在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症|在宅医療と感染予防 第10回

再興感染症とは、予防接種や抗生物質などにより一旦収束を得たものの、病原体の変異や環境の変化によりふたたび流行が問題となっている感染症のことです。一方、新興感染症は新しい病原体による感染症のことを指します。

ここでは、在宅ケアで出会う可能性のある、再興感染症の一つである”結核”、新興感染症である”肝炎ウイルス”および”大腸菌O157″に絞ってお伝えします。

1.再興感染症で問題となっている結核の対応策は?

感染経路:空気感染、接触感染
潜伏期間:数週間〜
症状:微熱、咳嗽、全身倦怠感、体重減少など
予防法(排菌あり):N95マスク、手袋、手洗い、エプロン、うがい
予防法(排菌なし):マスク、手袋、手洗い、うがい

結核は、感染者の咳や息により菌が放出されて、近くにいる人に空気感染するため問題となります。そのため、排菌する肺結核と排菌しないそれ以外の結核で大きく対応が変わります。排菌している場合は結核専門の病院に入院が必要となりますが、排菌していない場合は通常の対応で大丈夫です。

結核は過去に感染し体内に潜伏していたものが、加齢による免疫の低下で発症することがあり、数ヶ月持続するや微熱などがあれば結核を考慮する必要があります。

重い肺結核の人と接した人は全て結核の検査を受ける必要があります。健康な人であれば自然免疫により結核を発症することはほとんどありませんが、検査が終わるまでは他の在宅療養者に結核菌を持ち込まないように対応について医療施設や会社と話し合う必要があります。

2.新興感染症 肝炎ウイルスの対応策は?

感染経路:接触感染、血液感染、母子感染
潜伏期間:数ヶ月〜
症状:全身倦怠感、頭痛、発熱、関節痛、食欲不振、右上腹部痛、黄疸など
予防法:マスク、手袋、手洗い、エプロン、うがい

新興感染症として登録されているのはC型とE型ですが、日本ではB型やC型肝炎ウイルスが多く、約250万人の患者がいると推測されています。肝炎ウイルスが発見される前に受けた輸血により感染したケースが多く、患者層は40歳以上が9割以上を占めています。そのため、自ずと在宅ケアで感染者と接する機会は多くなります。

スタンダードプリコーションでは、全ての血液・体液は汚染されているものとして扱うため、標準の予防策を行なっていれば問題ないのですが、B型肝炎は特に感染力が強く、乾燥した血液であっても1週間ほど感染力をもつとされています。在宅療養者の体液が付着していると考えられる部位は次亜塩素酸ナトリウム消毒でしっかり消毒しましょう。また、針刺し事故がないように細心の注意を払いましょう。

高齢者のHIV感染者は少ないものの、新薬の開発が進んでいることから、今後接する機会があるかもしれません。HIVに関しても対応は肝炎ウイルスと同じです。消毒は、次亜塩素酸ナトリウムのほか、消毒用エタノール、ポピドンヨードなどが感染性不活性化に有効です。

3.新興感染症 大腸菌O-157の対応策は?

感染経路:経口感染
潜伏期間:3〜5日
症状:激しい腹痛、水様性〜血性下痢、嘔気・嘔吐、発熱、血尿など
予防法:マスク、手袋、手洗い、エプロン、うがい

日本では食中毒による集団発生が多く、感染した人が調理した食品や、十分加熱していない食品から感染する可能性があり、在宅療養者であっても十分感染する可能性がある病気の一つです。特に高温多湿の日本では、食中毒が多いため注意が必要です。

O-157など一部の病原体では、健康な若者でも致死的であり、基本的に感染した場合は入院管理が必要となります。疑わしい症状があれば、すぐに医師に報告することが大切です。

感染者が触れたドアノブやトイレの便器、洗面台などはアルコールや0.2%塩化便座ルコニウム液などで清拭をしっかりおこないましょう。血液や排泄物に汚染された部位は、次亜塩素酸ナトリウムで清拭をします。

4.最後に 油断大敵!再興・新興感染症の予防策

再興・新興感染症は、感染すると肝炎ウイルスやHIVなど根本的な治療がないものや、病原性大腸菌のように致死的なものが多いのが特徴です。在宅ケアに関わる人が二次感染を起こさないように、スタンダードプリコーションをしっかり行うことが大切です。

<参考>
Ys Square-腸管出血性大腸菌(O157など)について-
http://www.yoshida-pharm.com/2002/letter04/
Ys Homecare-在宅ケアにおける感染対策と消毒のポイント-
http://www.yoshida-homecare.com/point/08.html
感染症.com-内蔵(胃腸)系の疾患 腸管出血性大腸菌感染症-
http://www.kansenshou.com/infectious-diseases/type-of-infection/ehec/

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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