在宅ケアにおける皮膚感染症<疥癬・白癬>|在宅医療と感染予防 第8回

皮膚は微生物の侵入から守るという重要なバリアの役割を果たしており、正常な働きができるようになるべく清潔に保つ必要があります。しかし、在宅介護者では毎日の清拭や衣服・寝具の交換が困難なことも少なくありません。

ここでは、皮膚感染症の中でも頻度が多く、在宅ケアで問題となる”疥癬と白癬”についてお伝えします。

1.疥癬の対応策は? 感染拡大には注意が必要!

感染経路:接触感染、感染者の使用した衣服やタオルなどから間接的に感染
潜伏期間:数週間〜
症状:掻痒、発赤など
予防法:手袋、手洗い、エプロン
治療:硫黄剤、安息香酸ベンジル、クロタミトンなど

疥癬は、ヒゼンダニというダニによる皮膚感染症です。ノルウェー型(角化型)と通常型があり、普通の疥癬では一人につき1,000匹程度が寄生しているのに対して、ノルウェー型は100〜200万匹程度といわれ、非常に感染力が強いため、注意が必要です。落屑(フケ)も感染源となるため、部屋はこまめに掃除機をかけ、衣類やタオルなどを共有しないように注意しましょう。

指間部や手のひらに好んで住み着き、疥癬トンネルという虫が通った後の線が見えることがあります。しかし、決まった生息場所はなく、全身の皮膚の角層内もしくは表面すべてが生息場所となります。寝たきりの療養者に多く、加齢や薬剤による免疫の低下などがあると発症しやすいとされます。

しばしば老人ホームでの集団感染が報告されており、老人ホームから搬送された患者が持ち込んだ疥癬による医療施設内での集団発生もよく生じています。在宅ケアで疥癬が発覚した場合には、感染経路を遮断するためにも家族含めケアにあたる人全てが皮膚科を受診する必要があります。また、無防備な状態で患者と接触した後に感染が発覚した場合は、帰宅後、すぐに入浴し、着用していた衣服全てを洗濯しましょう。

ケアにあたるスタッフは、明らかな処置や感染性廃棄物に触れるとき以外、手袋の装着をしていない人が多いと思います。しかし、認知症の患者など、自分の状況を説明できない場合は症状からの発見は難しく、気づくとスタッフが疥癬を媒介して集団感染をおこすことが少なくありません。ケアの際には、皮膚感染症も念頭に置いてスタンダードプリコーションを行うとともに、しっかり患者の身体観察を行いましょう。

2.白癬の対応策は? ほっておくと危険なことも

感染経路:接触感染、感染者の使用した衣服やタオルなどから間接的に感染
潜伏期間:数週間〜
症状:掻痒など
予防法:手袋、手洗い
治療:抗真菌薬

白癬は老若男女問はず、日本では非常にメジャーな病気の一つであり、毎日の入浴で足を清潔に保つことが難しい在宅療養者ではよく見かけます。

足白癬だけでなく、白癬菌は皮膚全体に感染するため、感染者の皮膚や衣服、寝具に触れる際には手袋を装着したほうがよいでしょう。家族には、感染者の使用したタオルを共有しないよう、また、部屋や脱衣所な落屑がある場所はこまめに掃除するよう伝えましょう。

白癬が進行して、めくれた皮膚から二次感染を起こし敗血症を引き起こすことが稀にながらあるため、白癬患者のケア時には白癬の状態が増悪していないか確認することも大切です。

3.最後に 皮膚感染症予防はスタンダードプリコーションと身体観察をしっかりと

疥癬や白癬といった皮膚感染症は意識してみれば目に付きやすい所に病変があるにもかかわらず、患者が自分の症状を伝えられず見逃されていることが多いという特徴があります。知らない間に、ケアに関わる人が病原体を媒介していることも少なくないため、日頃からケアにあたる際に療養者および自分の身体観察を行うように習慣づけることが大切です。

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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