特定看護師とは。ナースプラクティショナー(NP)との違い|在宅医療の基礎知識

病院中心の医療から、在宅中心の医療へと転換されようとする中、治療と生活両面を支える看護師に対して、寄せられる期待がより一層高まってきています。

そんな中、近年登場したのが「特定看護師」。在宅医療推進の切り札として注目が集まる「特定看護師」についてご紹介します。

「特定看護師」とはー誕生の背景

日本はいまや立派な超高齢社会

医療・介護に関わる様々な問題が一気に表面化するターニングポイント「2025年」が近づくなか、多様化するニーズと高度化を続ける医療の現場では、人手不足が深刻化し、医師にかかる負担は増すばかり。

そこで2009年から「チーム医療推進に関する検討会」が開かれ、日本の実情に即した医師・看護師等との協働連携のあり方や、看護師等の専門性の向上などについて検討されることになりました。

そして数年にわたる検討の末、1510月に「保健師助産師看護師法」が改正、施行され、厚労省は特定行為を診療の補助業務として認めるとともに、「特定行為に係る看護師の研修制度(特定行為研修)」を創設しました。

特定看護師」という資格が新たに創設されたわけではありませんが、特定行為研修を修了した看護師は、これまで医師にその都度判断や指示を受けなければいけなかった診療の補助行為を、医師の指示した病状の範囲内であれば、医師が作った手順書(指示書)に沿って、看護師自身が判断し、実施できるようになったのです。

特定行為研修を修了した看護師は、193月時点で1685人に上っています。

特定看護師が実施できる「特定行為」とは

では、特定行為研修を修了することで、実施できる「特定行為」にはどのようなものがあるのでしょうか。

法律上の定義を見てみると、「診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるもの(保助看法第37条の2)」で、全部で38項目あります。

人工呼吸器の挿管・抜管や設定の変更、脱水症状への輸液補正、褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去、ドレーンの抜去、直接動脈穿刺法による採血などが含まれています。

そして、これらの特定行為は21区分に分かれており、自身が研修を受けた区分の特定行為を、手順書に従って実施できるようになります。

【特定行為に係る看護師の研修制度21区分38行為】

参考:厚生労働省HP「特定行為区分とは」

また、在宅・慢性期、外科術後病棟管理、術中麻酔管理の3領域については、時間や手間を省くために、1区分全ての研修を終了しなくても、医療機関や診療科ごとに想定される行為のみをまとめた、パッケージ研修を受けることも可能です。

なお、パッケージ研修については、救急領域が新たに加えられる見通しとなっています。

特定行為に必要な「手順書」とは

手順書とは、看護師が特定行為を行うにあたって、医師や歯科医師が作成する指示書のこと。

看護師が医師の判断を待たずに、自身の判断で特定行為に対応できるよう、想定される病状の範囲や必要となる行為について、フローチャート式でまとめたものとなっています。

手順書に記載しなければならない具体的な事項は、以下の通りとなります。

1. 看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲

2. 診療の補助の内容

3. 当該手順書に係る特定行為の対象となる患者

4. 特定行為を行うときに確認すべき事項

5. 医療の安全を確保するために医師又は歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制

6. 特定行為を行った後の医師又は歯科医師に対する報告の方法

特定看護師になるためには

特定看護師になるためには、厚生労働省が指定研修機関として指定した大学や大学院、病院などで特定行為研修を受ける必要があります。

研修では、講義、演習(少人数でのディスカッションや発表など)、実習(実習室や医療現場での実技など)が行われ、特定行為の全ての区分に必要となる共通科目と、区分ごとに内容が異なる区分別科目の両方を修了する必要があります。

修了にかかる期間は6か月~2年間、費用は約30250万円とのことです。

指定研修機関は、198月時点で全国40都道府県に134機関あります。
研修の一部(講義、演習)を自宅などで受講できる「e-ラーニング」を導入している研修機関もあり、遠方からの受講も可能です。

ただし、全ての指定研修機関が、特定行為研修を常時開講しているわけではないため、日本看護協会が、厚生労働省から委託を受け運営しているポータルサイト(看護師の特定行為研修制度ポータルサイト:https://www.nurse.or.jp/nursing/education/tokuteikenshu/portal/)などで、事前に募集状況を確認する必要があります。

「ナースプラクティショナー( NP)」との違い

この特定看護師のモデルとなったのは医療先進国アメリカの「ナースプラクティショナー(NP)」という資格です。

以前からアメリカをはじめとする諸外国では、医師の指示がなくてもこのNPが特定の診断や薬剤の処方など一部の診療行為を行うことが認められています。

その高い専門性とチームに対する貢献度、医療費の抑制効果は日本の医療機関でも高く評価されており、日本でも08年から一部の大学でNP(日本では診療看護師と訳されています。NP看護師と呼ぶことも)の教育が開始されましたが、医師法の関係から、NPが診察や処方などを行うことは現在も認められていません。

過去の検討会でもNP制度創設が議題に上がっていますが、責任の所在や法整備などの問題から賛同は得られず、医師の指示を必須とした上で、看護師にも特定行為を認める「特定看護師」が導入される結果となりました。

また、18年から議論されている医師の働き方改革においても、業務のタスクシフティング推進のため、NP創設が再度議題に上がっています。

特定看護師を取り巻く現状と課題

特定行為研修の導入から4年が経過し、老健施設で在宅患者の創傷管理など、特定看護師が活躍する事例も多く報告されています。

また訪問看護の現場でも、呼吸器管理患者の気管カニュレの交換を行うなど、医師や地域の他職種とこれまで以上に密に連携しながら、慎重に活動の場を広げているようです。

一方、特定看護師の育成と業務には課題が多く指摘されています。

まずは育成についてです。
研修施設は近年増えつつあるとはいえ、全都道府県に配置されているわけではないため、受講のために遠方に出向くことが必要となるケースがあります。
加えて、研修期間が長期にわたることや、実習が必要となることから、期間中の業務の調整や給与面の補償など、派遣する側からのバックアップが不可欠です。

また、指定研修機関によって研修内容や受講資格も異なり、特定看護師の質も均一ではありません。
そうした中、日本看護協会では
17年から19年までは認定看護師に限定して研修を行い、モデルとなるカリキュラムを作成するとしています。

業務についても、医師や他職種との連携のあり方や事故発生時の責任の所在、施設内での配置(病棟・外来・看護部など)なども明確な指針がないほか、医療機関側が不慣れで、特定看護師をうまく活用できないという声も上がっており、まだ手探り段階というのが現状です。

まとめ

厚生労働省は2025年までに10万人の特定看護師を育成する方針を掲げていますが、目標にはまだ遠いのが現状です。「特定看護師=安上がりの医療」と批判的な声もあり、多くの課題も指摘されていますが、現場では医師だけでなく患者さんからの喜びの声も確かに聞こえてきています。

医師の働き方改革の観点からも注目がさらに集まりつつある、特定看護師。医療現場での救世主となるのか、今後の動向に要注目です。

<参考ページ>

厚生労働省:特定行為に係る看護師の研修制度

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html

公益社団法人日本看護協会:看護師の特定行為研修制度ポータルサイト

https://www.nurse.or.jp/nursing/education/tokuteikenshu/portal/

writer
chocola

現在看護師8年目。大学病院の内科病棟に配属され、うち2年間は夜勤専従看護師として勤務。結婚と同時に退職し、現在は訪問看護師として勤務。

チーム医療推進の中の看護師の役割とは|在宅医療の基礎知識

2015年12月25日

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