在宅ケアにおける薬剤耐性菌|在宅医療と感染予防 第9回

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結核、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など感染症を引き起こす微生物が変異して、既存の抗生物質が効かなくなる薬剤耐性を獲得することがあります。健康な人には重篤な感染症を引き起こす可能性は低いため、スタンダードプリコーションで十分対応できます。

1.多剤耐性結核菌への対応策とは

東南アジアやアフリカなど結核の多い地域では、薬剤耐性を獲得した結核菌が問題となっています。日本においても、結核患者が適切に内服を行わなかった場合、治療中に結核菌が変異して多剤耐性結核菌に変異することがあります。

日本では結核自体が他のアジアに比べて少ないため、未治療患者での多剤耐性結核の比率は約1%と少ないものの、感染患者(排菌なし)に接する場合にはスタンダードプリコーションを適切に行うとともに、治療が終了するまで薬物治療が適切に行われているかを随時確認することが大切です。

肺結核で排菌している場合は、専門の病院に入院となるため接する機会は少ないと思いますが、万が一排菌していた患者と接触していることが判明した場合には、早期に医療機関を受診しましょう。

2.その他の薬剤耐性菌の対応策とは

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)は医療施設で比較的件数が多い薬剤耐性菌です。これらの菌に関しては、健康な人が感染しても発症することはないため、肝炎ウイルスやHIVといった血液感染を起こす病原体と比較するとマイルドな菌であり、スタンダードプリコーションの対応で大丈夫です。

免疫の低下した患者では感染症を発症することがあり、抗菌薬が効きにくいため治療が長引くもしくは重篤化することがあります。そのため医療従事者が菌を在宅療養者間で媒介しないように注意する必要があります。

さらに、これらの菌は患者が使用する衣服やドアノブなどの部屋にも付着しており、間接的に感染する可能性があるため、汚染された手指で直接ものを食べたり、目や鼻口などを触らないように注意しましょう。一度体内に耐性菌が住み着くと除菌が困難であり、将来感染症を起こした時に困ることになります。残念ながら、医療患者にしばしばMRSAの副鼻腔炎、VREの尿路感染症などを見かけます。

3.最後に 耐性菌を持ち込まない 持ち出さない

若い看護師でも、尿路感染症などで受診し細菌培養をすると耐性菌による感染が判明することが少なくありません。他の在宅療養者への菌の持ち込みを防止するのはもちろん、自分や健康のためにも、絶対に感染者宅から耐性菌を持ち出さないことが大切です。

【訪問看護の感染予防(全10回)】
1.標準予防策
■ 訪問看護の感染予防 第1回|<はじめに>在宅ケアにおける感染予防の大切さ
■ 訪問看護の感染予防 第2回|在宅ケアにおける標準予防策 手洗い・個人用保護具編
■ 訪問看護の感染予防 第3回|在宅ケアにおける標準予防策 ケアに用いる器材と消毒編
■ 訪問看護の感染予防 第4回|在宅ケアにおける標準予防策 感染性廃棄物・環境の整備編
2.呼吸器感染症
■ 訪問看護の感染予防 第5回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物・インフルエンザなどの風邪症候群編
■ 訪問看護の感染予防 第6回|呼吸器感染症に関わる病原性微生物 麻疹・マイコプラズマ・風疹など編
3.感染症胃腸炎
■ 訪問看護の感染予防 第7回|在宅ケアにおける感染性胃腸炎 ノロウイルス
4.皮膚感染症
■ 訪問看護の感染予防 第8回|在宅ケアにおける皮膚感染症 疥癬・白癬
5.薬剤耐性菌
■ 訪問看護の感染予防 第9回|在宅ケアにおける薬剤耐性菌
6.新興・再興感染症
■ 訪問看護の感染予防 第10回|在宅ケアで問題となる新興感染症と再興感染症

writer
めぐみ

日本で医師として働いていたものの、夫の仕事の関係で一時的にイギリスに滞在中。元医師の視点で医療事情、体験談をお伝えしていきます。

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