口腔ケアの具体的な方法〜義歯の場合〜|在宅医療と口腔ケア(第8回)

前回(口腔ケアの具体的な方法〜歯が残っている場合〜に引き続き、「口腔清掃」のお話です。今回は、残っている歯が少ないケースについて解説します。欠損した歯を補う、義歯(入れ歯)やブリッジの清掃方法も説明します。

 

歯がない状態の清掃方法とは

歯がない状態とは、歯が1本だけ抜けてしまった状態、全く歯がない状態、両方をさします。正常な歯の本数以外の場合と考えてください。

歯が抜けている場合は、隣り合わせた歯の横の部分も見えますので、その部分にも歯ブラシをあてるようにします。歯ブラシが大きく、汚れ部分にピンポイントに毛先があたらない場合は、毛先の小さい「タフトブラシ」というものがあります。あるいは、「歯間ブラシ」で磨くと汚れている部分にあてやすくなります。

歯がない=汚れも少ないと勘違いしている人がいますが、それは間違いです。痰などが粘膜に乾燥して張り付いているケースが多くありますので、痰などはスポンジブラシで優しく清掃してください。

義歯(入れ歯)の清掃方法は?

義歯には、部分入れ歯総入れ歯があります。どちらの場合も、食事の度に、口から外して清掃するようにしてください。どれだけぴったりに作っても、義歯と粘膜の間には必ず食べ物が入り、そのままにしておくと、食べ物が腐ってしまいます。

部分入れ歯の場合は、義歯を支えている隣り合わせた歯も、よくブラッシングしてください。義歯を清掃する際は、義歯用のブラシなどでこすり洗いするようにしてください。見た目の汚れを落とすことに加えて、ぬめりをよく取るよう心がけてください。

注意しないといけないことは、歯磨き粉は使用してはいけないことです。

歯磨き粉には、義歯を削ってしまう成分となる研磨剤が入っています。

薬品を使って磨きたい場合は、研磨剤の入っていないものなら使用して構いません。日常的にある身近なものであれば、食器用の中性洗剤が該当します。

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食べ物のカスがついた入れ歯

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▲入れ歯の内側に付着している汚れ

清掃用具もきれいに扱いましょう

口の中の清掃も大切ですが、清掃道具の手入れもおろそかにしてはいけません。清掃用具が清潔に保たれていなければ、汚れをこすりつけていることになってしまいます。

特に、歯ブラシの毛の部分の根本に、食べ物の汚れが詰まっていることが多いので、きれいに落としてください。

歯ブラシなどは消毒液につける必要はありません。施設などで、もしも、全員分の清掃用具を一つのバットで消毒液つけている場合は、その方の病状によっては、他の人にも病気をうつしてしまう可能性があります。

1本ずつ丁寧に水洗いして、きちんと乾燥すれば、細菌の増殖リスクは減ります。どうしても汚れがとれない場合は、新しい歯ブラシと交換しましょう。

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▲汚れが付いたまま乾燥した歯ブラシ

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▲ぬめりがついたまま乾燥したコップ

義歯ケースについても、水だけ入れ替えて、ケース内面にぬめりが多く残っていることがあります。同様に、いつも使用しているコップの中も、ぬめりがついて乾燥している場合もあります。コップやケースなども、こすり洗いするようにしましょう。

 

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▲入れ歯と義歯ケースにカビがある状態

かみ合わせが出来ていない場合は歯科医師へ相談を

口腔清掃の介助を行う中で、思っているよりも歯がないことに気づく方もいらっしゃると思います。

その場合は放置せず、歯科医師へ相談してください。抜けた歯をそのまま放っておくと、歯が隙間を埋めようと動くようになります。

参考:【在宅医療と口腔ケア 第三回】歯の本数と全身の健康状態

全体のかみ合わせが変わってしまう前に対応すると、治療もスムーズになります。

揺れている歯や、欠けている歯の存在に気づいたらできるだけ早期に歯科医師に連絡してください。

私の知り合いの病院で揺れている歯が抜けて肺に入ってしまい、手術することになってしまったケースもあります。定期的に歯科医師に相談する環境を整えることも大切です。

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▲かみ合わせがない状態

ポイントを理解して、丁寧なケアを心がけましょう

歯がない状態の口腔ケアにもポイントがたくさんあります。

義歯は何か食べたら口の外に出して洗う。義歯ブラシなどで清掃し歯磨き粉は使用しない。入れ歯を支えている歯があれば、その歯も入念に磨くようにする、などです。

そして、意外と介護の現場で見落とされていることが清掃用具のケアです。ぜひこのコラムを読んだ方は気をつけて改善してほしいと思います。

歯が抜けたままになっているなど、口腔内の異常に気が付いた場合は、なるべく早めに歯科医師に相談することが大切です。

 

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