歯の病気と全身疾患の関係性|在宅医療と口腔ケア(第5回)

歯周病や虫歯は口の中の病気です。「口の病気だから、死なない」と考えている人が多いのではないしょうか?
いいえ、実は死の危険もある、とても恐ろしい病気なのです。私の知り合いにも虫歯を放置して、その膿が爆発し細菌が血流にのって全身をかけめぐり、命を落としかけた人がいます。
そこまでの重篤なケースは稀ではあるものの、生活習慣病といわれる病気を増悪させる要因になるなど、全身の健康状態にかかわっていることが多いのです。

虫歯が引き金となり全身疾患へ

虫歯は進行すると歯の神経まで達してしまい、歯の神経に細菌が入ってしまいま。細菌が神経に達すると、神経そのものが死んでしまいます。そのまま放置しておくと、歯の根っこの先に膿が溜まり、膿が溜まっては治まるということを繰り返します。

その結果、膿の周りに膜を作ることがあります。
その膜が限界に達すると破れ、膿の中の細菌が血液の流れにのって、全身に運ばれます
。本来無菌であるはずの血管の中に、異物が運ばれている状態です。この状態を「菌血症」といいます。菌血症は病院で抗生剤の投与が必要になるほど重篤な状態です。菌血症が続くと、全身に炎症をもたらします。

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▲虫歯が進行し、歯根にまで達してしまった例

 

 

歯周病が原因で増悪する全身疾患

歯周病が進行すると、症状が悪化する全身疾患があることも最近わかってきました。
下記はその代表的な例です。

■ 糖尿病

歯周病の進行が、インスリンの効果を阻害する可能性があります。その結果、高血糖になってしまうケースもあります。

■ 循環器系の病気

歯周病菌が、血管を詰まらせる原因となる脂質に悪影響を及ぼすといわれています。心臓の内側の壁に歯周病菌が感染し、感染性心内膜炎を起こすことも知られています。

■ 骨粗鬆症

骨の代謝にも、歯周病は関与しています。骨粗鬆症は骨の量が減ってもろくなり、折れやすくなっている状態のことで、骨がもろくなりやすい要因に歯周病がかかわっています。

■ 誤嚥性肺炎

口腔内が不潔になると、それだけ歯周病菌が口の中に多く発生します。その細菌が気道から肺に入ると、誤嚥性肺炎になるリスクが高まります。

■ 関節リウマチ

歯周病と関節リウマチの関連性はまだ研究段階ですが、歯周病の症状が良くなると、関節リウマチも改善されるといわれています。

■ 低体重出生児

妊娠中に歯周病にかかると、体重2500kg以下の低体重出生児になる可能性があります。歯周病と闘おうとする免疫機能が働き、早産を引き起こすのではないかとされています。

 

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▲歯周病で歯肉が腫れている状態

 

全身疾患を治療すれば口の中の状態もよくなる?

口の中の病気である虫歯と歯周病が、全身疾患と密接に関係していることはわかって頂けたと思います。では、全身疾患の症状が良くなれば、歯周病の進行も防げるのでしょうか?

答えはNoです。必ずしもそうなるとは限りません。
実は、服用している薬によっても、歯周病が悪くなるケースがあるため、持病を抱えている人が歯周病にもかかった場合は、薬への配慮も必要になります。

歯周病の最大の原因は、細菌によるものです。
その細菌を取り除くには、歯のブラッシング以外に方法はありません。
全身疾患が改善されても、口の中の状態がよくなるわけではありませんが、逆に、歯周病を治療すると全身の病気も改善される可能性があります。歯周病の予防と治療は、それほど重要なことなのです。

 

虫歯や歯周病=口だけの病気という誤解は危険です

虫歯や歯周病は口の中の病気です。しかし、病気が進行することにより、細菌が血流にのって全身にめぐるというリスクが高まります。その結果、全身の病状を増悪させる可能性も生まれるのです。

特に歯周病は、多くの全身の病気と密接に関わっています。歯周病を治療すると、全身の病態も改善されます。ただし、全身の状態が良くなっても歯周病が治るわけではありません。
歯周病を改善する一番の近道は、あくまでも、毎日の歯のブラッシングです。

 

参考文献

■ 今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp/contentlist/153.html
朝日新聞出版「日本人はこうして歯を失っていく」
歯周病と関節リウマチ https://www.jdha.or.jp/pdf/perio_rheumatism.pdf
■ 歯科衛生士だより vol.25
歯周病から守る予防歯科(歯周病予防研究会)http://www.8020.ne.jp

 

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writer
ikegawayuko

【執筆・監修】
池川 裕子(いけがわ・ゆうこ)
医療法人社団活生会 安寿歯科 院長
松本歯科大学卒業後、神奈川歯科大学にて研修。都内の訪問歯科クリニック勤務後、安寿歯科の院長に就任。
多職種の方々に対し口腔ケアの重要性の理解を広めるため首都圏を中心に幅広く活動しています。

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