在宅ケアにおける標準予防策<手洗い・個人用保護具>|在宅医療と感染予防 第2回

無料メルマガ登録

標準予防策は、アメリカ疾病予防センター(CDC)が提唱したため、カタカナで「スタンダードプリコーション(標準予防策)」とも言われます。医療関係者であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、具体的にどんなことかと聞かれて正確に答えられるでしょうか?

 

ここからは3つのパートに分けて、在宅に関わる医療・介護の際に、在宅療養者の感染を未然に防ぐ予防に重点をおいた「スタンダードプリコーション」についておさらいをしていきます。

1.重要! スタンダードプリコーションはどんなことをするの?

具体的には、以下の項目が挙げられます。

1:手洗い
2:個人用保護具
手袋、マスク、ガウン(プラスチックエプロン)、フェイスシールド(ゴーグル)など
3:ケアに用いる機材の洗浄と消毒
4:感染性廃棄物の処理
5:環境の整備

これらの行動を意識して行うことで、感染源が感染経路を通って感受性宿主に感染するという流れ(特に感染経路の部分)を遮断することができます。

では、この項では上記の「1:手洗い」「2:個人用保護具」について詳しく見ていきましょう。

2.手洗いは「一患者一処置一手洗い」が基本!手洗いの大切さ

手洗いは最も基本的な感染予防法です。手洗いが必要な場面は、以下の5つです。

1:患者に接する前
2:無菌操作の前
3:体液・汚物の処理をした後
4:患者と接した後
5:患者周囲の環境と接した後

手洗いの方法をもう一度確認してください。

1:流水で洗い流す
2:石鹸を泡立てる
3:手のひらと指の間 → 手の甲と指の間 → 指先 → 親指 → 手首の順に10秒以上かけてしっかりと洗います。親指は包み込むようにしてひねり洗いする。
4:流水でしっかりすすぐ
5:ペーパータオルやエアドライヤーで乾燥させる

医療施設では簡易的にアルコール消毒を行う場合もありますが、ノロウイルスなど一部のウイルスや細菌、真菌には効果を発揮しないため、手洗いができるのであれば手洗いを勧めます。

石鹸には殺菌効果はありませんが、流水でしっかりすすぐことで、病原体を洗い流すことができます。在宅ケアでは洗面台にタオルが置いてあると思いますが、タオルには雑菌が多く含まれており、病原体が付着している可能性があるため、なるべく持参した使い捨てのペーパータオルを使用しましょう。

3.個人用保護具でしっかり予防を 患者・家族への説明も大事

個人用保護具としては、手袋とマスク、さらにケア中に体液や汚物に触れる場合はプラスチックエプロン(もしくはガウン)が標準装備となります。患者および患者家族の中には、手袋やエプロンを着用してケアをされることに抵抗を感じる方もいるため、事前に「患者(の家)に病原体を持ち込まない、患者(の家)から病原体を持ち出さない」ためにこれらの装備が必要であることをしっかり説明しておくことが大切です。

・手袋
無菌操作が必要な処置と、その他の処置とで手袋を使い分けます。注射や吸引チューブの交換、創処置などの無菌操作が必要な処置では滅菌手袋を使用し、気管内吸引、褥瘡処置、カニューレ交換、清拭などには清潔手袋を、器具の洗浄には実用手袋を用います。手袋を脱いだあとは、手洗いもしくは手指消毒を行いましょう。

・プラスチックエプロンもしくはガウン
患者の体液暴露の可能性がある場合は、必ずプラスチックエプロンを使用しましょう。また、患者自身や患者の体液・汚物のみならずベッドや机など患者周囲の環境にも病原体がいる可能性は否定できません。

在宅ケアでは、ケアの際に周囲の物と衣服が触れる機会がたくさんあるため、なるべくエプロンを使用することが望ましいです。

・マスク
通常のマスク、手術用マスク、フェイスシールド付きマスク、N95微粒子用マスクなどがあり、防御すべき粒子の大きさや状況によって使い分けます。インフルエンザや麻疹ウイルスなど病原体の感染力が強い感染症が疑われる場合は手術用マスクが進められます。

結核が疑われる場合では手術用マスクかN95微粒子用マスクを着用します。排菌している状態の結核感染が確定した場合は専門施設での隔離治療が必要となります。

HIVや肝炎ウイルスなどの感染症を持っている患者の体液暴露がある場合、ゴーグルやフェイスシールドつきマスクを使用する場合があります(それぞれの疾患については別項を参照)。

5.最後に 持ち込まない!持ち出さない!感染予防の基本のキ

今回は、スタンダードプリコーションの中でも、特に手洗いと個人用保護具について詳しくお伝えしました。スタンダード(標準)といっても、患者の状態、処置の内容によって細やかで柔軟な対応が必要です。在宅療養者の患者および患者家族に予防策の必要性を理解してもらえるよう、一つ一つの行動をしっかり理解し説明できるようにしましょう。

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

無料メルマガ登録

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」