在宅ケアにおける標準予防策<感染性廃棄物・環境の整備>|在宅医療と感染予防 第4回

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スタンダードプリコーションでは、患者の血液や体液、便尿および使用器具は汚染されているものとして扱うと述べました。そのため、患者から発生する廃棄物は、人が感染する恐れのある病原体微生物が含まれている可能性があるとして扱う必要があります。また、適切に廃棄物管理を行うためには環境の整備も重要です。

このスタンダードプリコーション最後のパートでは、感染性廃棄物の管理および環境の整備について詳しくお伝えします。

感染性廃棄物かどうかの判断基準とは? 破棄基準が曖昧な日本

環境省の感染性廃棄物処理マニュアルでは、血液や注射針などの産業廃棄物、および包帯や脱脂綿などの一般廃棄物は、合わせて広義の「感染性廃棄物」として扱われており、「感染性廃棄物」かどうかを確認できる判断フローが記載されています。ここでは、在宅ケアに関連に絞って確認ポイントを以下にまとめます。以下に当てはまるものは全て感染性廃棄物となります。

◯感染性廃棄物のチェックポイント
形状を確認する
・血液および体液
・皮膚や組織など体の一部を含む
・血液および体液が付着している医療器材

感染症の種類
・感染症法の一類〜五類、新型インフルエンザなどの感染症、指定感染症および新興感染症に使用された排出物および器材

これらのことを考慮すると、広義の感染性廃棄物に当てはまるものが多いことに気がつくと思います。しかし、現状の問題として、市区町村で処理に関する基準が異なるなど在宅ケアにおけるこれらの廃棄物の扱いは非常に曖昧です。

例えば、リキャップをしている針は一般ゴミで捨てて良い地域もあれば、医療機関での破棄を義務付けているところもあるため、必ず該当地域の基準を確認しましょう。大事なことは、感染性廃棄物による感染(針刺しなど)という二次被害を防ぐことです。

廃棄物の処理方法とは?

廃棄物の「処理」とは、廃棄物が発生してから廃棄される(処分)までの一連の行為を指します。

在宅ケアでは、針のような鋭利なもの以外は基本的に無料で処分できる一般ゴミとして捨てて良いところがほとんどです(地域によって異なるため要確認)。医療機関や老人ホームに持ち帰ると感染性廃棄物や産業廃棄物として処理コストがかかるため、在宅ケアスタッフは基本的に針などの鋭利なものを除き、廃棄物を持ち帰らず、在宅療養者宅で処理をお願いするのが一般的だと思います。

この際に、廃棄物の処理を含めた在宅の環境整備が重要となります。

在宅ケアの環境整備

在宅ケアにおける居住環境は、天井や壁など通常在宅療養者やスタッフが直接触れることのない部分と、ベッド周囲など頻繁に接触する部位との大きく2つに分けて考える必要があります。

正常な皮膚に触れるものや、ベッドやベッドサイドのテーブル、衣服や食器などの生活用品は消毒の必要はなく、通常の清掃で大丈夫です。しかし、在宅療養者が特殊な感染症にかかっている場合や、血液や体液が付着する可能性がある部位に関しては、汚物をすぐに取り除き消毒を行いましょう。

針などの鋭利なものは貫通性のない瓶などの容器に保管し、医療機関に持ち帰る必要があります(地域の基準を要確認)。在宅療養者や家族がこの手順を行う場合は、初めに在宅ケアスタッフが手順を一緒に確認するのはもちろん、破棄しやすい場所に瓶やゴミ箱をセッティングするなどの工夫も大切です。また、使用しやすい位置に吸引チューブやネブライザーなど医療器材を置くスペースの確保も重要です。在宅ケアスタッフおよび療養者や家族の動線を考えたものの配置を意識しましょう。

最後に スタンダードプリコーションを意識し感染拡大を防ぐ

今回は3パートに分けてスタンダードプリコーションについて詳しくお伝えしましたが、理解が深まったでしょうか?

このパートでお伝えした在宅ケアでの感染性廃棄物の扱いについてですが、法律や基準が細かく制定されていないため、在宅ケアスタッフが非常に迷うことが多い点だと思います。廃棄に困った場合は個人で判断せず、医療機関はもちろん市区町村に相談したり、経験あるスタッフに相談し一つ一つのベストな対応策を決めていきましょう。

<参考>
環境省【廃棄物処理に基づく感染性廃棄物処理マニュアル】(PDF)
https://www.env.go.jp/recycle/misc/kansen-manual.pdf
徳島県看護協会【感染予防対策マニュアル】(PDF)
http://toku-na.jp/houmon/download/kansen_doc_09.pdf
医療安全推進者ネットワーク
http://www.medsafe.net/specialist/7nakamura.html
在宅ケアの為の住環境整備を目的とした医療、保健衛生福祉従事者のアプローチに関する研究(PDF)
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/BKK0001798.pdf?file_id=27341

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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