってはもらえない」と感じていたのだと思います。

週に1度、それも短時間の往診時にしか接することがない在宅医に、そのことを伝えるべきか思案している間に、まもなくAさんは静かに息を引き取られました。

このように、在宅医の価値観や利用者の方と築く関係性によって、最期までチーム員の足並みを揃えられず、利用者の方の思いに十分添えなかったなと感じるケースがあります。
生活全体を見て、より密な関係を築きやすい看護・介護職と、元来身体を診るのが一番の仕事である医師とではどうしても利用者の方・ご家族への理解に多少の差ができてしまうのですが、その差をどのように情報共有して埋め、チームとしてできる限り共通した理解を持てるかが、常につきまとう連携上の最大の課題です。

【まとめ】コミュニケーションを密にし、立場の違いや考え方の違いを理解しよう

このように、訪問看護における医師との連携の難しさの要因には、医師と看護師、互いの視点やスタンスの違いによるものが多いようです。いずれにせよ、訪問看護に限ったことではないと思いますが、医師と看護師がお互いの専門性の違いを理解し尊重しあって、より密に質の高いコミュニケーションをとることが、単純ながらも実は一番必要なことなのでしょう。

みなさんの職場ではどうでしょう?医師と良好な関係、築けていますか??

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

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