飲み込みの訓練について|在宅医療と口腔ケア(第9回)

口腔ケアには、「口腔清掃」と「口腔機能訓練」があります。
今回は、「口腔機能訓練」についてお話したいと思います。具体的には、首から上の運動を中心に解説いたします。

 

口腔機能訓練はなぜ行う必要があるのか?

通常、嚥下(飲み込む動作)神経の反射で起こります。反射と表現しているのは、意識と関係なく特定の刺激に対しておこる動作だからです。
誤嚥はこの反射が正常に機能せず、のどにある気管をふさぐ役割を担う蓋の開け閉めのタイミングがずれることで起きます。その一連の反射スピードは0.7秒といわれています。

嚥下にかかわっているのは筋肉なので、反射機能は、意識して鍛えることが可能です。訓練することで、鈍くなった反射機能を元の状態へ近づけるのです。
飲み込みが悪くなってしまう原因に、筋肉が凝り固まっている可能性もあります。その場合は、首周りのマッサージを行い、筋肉をほぐしてから訓練を行います。

口腔機能訓練の方法は?

嚥下機能を高める訓練には、さまざまな方法があります。

■ 深呼吸

浅い呼吸の場合、呼吸スピードが乱れると、誤嚥するリスクが高まります。

深呼吸をすることで、呼吸の乱れを修正すると同時に、「セロトニン」と呼ばれる幸せを感じる神経伝達物質の分泌を促すことが出来ます。

 

■ 舌の運動

飲み込む力が弱くなると、舌の動きも鈍くなることがあります。
舌を口から大きく出し、前後左右に動かしましょう。

また、最近注目されているのが「あいうべ体操」です。

(1)「あー」と口を大きく開く
(2)  「いー」と口を大きく横に広げる
(3)  「うー」と口を強く前に突き出す
(4)  「べー」と舌を突き出して下にのばす

この4つの体操を繰り返してください。

 

■ 口唇の運動

唇をタコのようにすぼめたり、「いー」と口角を横にひく運動です。

脳梗塞などを起こすと、唇を閉じれなくなります。飲み込むときに唇が開いてしまうため、唇を閉じる訓練になります。

 

■ 空咳

うまく飲み込めないと、ケホケホとむせることがあります。むせるということは、喉に溜まったものを排出する働きです。その排出する機能を向上させるために行います。

 

■ 首の運動

飲み込みを行う際、首の筋肉がとても重要です。

筋肉がうまく動かないと、誤嚥するリスクが上がります。首が凝っている場合は、ストレッチでほぐすと効果的です。首を前後左右に傾ける運動、首をゆっくりと回す運動などを行ってください。

 

■ 肩回し運動

首の運動とともに、肩回りの筋肉をほぐします。

ちなみに、腕を上げるだけで、肺活量は約15cc~30cc上がります。特に前から後ろへ肩を回す運動は、胸を張るため効果的です。

 

■ 発声練習

むせることが上手にできない人の場合は、「あー」と大きな声を発するだけでも、喉に溜まっている誤嚥の原因になりそうなものを排出しやすくなります。発声練習の延長で、「歌う」のもおすすめです。歌うことで脳の血流量も上がります。

 

上記以外にも多くの運動があります。

看護・介護する方の体力や状態に合わせて、取り入れてください。ただし、ご本人の体調に合わせ、くれぐれも無理のない範囲で運動を行うようにしてください。

嚥下機能は、機能訓練で鍛えることができる

嚥下は、反射機能の働きによってスムーズに行うことができます。反射機能そのものを訓練することはできませんが、反射を支えている筋肉を訓練することは可能です。そのための口腔ケアが「機能訓練」なのです。多彩な運動方法があるので、無理のない範囲で組み合わせて実施していきましょう。

参考文献

・岐阜県医師会
https://www.gifu.med.or.jp/radio/20101230_01.html

・サラヤ 福祉ナビ
http://pro.saraya.com/fukushi/kokucare/taiso/kinokunren/

・nanapi-メンタル-
https://nanapi.com/ja/113186

・あいうべ体操のブログ
http://www.aiube.com/

 

 

シリーズ全10回 リンク集

 

writer
ikegawayuko

【執筆・監修】
池川 裕子(いけがわ・ゆうこ)
医療法人社団活生会 安寿歯科 院長
松本歯科大学卒業後、神奈川歯科大学にて研修。都内の訪問歯科クリニック勤務後、安寿歯科の院長に就任。
多職種の方々に対し口腔ケアの重要性の理解を広めるため首都圏を中心に幅広く活動しています。

▶︎池川先生のインタビュー記事

▶︎医療法人社団活生会 安寿歯科のホームページ

【無料公開中】人気記事を資料にまとめました!

資料ダウンロード「感染予防」