口腔ケアが肺炎を防ぐ第一歩|在宅医療と口腔ケア(第6回)

厚生労働省の「平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、死因の第3位が肺炎となっています。また、高齢者の肺炎のうち、70%以上が誤嚥に起因するといわれています。

高齢になるほど飲み込む力(嚥下機能)も低下するため、誤嚥性肺炎は繰り返しやすいことも問題視されています。今回は誤嚥性肺炎について解説します。

 

誤嚥性肺炎とは?

本来、口から何かを食べたり飲んだりすると、食道に入っていきます。それが何らかの原因で、食道ではなく、気道に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。誤嚥が原因で食べ物や唾液と共に細菌が肺に入りこんで、肺炎を引き起こすことがあります。

これが「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。

誤嚥性肺炎になる原因は、大きく分けて2つあります。

口の中のものが誤って気道に入る場合と、胃液などが逆流して気道に入る場合です。

健康な状態であれば、誤って気道に入ってしまった場合、咳き込んだりする反射機能が働き、気道から異物を外にだそうとします。誰でも夜に自分の唾液などを誤嚥している場合がありますが、誤嚥するのはわずかな量で、朝になって痰として吐き出すことができるため、肺炎には至りません。

しかし、加齢によって反射機能が低下していたり、誤嚥した量が多いと肺に入ってしまうのです。

また、特に高齢者や介護を必要としている人の中には、むせずに誤嚥してしまう「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」を起こす場合もあり、注意が必要です。

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なぜ誤嚥してしまうのか?

人は飲み込むときに、食べ物をかんで小さくします。それを唾液と交えて、団子状にまとめます。この塊を「食塊(しょっかい)」と呼び、食塊を飲み込むことで嚥下(えんげ・飲み込みのこと)がスムーズに行われます。

この食塊を形成する際に、歯の本数が少ない場合は、食べ物を小さくすることができません。

まとめられない大きさにしかならない場合、飲み込んだ時に喉で塊がばらけてしまう可能性が高くなります。よくある事例が、全くかみ合わせがない状態で「きざみ食」を提供されているケース。「はぐきでかめてるから大丈夫」とご本人やご家族、病院や施設の職員さんも誤った認識をしている場合があります。

かみ合わせが出来ていない場合は、それ以上食べ物を小さくすることができません。つまり、飲み込みやすい塊にできなければ、誤嚥する可能性もそれだけ高くなるのです。

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▲食塊ができずにバラバラになっている状態

何が原因で誤嚥するのか?

食べ物の場合、食塊形成がスムーズに行われないと、誤嚥するリスクが高くなります。食塊形成が上手くいかない理由として、次のような原因が考えられます。

・歯がないので細かくすることができない。

・噛む筋肉が弱く、歯はあるにもかかわらず、食べ物を細かくできない。

・唾液量が少ないため、まとめることができない。

・口周り、舌の筋力が低下し、まとめることが出来ない。

例えば、飲み込みがわるくなったから「きざみ食」にしたとします。
その場合、かみ合わせがきちんと出来なければ、提供された「きざみ食」のまま飲みこんでいることになります。

健康な人でも、「きざみ食」をそのまま、かまずに飲み込んでみれば、飲み込みが困難であることを実感するはずです。看護や介護をする人の症状や嚥下機能に合った食事を提供しないと、より誤嚥を誘発することになりかねません。

水にも誤嚥の危険があります

水などの飲み物の場合も誤嚥を起こす可能性が高く要注意です。

通常は水などを飲み込む時にのどに反応が起こります。老化や病気などが原因で、反応が鈍くなっていると、水の流れの速さに反応できず、肺に流れ込んでしまいます。この状態が誤嚥です。

その場合は、水にとろみをつけるなど、のどが反応しやすい状況を作ると誤嚥しにくくなります。

誤嚥性肺炎の予防は、健康状態に合わせた「食」から

日本人の死因第三位が肺炎で、肺炎の70%は誤嚥に起因しているといれています。

高齢者や病人の場合、のどの反応が鈍くなりやすく、特に水を飲み込む際に、のどが反能するよりも先に、水が肺に入ってしまう可能性があります。

食べ物の場合は、食塊形成がスムーズに行われないと誤嚥するリスクが高まります。「きざみ食」が誤嚥のリスクを誘発している場合もあるので、人ぞれぞれの健康状態に寄り添う食形態を提供して、誤嚥を予防しましょう。

 

参考文献

■ 第39号2013年7月高齢者と誤嚥性肺炎
http://www.cdej.gr.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/NewsLetterUpdate/uid000006_3230313330372D31302E706466

■ 一般社団法人 日本呼吸器学会HPより
http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=11

■ 厚生労働省 平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況

 

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writer
ikegawayuko

【執筆・監修】
池川 裕子(いけがわ・ゆうこ)
医療法人社団活生会 安寿歯科 院長
松本歯科大学卒業後、神奈川歯科大学にて研修。都内の訪問歯科クリニック勤務後、安寿歯科の院長に就任。
多職種の方々に対し口腔ケアの重要性の理解を広めるため首都圏を中心に幅広く活動しています。

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