口腔内の細菌について知っておくべき事実|在宅医療と口腔ケア(第2回)

口の中の汚れを生み出す最大の原因は、500種類以上・1mgの中に細菌が約10億個にも及ぶ細菌です。

では、その細菌を全てなくすことで、高齢者を危険に晒す誤嚥性肺炎を予防することができるのでしょうか?今回は口腔内の細菌について紐解いてみましょう。

 

口の中の汚れとは?

口の中の汚れの代表が、「歯垢」もしくは「プラーク」です。この汚れは、1mgの中に約10億個もの細菌がいるために生まれると言われています。その他、口腔内に残る食べ物の残り物、痰などの乾燥による汚れもあります。これらの汚れは、全て歯ブラシなどの清掃用具にて除去することが可能です。

歯垢(プラーク)が除去しきれず、唾液成分と反応を起こし、石灰化したものが歯石となります。歯垢が残ったまま放置すると、個人差もありますが2〜3日で石灰化が始まり、やがて歯石へと変化して歯ブラシでは除去しきれなくなってしまいます。歯石になってしまうと表面がデコボコしているため細菌の温床となりやすく、肺炎などの合併症を引き起こす原因となります。歯石となってしまった場合は、歯科医院で除去してもらわなければなりません。

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▲下の歯に歯石の塊がついてしまったケース

 

口の中で汚れが残りやすい場所は?

歯垢が残りやすいのは、歯と歯肉の境目である歯間部、および歯と歯肉の境目です。食べ物の残り物は、歯と頬の間に溜まりやすい傾向があります。加齢などにより、口周りの筋肉が飲み込みの際にあまり動かなくなると、食べ物の残り物が残ることが多くなります。

乾燥した痰の多くは、上顎の粘膜に張り付いています。無理やり剥がしてしまうと、粘膜も一緒に剥がれてしまい出血することがあります。

また、舌の上も汚れが付着しやすい部位です。その汚れを「舌苔(ぜったい)」と呼びます。

舌苔が厚くなると1mm以上になるケースもあります。舌には、味を司る味蕾(みらい)という感覚器官があります。舌苔が多くなると、舌の上の味蕾(みらい)に蓋をしてしまい、味がわかりにくくなってしまいます。

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▲粘膜と頬の間に食べ物の残り物が残っている状態

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▲歯間部全体的に汚れがついているケース

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▲舌苔で表目が覆われてしまったケース

 

口腔内の汚れを放置すると、こんなリスクが!

口の中の汚れの正体は、細菌の塊です。汚れが口の粘膜に付着した状態で放置すると炎症が起こりやすくなります。炎症がさらに進行すると、自然に血が出てしまう状態を引き起こします。

また、歯の汚れを見過ごしてしまうと、虫歯と歯周病の原因につながります。汚れには、歯の表面のぬめりも含まれます。この粘膜状のぬめりは細菌の塊です。これを、「バイオフィルム」といいます。

口の中を清潔にすることで、粘膜を正常に保ち、歯も健康に保つことが出来るのです。

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▲歯肉が腫れて自然に出血している状態

 

口の中の細菌は全て取り除くべきもの?

口の中の汚れは細菌の塊なので、少なくするほど肺炎の発症リスクも下がります。除去できる汚れに関しては、除去した方が良いでしょう。歯ブラシで落とせる汚れは、通常のブラッシングで除去してください。乾燥している汚れに関しては、保湿ジェルでふやかしてから除去するようにしましょう。力づくで無理にこすり剥がすと、粘膜ごとはがれて出血してしまう可能性があるからです。

では、口腔内の細菌を全て除去してしまうことが一概に良いかというとそうも言い切れません。確かに口の中に常在している500種類以上の細菌をすべて除去すれば誤嚥性肺炎のリスクはかなり下がります。

しかし、全ての細菌が悪い作用を引き起こすものでありません。虫歯や歯周病を起こしにくくする、善い細菌(常在菌)もいるのです。常在菌の役割は、口腔内の細菌のバランスを整えることです。そのため、口の中の細菌を全てなくしてしまうのは、口の中の健康状態を保つためにもオススメできません。

 

細菌とは上手に付き合っていきましょう

口の中の汚れが多いと、それだけ細菌の数が増える要因になります。汚れを長期間放置すると、粘膜の炎症を引き起こし、ひどい場合は自然に出血をおこします。虫歯と歯周病を進行させる可能性もあるため、取り除ける汚れは全て除去するのが理想的です。それが、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

汚れを落とすことが、健康に悪影響を及ぼす細菌を減らす一番の近道です。

ただし、口の中の全ての細菌が悪いものではありません。口の中を健康に保つために必要な細菌も存在します。そのことも、頭に入れておいてください。

 

参考文献

大阪大学歯学部付属病院HP
https://hospital.dent.osaka-u.ac.jp/diseases/diseases_000084.html

 

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writer
ikegawayuko

【執筆・監修】
池川 裕子(いけがわ・ゆうこ)
医療法人社団活生会 安寿歯科 院長
松本歯科大学卒業後、神奈川歯科大学にて研修。都内の訪問歯科クリニック勤務後、安寿歯科の院長に就任。
多職種の方々に対し口腔ケアの重要性の理解を広めるため首都圏を中心に幅広く活動しています。

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