チーム医療推進協議会元代表・中央社会保険医療協議会元専門委員の北村善明氏による、これだけは押さえておきたい厚労省発信情報の解説コラムです。
今回のテーマは、「中医協で議論された在宅医療(その3)~訪問診療~」についてのニュースです。
平成29年11月8日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、平成30年度診療報酬改定に向けた議論の一つの「在宅医療」における「訪問診療」が議論されました。
平成29年11月8日に開催された中医協では、平成30年度の診療報酬改定に向けた議論として「在宅医療(その3)~訪問診療~」が取り上げられました。
医療と介護の連携訪問診療として、
- 複数医療機関による訪問診療
- 往診の状況についての資料
を示し、論点についての提案が示されました。
① 複数医療機関による訪問診療について
【課題】
《在宅で療養する患者の状況》
- 患者が、複数の傷病に罹患している場合等に、別の保険医療機関の医師による訪問診療が必要となる事例がある。このような場合、二人目の医師は在宅患者訪問診療料が算定できない取り扱いとなっている。
- 訪問診療を行っている診療所について、主たる診療科別の実施状況を見ると、内科の他に、外科、泌尿器科、精神科が、その他の診療科と比較して、多い。
- 在宅で療養する患者は、複数の疾患に罹患している患者が多い。
《地域の取り組み》 - 在宅医療を実施していない医療機関について、その理由をみると、スタッフがいない、時間的余裕がない、夜間の対応等身体 的な負担が大きいといった回答であった。
- 地域の医師会が中心となり、在宅医師によるグループ診療を支援する事業を実施している地域や、複数の医療機関の医師が連携して、24時間対応を含めた診療体制を構築している事例がある。
【論点】
- 在宅における療養計画に基づき、主として在宅医療を担う医療機関の医師が、患者・家族の同意の下で、他の医療機関に当該患家への訪問診療を依頼し、当該他の医療機関がそれを実施した場合、診療報酬上の評価を設けてはどうか。
- 地域医師会等の協力により、在支診以外の医療機関が他の医療機関と連携して、24時間対応を含めた在宅医療体制を構築し、訪問診療を提供している場合には、一定の評価を検討してはどうか。
② 往診の状況ついて
【課題】
《緊急加算》
- 往診料の緊急加算は、患者又は現にその看護に当たっている者からの訴えにより、速やかに往診しなければならないと判断した場合をいい、具体的には、急性心筋梗塞、脳血管障害、急性腹症等が予想される場合に算定できる取扱いとなっている。
- 救急医療の提供体制が一定程度整備されている地域では、実際に、そのような病態の患者が発生した場合には、直接、救急医療機関を受診することが想定される。
- 緊急加算を算定している割合は、往診料を算定回数のうち、約5%であった。
《往診料の取り扱い》
- 訪問サービスにおいて、患者の状態にかかわらず、患者が往診不要の意思表示をしなければ、医師に往診を求めるという契約を行い、往診料を算定している事例がある。
【論点】
- 往診料の緊急加算の算定要件とされている病態については、医療提供に係る実態を踏まえて、対象患者の要件を見直してはどうか。
- 患家の求めに応じて患家に赴き診療を行った場合に算定できるとの往診料の取扱いについて、「患者の求め」の解釈に幅があることから、より適切な運用につながるよう、要件を明確化してはどうか。
- 末期の悪性腫瘍の在宅患者について、患者の状態の変化に伴い適切なサービス提供を可能とする観点から、医療機関とケアマネジャーとの間の情報共有・連携等を、在宅時医学総合管理料等の要件としてはどうか。
「訪問診療」に関する事務局提案資料は、下記のURLからダウンロードできます。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184390.pdf
writer


北村 善明
チーム医療推進協議会前代表・中央社会保険医療協議会元専門委員