在宅ケアにおける標準予防策<ケアに用いる器材と消毒>|在宅医療と感染予防 第3回

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このパートでは、スタンダードプリコーションにおけるケアに用いる器材と消毒について扱います。在宅ケアの処置において、吸引カテーテルや注射針などの器材を扱うことは少なくありません。医療器材が患者のどの部分に接するのかにより、予防策の取り方が大きく異なります。

血液に触れる器材は厳重な予防策が必要であり、正常な皮膚に接するものは通常の予防策で大丈夫です。粘膜に接するものはその中間となります。

1.クリティカル器具、セミクリティカル器具、ノンクリティカル器具の違いとは?

手術用メスと吸引カテーテル、注射針と聴診器では消毒が必要であっても消毒の仕方が違うのはなんとなく理解できますよね。医療器具の管理方法をより明確にするための分類の一つに、「クリティカル器具、セミクリティカル器具、ノンクリティカル器具」という分け方があります。

クリティカル器具は、皮下、腹腔、血管など本来無菌の場所に使用される器具のことです。
セミクリティカル器具は、粘膜あるいは創部などの正常ではない皮膚に接する器具のことです。
最後に、ノンクリティカル器具ですが、正常な皮膚と接触するのみの器具を指します。具体的には以下のような器材が挙げられます。

■クリティカル器具
・・・本来無菌の組織や血管に使用するもの
手術用器具、注射針、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具など

■セミクリティカル器具
・・・粘膜または正常ではない皮膚に使用するもの
気管内挿管チューブ、内視鏡、舌圧子、吸引カテーテルなど

■ノンクリティカル器具
・・・正常な皮膚に使用するもの
血圧測定器、聴診器、松葉杖、補聴器など(ベッド柵やテーブルなどの環境表面などを含めてノンクリティカル表面と表現されることもあります)

2.クリティカル器具の管理とは?

血管内や皮下は通常無菌のため、これらの部位に医療器具を使用する場合は、一番消毒水準が高い「滅菌」を行う必要があります。そのため日本では、クリティカル器具は基本的に医療従事者が扱います(インスリン注射など一部を除く)。

クリティカル器具は可能な限り滅菌済みのディスポーザブル製品を使用しますが、手術器具などディスポーザブルを使用できない場合は高圧蒸気法などを用いた滅菌で再利用します。
通常、在宅ケアで用いるのはディスポーザブル器具であり、開封するまでの器具は無菌と考えます。特に多い処置である注射針の取り扱い時には、創部のアルコール消毒および医療者側の手袋装着を怠ってはいけません。

3.セミクリティカル器具の管理とは?

喀痰をうまく排出できない場合に、吸引器と吸引カテーテルを使用して排出させる口腔内吸引、鼻腔内吸引および気管内吸引は在宅ケアで最も行われる処置の一つです。これらの器具は粘膜に接するためセミクリティカル器具に分類されます。吸引カテーテルはディスポーザブルが基本ですが、繰り返し再利用されているケースも少なくありません。なるべく無菌に近い状態にするために消毒薬につけて保管し、決まった期間で交換できるように必ず交換日を設定しましょう。

ネブライザーもよく使用される器材の一つですが、基本的に在宅療養者一人に専用の器材を用意しなければなりません。しかし、再利用せざるおえない場合、医療機関で滅菌処理を行いましょう。

4.ノンクリティカル器具の管理とは?

在宅療養者が正常な皮膚で接する器具や生活用品(衣服、寝具、食器など)に関しては、原則として消毒は必要ありません。しかし、補聴器や体温計(経口、経腸は除く)など、在宅ケアスタッフが同じ器材を他の在宅療養者にも使用する場合は使用前後にアルコール綿花で消毒しましょう。

5.最後に 接する部位で変わる在宅ケアで用いる器具の管理

今回は、使用する器具の管理を「クリティカル器具、セミクリティカル器具、ノンクリティカル器具」に分けてお伝えしました。在宅療養者のどの部分に器具が接するのかを考えることで、管理方法がシンプルに整理できると思います。管理手順が身につくまでは、自分でノートに手順をまとめたり、意識して一つ一つの動作を行うようにしましょう。

<参考>
Ys Square:病院感染、院内感染対策学術情報-III消毒対象物による消毒薬の選択-
http://www.yoshida-pharm.com/2012/text03_02/
Ys Square:Homecare-在宅ケアにおける感染対策と消毒のポイント-
http://www.yoshida-homecare.com/point/
一般社団法人日本感染症学会-消毒と滅菌の基礎と実際-
http://www.kansensho.or.jp/sisetunai/kosyu/qa02.html

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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