歯の本数と全身の健康状態|在宅医療と口腔ケア(第3回)

口腔ケアが効果的に行われないと、歯が失われる原因となります。歯を失うと、食べ物をかみ砕くことが難しくなります。その結果、かみ砕けないと食事を丸のみするようになり、胃腸障害を起こす可能性が高くなります。
また、かみ合わせが安定しないと、転倒するリスクが高くなるといわれています。

歯の本数は口の中だけの問題と思われる方が多いですが、実は全身の健康状態とも深く関わっているのです。

歯は一本くらい失っても問題ないと思ってませんか?

実は、歯の位置は毎日変化しています。動いていないように見えるのは、かみ合わせがあるため固定されているからです。

例えば、どこかの歯が一本無くなったまま放置したとします。

そうすると…

無くなった歯の両隣の歯が、隙間側に倒れます。

無くなった歯のかんでいる側の歯も隙間側に伸びます。

全体的なかみ合わせも少しずつずれていきます。

かみ合わせがずれると顎関節にも影響を及ぼし、歯だけではなく、唇・頬・舌も歯の隙間部分を埋めるように伸びてくるのです。

 

たった一本の歯が、全体的なかみ合わせに影響を与えるということを知っておきましょう。

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▲歯が動き、かみ合わせがズレてしまった症例

 

かみ合わせがなくなると転びやすくなる

高齢になるほど歯の欠損数は増えます。厚生労働省の調査によれば、85歳以上で20本以上の歯がある人は全体の約2割弱。70歳を過ぎた頃から5割以下に落ち込む傾向にあります。

歯の健康が保たれ、かみ合わせが出来ている人と、そうではない人を比較すると、転倒リスクが2.5倍も高くなるといわれています。 歯の欠損により、かみ合わせが出来なくなると、転ぶリスクが高いといわれています。

※【参照】テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html

 

歯を失い、そのまま放っておいてしまうと転倒による骨折の可能性も高くなります。歯を失ってからの修復方法としては、入れ歯、ブリッジ、インプラントがあります。
保険適用できるものは、入れ歯、ブリッジです。早期に処置をすることでかみ合わせを維持することが可能になり、かみ合わせが安定すれば、転倒リスクを下げることにつながります

 

かみ合わせの安定が認知症リスクを下げる?

かみ合わせがある人と、そうでない人を比較すると、認知症の発症リスクも1.9倍、高まります。

かみ合わせがあることで、よく噛むことができ、首から上の神経がよく働くようになります。その結果、手先の運動とスムーズに連動できるようになり、認知症の予防効果が期待できるのです。

つまり、歯のある状態でよく噛んで食べることが認知症予防につながるということです。歯がない状態では、かみ合わせによる刺激が少なくなるため、脳神経への伝達もスムーズに行われづらくなってしまうのです。
かみ合わせがしっかり出来ている。それが、認知機能にはとても大切となります。

 

1本1本の歯の大切さを知り、細心の注意を払いましょう

たった一本の歯を失った場合でも、そのまま放置しておくと、口の中の全体的なかみ合わせがずれるなどの悪影響が出てきます。歯がない状態が長く続くと、食べ物を丸のみしやすく、胃腸障害を引き起こす可能性も高まります。

それだけではなく、転倒リスク、認知症発症リスクも増加します。失った歯を、そのまま抜けた状態で放置せず、適切な治療を行いかみ合わせの回復を行えるようケアしましょう。

義歯を入れる際も、口腔内の状態を考慮し、かみ合わせがしっかり出来る義歯を使用することが大切です。

 

参考文献

〇テーマパーク8020
https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html
〇厚生労働省(平成23年歯科疾患実態調査)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-23.html 

 

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writer
ikegawayuko

【執筆・監修】
池川 裕子(いけがわ・ゆうこ)
医療法人社団活生会 安寿歯科 院長
松本歯科大学卒業後、神奈川歯科大学にて研修。都内の訪問歯科クリニック勤務後、安寿歯科の院長に就任。
多職種の方々に対し口腔ケアの重要性の理解を広めるため首都圏を中心に幅広く活動しています。

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