呼吸器感染症に関わる病原性微生物<麻疹・マイコプラズマ・風疹など>|在宅医療と感染予防 第6回

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ここでは、前回お伝えした病原体(病原性微生物・インフルエンザなど)よりもややマイナーなものの、家族や在宅ケアスタッフによる病原体の持ち込みにより、在宅療養者が感染する可能性のある”呼吸器感染症”についてお伝えします。特に、感染力の高い麻疹は再興感染症として政府が警告を鳴らしており、在宅ケアスタッフが対応する可能性がある病気の一つです。

1.麻疹(ましん)の対応策は?

感染経路:飛沫核感染・飛沫感染・接触感染
潜伏期間:7〜14日程度
症状:高熱、咳嗽、咽頭痛、嘔気・嘔吐・下痢(一部で腹部症状あり)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感など
予防法:予防接種、マスク、手袋、手洗い・うがい
治療法:対症療法

俗称では「はしか」といわれる麻疹ですが、予防接種の徹底により数が減少し、一時期ほとんど罹る人がいなくなりました。しかし、予防接種の無い時代、麻疹は致死率が高い病気として恐れられていた病気の一つでした。

麻疹ウイルスは接触・飛沫感染に加え、飛沫核(空気)感染もする、非常に感染力の高い病原体であり、患者の近くに予防接種を受けていない麻疹の免疫がない人がいた場合、約90%の確率で感染するとされます。

感染は、鼻や咽喉に麻疹ウイルスが付着し、侵入・増殖することで感染が始まります。感染数日後に、鼻汁・咳嗽といった前駆症状が現れ、口腔内に特徴的なコプリック斑が現れます。その後発疹が出現するまでには約2週間かかります。
前駆症状が出現した頃から発疹後数日間が最も他の人への感染力が強いとされますが、その後数週間排ウイルス効果があるのではないかともいわれているため、身近な人に麻疹罹患者がいたり、学校や施設で麻疹の流行している場合は標準予防策はもちろん、家族やスタッフは感染源にむやみに近づかないよう細心の注意を払う必要があります。

予防接種は、受けていない人はもちろん子供の頃に受けた人も、再度受けることが推奨されています。予防接種では終生免疫(免疫効果が一生持続すること)を獲得できないことが明らかになったからです。最近また、再興感染症として患者数が増加しており、成人の初感染では重症化することから、絶対に外から持ち込まないよう注意しましょう。

2.マイコプラズマの対応策は?

感染経路:飛沫感染・接触感染
潜伏期間:1〜3週間
症状:高熱、咳嗽、咽頭痛、頭痛、全身倦怠感など
予防法:マスク、手袋、手洗い・うがい
治療法:対症療法、抗菌薬(症状改善目的)

4年に1回大流行を起こす肺炎であることから、俗称「オリンピック肺炎」とも言われています。乾いた咳が長く続くため、主に感染者の咳によって周囲の人へ感染が拡大します。抗菌薬(マクロライド系)は気管支の線毛運動を活発にして、喀痰の排出を促すなどの症状改善効果が期待されるため処方されますが、基本的には対症療法となります。

高齢者のマイコプラズマ感染割合は約5%程度と高くありませんが、肺炎を起こすと有効な治療法がないため時に重症化することがあります。在宅ケアに携わる者は、スタンダードプリコーションによる感染予防が基本です。マイコプラズマが流行している時はなるべく人ごみをさけ、マスクを着用することも有効です。

3.その他 百日咳・流行性耳下腺炎・風疹の対応策は?

感染経路:飛沫感染・接触感染
潜伏期間:数日〜2週間
症状:高熱、咳嗽、咽頭痛、頭痛、全身倦怠感など
予防法:マスク、手袋、手洗い・うがい
治療法:対症療法

いずれも、飛沫・接触感染により感染します。在宅療養者が感染する可能性が低い疾患とはなりますが、毎年一定の割合で患者が発生しているため、家族や在宅ケアに関わるスタッフによる病原体の持ち込みには注意が必要です。

また、いずれも予防接種を受けることができます。大きな施設に属する医療従事者の場合は、定期的に麻疹・風疹などの抗体価確認が行われることが多いのですが、全ての施設で行われているわけではありません。子供の頃に予防接種を受けていても抗体価が低下していることもあるため、政府は麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)の再接種を推奨しています。在宅療養者のケアにあたる人は、定期的に抗体価を確認しましょう。

4.最後に スタンダードプリコーションと予防注射の大切さ

2回に分けて呼吸器感染症についてお送りしましたが、いかがでしたか?

今回の項では、インフルエンザほどメジャーではないものの、感染力が強く感染すると重症化する可能性がある病気に関してお伝えしました。これらのほとんどが、予防接種が有効であることが理解していただけたと思います。集団感染により子供が感染し、二次的に家庭内感染を起こすケースが多いため、特に子供がいる在宅ケアスタッフは、十分な注意が必要です。

※結核については再興感染症として別項で扱います。

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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