ココメディカマガジン編集部が気になる医療・介護業界のニュースをピックアップする「ニュース振り返り」。7月前半は、最新の国民生活基礎調査結果が公表され、高齢者世帯が過去最多となったことが明らかに。そのほかに医師の宿日直の基準が70年ぶりに見直されるなどのニュースをご紹介します。それでは早速振り返りましょう!
高齢者世帯、過去最高の1406万3千世帯にー国民生活基礎調査が公表(7/2)
厚生労働省は、2018年の国民生活基礎調査の結果を公表しました。
「高齢者世帯」については、全世帯の27.6%である1406万3千世帯となり、世帯数、割合とも過去最高となりました。
国民生活基礎調査は、保健、医療、福祉、年金、所得等国民生活の基礎的事項を調査するもので、1986年から3年ごとに大規模調査を、中間の年に簡易調査を実施しています。今回の調査は中間の年に該当し、簡易調査となっています。
2018年6月1日現在の全国の世帯総数は、5099万1千世帯。
このうち、65 歳以上の者のいる世帯は 2492万7千世帯(全世帯の48.9%)、65 歳以上の高齢者のみ、または65 歳以上の人と 18 歳未満の未婚の人で構成される「高齢者世帯」については1406万3千世帯(全世帯の27.6%)となりました。
高齢者世帯については、世帯数、割合とも過去最高となっています。
また、高齢者世帯の世帯構造をみると、最多となったのは「単独世帯」で高齢者世帯の 48.6%(683万世帯)を占めることが明らかに。
性別ごとでは、男性が32.6%、女性は67.4%と、特に女性の独居高齢者が多いことがわかります。
つづいて、所得についてご紹介します。
2017年の高齢者世帯の平均所得金額は334.9万円で、前年の318.6万円から5%ほど増加しています。
所得の内訳としては、「公的年金・恩給」が61.1%、「稼働所得」については25.4%で、稼働所得の割合が増えています。
働く高齢者の増加がこれに反映されていると考えられます。一方、「公的年金・恩給のみの世帯」については51.1%と引き続き過半数を占めることも明らかになりました。
生活意識については、「高齢者世帯」が55.1%が「苦しい」と回答。所得の増加に反して、生活が苦しいと感じている世帯が微増する結果となりました。
厚生労働省:平成30年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/index.html
地域密着型デイサービス事業者、45%が赤字経営(6/28)
福祉医療機構は、2017年度の通所介護事業所(老人デイサービスセンター)の経営状況についての分析結果を報告しました。
「地域密着型」については全体の45.5%が赤字で、2016年度と比較しわずかに減少したものの、依然として高い状況が続いています。
今回経営状況が報告されたのは、全国4238の通所介護事業者で、地域密着型(773件)、通常規模型(3050件)、大規模型(Ⅰ)(272件)、大規模型(Ⅱ)(143件)が対象となっています。
事業規模ごとに経営状況をみていくと、赤字となった事業者は地域密着型が最多の45.5%。前年度の50.6%と比較して減少したものの、引き続き厳しい経営状況の事業者が多いことが明らかになりました。
また、通常規模型(35.1%)、大規模型(Ⅰ)(15.8%)、大規模型(Ⅱ)(15.4%)と、規模が大きくなるほど赤字の事業者が減少していくことがわかります。
要因として考えられるのは、定員に対する人件費の高さ。
地域密着型は、定員数が18人以下と少ないために、定員数に対する従業員数の割合が高くなり、人件費がかさむことが背景にあると考えられます。
なお、事業規模による経営状況の差については、2018年度の介護報酬改定によって、通常規模型の一部のサービス提供時間と、大規模型がマイナス改定となったことから、今後縮小する見込みであるとのことです。
また、地域密着型のうち、赤字の事業者については、黒字の事業者と比較して人件費が高いほか、年間営業日数で約10日(赤字事業者:287.3日、黒字事業者:297.2日)、利用率は約9ポイントほど(赤字事業者:61.5%、黒字事業者:70.8%)低くなっていることが明らかに。
利用者1人の1日当たりサービス活動収益についても、 黒字施設の方が 385 円高く(赤字事業者:9,537円、黒字事業者:9,922円)、年間のサービス活動収益額では 657.5万円もの差が生じていることがわかりました。
独立行政法人福祉医療機構:平成29年度 通所介護事業所の経営状況について
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/190628_No002.pdf
医師等の宿日直勤務許可基準、70年ぶりに見直し(7/1)
厚生労働省は、1日に医師、看護師等の宿日直許可基準についての通知を発出しました。
1949年に許可基準が発出されて以来、70年ぶりの見直しとなりましたが、旧許可基準を踏襲しながらも、宿日直とみなす要件や業務の範囲などの具体的な見解が示された形となりました。
今回見直された医師等の宿日直勤務を認める要件については、3月にまとめられた「医師の働き方改革に関する検討会報告書」で、宿日直についての要件を現状に合わせたものに見直す必要があると明言されたことがきっかけとなっています。
今回示された宿日直の要件をご紹介します。
まず、宿直の場合は夜に十分な睡眠がとり得るものである場合であり、かつ次の(1)から(3)の全ての要件を満たす必要があります。
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
- 従事する業務は、一般的な宿日直の業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。
- 上記⑴、⑵以外に、一般的な宿日直の許可の際の条件を満たしていること。
そして、宿日直で従事することのできる業務について、具体的な内容が今回の通知で新たに示されました。
以下が(2)に該当する業務となります。
◎⑵に該当する業務
- 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ 患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例え ば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
- 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、 少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
また、通常の勤務時間と同様の業務については、発生頻度が「まれ」か「常態」であるかが、宿日直許可の判断ポイントとなります。発生頻度については、宿日直に対応する医師等の数と、担当する患者数、夜間・休日に来院する急病患者の発生率などから「常態」と判断された場合は、宿日直とは認められないとのことです。
今回の通知では、ほかに診療科や職種、時間帯、業務の種類などを限って宿日直の許可を与えることができることも示されました。
医師以外、医師の深夜時間帯のみ、病棟の宿日直業務のみ、といった限定的な許可も可能となります。
医師、看護師等の宿日直許可基準について