呼吸器感染症に関わる病原性微生物<インフルエンザなどの風邪症候群>|在宅医療と感染予防 第5回

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呼吸器は、声帯よりも上の上気道(鼻・咽頭・喉頭)と下気道(気管・気管支、肺)の大きく2つに分けられます。多くの呼吸器感染症は普通の風邪(感冒あるいは風邪症候群)であり上気道感染です。しかし、体の抵抗力が低い在宅療養者では風邪が長引き、下気道感染に広がり重症化することも少なくありません。

ここでは、在宅ケアで問題となる主な呼吸器病原体について2回に分けて詳しくお伝えします。

1.インフルエンザウイルスの対応策は?

感染経路:飛沫感染・接触感染
潜伏期間:1〜3日
症状:高熱、咳嗽、咽頭痛、嘔気・嘔吐・下痢(一部で腹部症状あり)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感など
予防法:予防接種、マスク、手袋、手洗い・うがい
治療法:対症療法、抗ウイルス薬

毎年空気が乾燥する冬に大流行する一般的な風邪のウイルスです。昔は、インフルエンザウイルスで数百万人が亡くなるほど脅威のウイルスでした。現在でも、免疫力の低下した高齢者では肺炎や慢性疾患の増悪などから死に至ることもあり、インフルエンザ関連の死亡は毎年1万人で、その多くは高齢者です。また、新型インフルエンザウイルスであり多数の死者を出した高病原性鳥インフルエンザにも注意が必要です。

ほとんど外出しない在宅療養者からインフルエンザウイルスが自然発生することはないため、家族や在宅ケアに関わる医療従事者からの持ち込みという外因的な要素が主な感染経路となります。

日本では、在宅ケアに関わるスタッフのインフルエンザ予防接種率は高く、ほぼ全ての施設で実施されていますが、在宅療養者の家族にも予防接種の重要性を伝えていく必要があります。

さらに、予防接種はインフルエンザ感染を完全に防ぐものではありません。そのため、感染が流行している時期は、電車や医療施設など多くの人と接する場所でのマスクの着用が勧められます。身近な人がインフルエンザ感染を起こした場合は、抗ウイルス薬予防投与も受けられます。

2.風邪症候群を起こすウイルス・細菌の対応策は?

代表的なウイルス:アデノウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、コロナウイルスなど約200種類
代表的な細菌:黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、モラクセラ・カタラーリス、肺炎球菌、インフルエンザ菌など
感染経路:飛沫感染・接触感染
潜伏期間:1〜2日
症状:高熱、咳嗽、咽頭痛、嘔気・嘔吐・下痢(一部で腹部症状あり)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感など
予防法:マスク、手袋、手洗い・うがい
治療法:対症療法

どのウイルスも非常に一般的なものであり、インフルエンザ以外の感冒を引き起こす病気の総称を「風邪症候群」といいます。成人では年に3回程度、子供では年7回程度かかるとされ、特に学校で集団生活をする子供がいる家庭では、子供から親に飛沫・接触感染で病原体が移ることがしばしばあるため注意が必要です。

主に、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)に炎症を起こすものが多く、炎症が起きる部位によって「鼻炎・咽頭炎・喉頭炎」などの病名がつきます。健康な人であれば、約2週間で症状は改善するのですが、免疫力の低下した在宅療養者の場合、炎症が長引き、ウイルス性の風邪の後に、細菌が感染をして「副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、中耳炎」などの細菌とウイルスの混合感染を引き起こし、重症化することがあります。粘稠度の高い「黄色の痰や鼻汁」が細菌感染の特徴とされます。

細菌感染を起こす菌のほとんどが、もともと鼻腔や咽喉頭にいる常在菌であるため完全にこれらの菌を排除することは困難です。しかし、風邪を引き起こすウイルスに関しては、在宅ケアに関わる人が持ち込まないことが大切です。感染経路は飛沫および接触感染なので、マスク、手袋、手洗い・うがいといった標準予防策で予防しましょう。また、肺炎球菌に関しては、免疫力が低下した人では肺炎球菌性肺炎を起こし、致死率が高いことから、在宅療養者に対して積極的な予防接種が勧められています。

3.最後に 標準予防策と予防注射の徹底で防ぐ呼吸器感染症

今回は、在宅ケアで注意するべき、主要な呼吸器感染症の病原体についてお伝えしました。いずれの感染源に対しても、スタンダードプリコーションが有効であり、さらに予防接種可能なインフルエンザ、および次回の項で詳しくお伝えする麻疹・流行性耳下腺炎・百日咳に関しても予防接種を徹底することで、感染源と感染経路を断つことが可能となります。

在宅ケアスタッフが在宅療養者に、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン接種の必要性を説明し、受けるように促していくことも大切です。

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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