【ニュース振り返り】迷惑行為、医療費不払い…診察拒否が正当化される事例が明らかに―2019年7月後半のニュース3選

ココメディカマガジン編集部が気になる医療・介護業界のニュースをピックアップする「ニュース振り返り」。7月後半は、医師の応召義務の解釈についての研究結果が報告されたほか、最新の平均寿命の統計が公表されました。それでは早速振り返りましょう!

迷惑行為、医療費不払い…診察拒否が正当化される事例が明らかに(7/20)

厚生労働省は、18日の医療部会で、医師の診察における「応召義務」の解釈について、研究結果を報告しました。
緊急時以外の対応が示されたほか、過去の裁判例を基に、迷惑行為医療費不払いなど、診察拒否が正当化される個別事例が明らかになりました。

医師法第19条では、「診療の求めがあれば診療拒否をしてはならない」ことが規定されています。
応召義務と呼ばれるこの規定ですが、現在は刑罰は設けられておらず、医師の職業倫理・規範として機能しています。
しかし、解釈次第では、患者が不要不急の診察を医師に強要するケースや、診療を拒否したことによって訴訟につながるケースも発生し得るほか、必要以上の長時間労働につながる恐れがあります。

厚生労働省は、有識者による研究班を設置し、医師法上の応召義務の解釈について研究を進めていました。
今回の会議では昨年度の研究結果の報告として、診療に応じる必要があるケース、不要なケースが整理されたほか、個別事例の解釈が提示されました。

診療に応じる必要があるか否か、判断基準となるのは次の3点です。

①緊急対応が必要であるか(病状の深刻度)

②診療時間内・勤務時間内であるか

③患者と医療機関・医師の信頼関係

最も重要な要素であるのは、「①緊急対応が必要であるか(病状の深刻度)」です。必要な場合、不要な場合でそれぞれ見ていきましょう。

・緊急対応が必要な場合

診療時間内であれば、診療を行うことが原則です。
診療拒否した場合にも正当性が認められるのは、医師の専門性や設備状況を考慮したが対応が難しく、他の医師・医療機関での代替診療が不可能で事実上診療が不可能な場合など、著しく限定されたケースのみとなります。

また、診療時間外の場合は、必要な応急処置(心肺蘇生法など)をとるべきではありますが、原則、「公法上・私法上の責任に問われることはない」と示されています。

・緊急対応の必要がない(病状が深刻でない)場合

診療時間内である場合、原則として必要な医療を提供する必要があります。
ただし、医師の専門性や、設備状況、他の医療機関や医師による医療提供の可能性のほか、「③患者と医療機関・医師の信頼関係」なども加味して、緊急時よりも緩やかに判断することが認められました。

診療時間外の場合については、即座に対応する必要はなく、診療せずとも問題はありませんが、時間内の受診を依頼する、診察可能な他の診療所・病院などの紹介をするといった対応をとることが望ましいです。

続いて、個別事例の解釈として以下の4事例が示されました。

①患者の迷惑行為

診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続けるなど、過去の診療行為で発生した迷惑行為によって、診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、診療を行わないことが正当化されます。

②医療費不払い

支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合などには、診療しないことが正当化されます。
過去に未払いがあったというだけでは、正当化されません。

③入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院など

医学的に入院の継続が必要ない場合、通院治療等で対応すれば足りるため、退院させることは正当化されます。
病状に応じて大学病院などの高度な医療機関から地域の医療機関を紹介、転院を依頼・実施するなども原則として正当化されます。

④差別的な取扱い

患者の年齢、性別、人種・国籍、宗教などのみを理由に診療しないことは正当化されません。ただし、言語が通じない、宗教上の理由などにより、結果として診療行為そのものが著しく困難である場合にはこの限りではありません。

特定の感染症への感染など合理性の認められない理由のみに基づき診療しないことは正当化されませんが、1類・2類感染症などにり患している、またはその疑いのある患者についてはこの限りではありません。

厚生労働省:第67回社会保障審議会医療部会「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究について」

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000529089.pdf

ナース・プラクティショナーの活動によって医療の質が向上!日本看護協会、活動成果を報告(7/30)

日本看護協会は、ナース・プラクティショナー(NP)教育課程修了者の活動成果についての報告書を公表しました。
NPが医療・介護の場で活動することで、訪問看護での救急外来受診や予定外入院の減少、病棟での平均在院日数の短縮や退院割合の増加、ICU滞在日数の短縮など、様々な効果が表れることが明らかになりました。

NPは、1960年代のアメリカで誕生した看護の公的資格のことで、医師の指示がなくとも一定レベルの診断や治療などを行うことが認められています。
現在、アメリカ以外でもカナダ、オーストラリアなど様々な地域で導入されており、NPの介入によって、医療へのアクセスの改善や重症化予防、高い患者満足度を達成できるなどの成果が現れています。

現在日本ではNP制度は導入されていませんが、2008年から一部の大学院ではNP教育課程での教育が実施されており、2019年4月時点で参加校は10校、修了者は400名に上ります。
今回の報告は、NP教育課程の修了者が活動する訪問看護ステーション、介護老人保健施設、病院の6施設で、NPの役割や活動内容、利用者への影響を調査し、事例をまとめたものとなります。

一例をご紹介します。
国立病院機構長崎医療センターでは、医師群と比較しNP教育課程の修了生群の方が病棟の平均在院日数が短くなった(医師群:43.6日、NP教育課程修了者群:30.1日)ほか、退院の割合も高くなっています(医師群23.3%、NP教育課程修了者群 50.6%)。
そのほかに、不在がちな医師と、医療ソーシャルワーカーなど他職種との連携が改善されたことも報告されています。

ただし、検査や薬剤使用については医師の指示が必要であるため、タイムリーに対応できず重症化してしまうケースがみられるなど、NPでは対応しきれない課題も明らかになったとのことです。

NPについては、医師の働き方改革が推し進められる中、タスクシフティングの一貫としても活用が検討されています。

公益財団法人日本看護協会:2018年度 NP教育課程修了者の活動成果に関するエビデンス構築 パイロット事業 報告

https://www.nurse.or.jp/nursing/np_system/pdf/report.pdf

平均寿命、男女とも過去最高を更新―平成30年度簡易生命表を公表(7/30)

厚生労働省は、30日に平成30年度(2018年度)の簡易生命表を公表しました。平均寿命について、男性は 81.25 年、女性は 87.32 年と、前年より男性は0.16年、女性は0.05年上回ることが明らかになりました。
また、平均寿命については、男性、女性とも過去最長を更新しています。

平均寿命が延伸した要因について、厚労省は、悪性新生物<腫瘍>、心疾患、脳血管疾患、肺炎などの死因による死亡率が低下したことによると分析しています。

また、平均寿命の国際比較についてもまとめられています。
国ごとに作成方法が異なることから厳密な比較は困難とのことですが、日本は男性が3位(1位:香港、2位:スイス)、女性が2位(1位:香港、3位:スペイン)となりました。

簡易生命表は、1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定した場合に、各年齢の1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものです。なお、平均寿命は、0歳の平均余命を指しています。

厚生労働省:平成30年簡易生命表の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/index.html

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