【昨秋のプレスリリースを振り返る!】男性に下痢、女性に便秘が多い原因・神経伝達物質の性差を発見―2020年10~12月編

日々、医療介護のニュースを調査している編集部ですが、今回はいつものニュースまとめでは紹介しきれない、気になる新製品や研究成果のプレスリリースをご紹介します。注目のメディカル薬として、がん治療アプリの開発がはじまったほか、男性=下痢、女性=便秘のメカニズムを明らかにした研究報告など興味深い話題をご紹介します!

ちなみにプレスリリースとは、企業がメディア向けに発信する文書のこと。開発秘話や研究の背景など、発信者の想いがダイレクトに感じられるラブレターのような存在です。それでは早速見ていきましょう。

<開発編>CureApp、がん患者支援「治療アプリ」で第一三共との共同開発を開始(11/18

治療アプリの研究開発を行うCureAppは、1118日、第一三共株式会社と共同で、がん患者の治療を支援するスマートフォン・アプリの共同開発を開始すると発表しました。
薬物治療に取り組む患者のQOL向上につながるほか、患者の負担を軽減することで、薬剤治療の完遂、継続につながると期待されるとのことで、2021年度を目途に、乳がん患者を対象とした臨床試験を行う予定となっています。

がん治療において薬物療法を行う場合、全身状態や副作用をコントロールしながら治療を継続することが重要ですが、外来での治療が増えている今、副作用をタイムリーに発見し、刻々と変わる症状をケアすることが難しくなっています。
そこで治療アプリを用いることで、院外でも全身状態や副作用を素早く把握し、効果的に薬を投与することができるとのことです。
同社は、今回は乳がん患者を対象とするとのことですが、将来的には他のがん種にも適応を広げていきたいとしています。

CureApp社はがん以外にも様々な治療アプリの研究開発に取り組んでおり、同社が慶応義塾大学と共同開発した禁煙治療アプリが国内初のデジタル薬として8月に薬事承認を取得、121日に発売されたほか、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や高血圧治療、減酒支援アプリなどの開発に取り組んでいます。

株式会社CureAppCureApp、がん患者支援「治療アプリ®️」で第一三共との共同開発を開始https://cureapp.blogspot.com/2020/11/cureapp.html

<新製品編①>小児医療教育に活用、小児患者型ロボット「Pedia_Roid(ペディアロイド)」発表-手足をジタバタ、病状急変も再現(10/8

テムザックは、歯科での研修用の小児患者型ロボット「Pedia_Roid(ペディアロイド)」を開発したと発表しました。
治療を嫌がってジタバタと暴れる動作や、顔色や瞳孔、指先の色の変化、けいれんのほか、治療中の病状急変を再現できるとのことです。
ペディアロイドを使って、静脈採血や、急変時の心臓マッサージなどを行うことができ、臨床実習の機会が少ない小児治療の教育現場で、繰り返し実践練習を積むことに役立つと考えられます。

ペディアロイドは、年齢56歳を想定した、大きさ身長110 cm、体重23 kgのロボットで、パソコン、タブレットで無線操作することで、頭、口、舌、眼球、瞳孔、胸などの24カ所を動かすことができます。
また、遠隔操作で発話することもできるほか、歯を削ることもできるとのことです。

小児の医療現場における、子どもの治療の危険性についてはあまり認知されておらず、小児の全身管理は成人と異なり、一歩間違えれば死亡事故にもつながりかねません。
しかし、医療トレーニング現場で。小児の臨床実習ができる機会が少ないことから、教育現場でよりリアルに実践練習を積めるよう、ペディアロイドが開発されました。
具体的にどのように動くのかについては、YouTubeで紹介動画が公開されています。

現時点では、歯科分野に特化した機能が多くなっていますが、今後は内視鏡検査のシミュレーターなどの医療分野への展開も予定しているとのことです。

株式会社テムザック:小児医療トレーニングに革命を起こす!リアルな体感型ロボット!小児患者型ロボット「Pedia_Roid(ペディアロイド)」発表
https://www.tmsuk.co.jp/wp-content/uploads/2020/10/691bb3afb1cdb1973a1861f1d87bdd08.pdf

<研究編①>高齢者の3分の1がパーキンソン病・レビー小体型認知症とその予備-都健康長寿医療センター(11/5

日本医療研究開発機構(AMED)は、115日、東京都健康長寿医療センターによる研究の結果、高齢者の剖検例の3分の1がパーキンソン病・レビー小体型認知症とその予備群であり、食道病変が進行を反映し、重症度を予測できることを明らかにしました。
この研究は、2020115日付で「Acta Neuropathologica」にオンラインにて掲載されました。

パーキンソン病、レビー小体型認知症は、大脳皮質にαシヌクレインが異常なたんぱく質となり蓄積され、レビー小体が形成されることで発症し、手足のふるえや体のこわばりといった運動症状に加えて、消化器症状を含む自律神経障害や睡眠障害などの非運動症状が現れます。
このような非運動症状が運動症状に先行しうることが注目されていますが、病気の発症前の末梢神経系のレビー病理像や進行に伴う変化はわかっていませんでした。

そこで、研究グループは高齢者の連続開頭剖検例を対象に、消化器症状の原因と考えられる消化管神経系を中心に解析。2008年から18年までの高齢者ブレインバンク518登録例(死亡時年齢65歳以上、平均80歳の年齢層を対象)を対象に末梢神経系(交感神経節、心臓、食道、副腎、皮膚)のレビー小体関連病理(レビー病理)の出現を、脳におけるひろがりと共に解析しました。

その結果、高齢者の3分の1にレビー病理が見られること、食道病変は病変の進行を最も反映し、食道壁内の固有筋層や外膜に多いこと、さらに食道レビー病理を有する高齢者では、自律神経症状が多いことを明らかにしました。

研究チームは、今後レビー小体病の非運動症状や消化器症状の病態解明及び治療法開発において、神経病理学的基礎になると考えられる、としています。

日本医療研究開発機構:高齢者の1/3はパーキンソン病・レビー小体型認知症及びその予備群で、食道病変は重症度を反映する
https://www.amed.go.jp/news/release_20201105.html

 

<研究編②>男性に下痢、女性に便秘が多い原因・神経伝達物質の性差を発見-岐阜大学(12/25

岐阜大学は、1225日、ラットの大腸内に痛みの刺激を与えた場合、オスでは排便と関連する大腸の動きが誘発されるが、メスでは誘発されないことを確認したと発表しました。
大腸が痛みを感じたときに、これを緩和するために、脳から脊髄に下行性疼痛抑制経路を通じて供給される神経伝達物質の成分がオスとメスで異なるため、排便異常にも性差が現れるとのことです。
過敏性腸症候群などの病態解明に近づくことが期待されます。

この研究は岐阜大学応用生物科学部 志水泰武教授によるもので、1221日付で「The Journal of Physiology」に掲載されました。

今回の研究では、オスとメスのラットに麻酔をかけた状態で実験を行い、大腸内にカプサイシンによる痛みを与えた場合に、オスのラットでは大腸運動が促進される一方で、メスのラットでは促進されないことが確認されました。

同時に、大腸内の痛みが脳に伝わると、痛みの緩和のために、下行性疼痛抑制経路を通じて脊髄に放出される神経伝達物質が、オスとメスで異なることも確認しました。
オスでは、ドパミンやセロトニンが放出され、これらが脊髄の排便中枢を活性化し大腸運動を促進しますが、メスでは、セロトニンと GABA が放出され、結果として大腸運動を促進しないことがわかりました。
GABA が脊髄排便中枢を抑制し、セロトニンによる活性化の効果を打ち消しているためだと考えられます。

この研究で、男性には下痢が多く、女性には便秘が多いという排便異常に性差が現れるメカニズムの一端が明らかになり、将来的にはストレスによって発生する下痢や便秘を改善する薬を性別に合わせて選択することにつながることが期待されると研究チームは述べています。

岐阜大学:男性に下痢、女性に便秘が多い原因・神経伝達物質の性差を発見-岐阜大学 応用生物科学部 志水泰武教授 “The Journal of Physiology”に論文掲載
https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20201225.pdf

 

<研究編③>腸内細菌叢を除去すると睡眠の質が低下する-筑波大学(11/17

筑波大学、慶應義塾大学は、1117日、腸内細菌叢を除去すると睡眠の質が低下する可能性があるとの研究結果を報告しました。
この研究は、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らによるもので、「Scientific Reports」に掲載されました。

腸内細菌叢は、脳と相互に影響を及ぼしあっていることが明らかにおり、この関係は「脳腸相関」として近年注目が集まっています。研究チームは、睡眠も脳機能の一つであり、腸内環境から影響を受けている可能性があることに着目。
慢性的な抗生物質投与によって腸内細菌叢を除去したマウスを用いて、腸内細菌叢と睡眠の関係について調べました。

今回の研究では、4種の抗生物質を水に混ぜて4週間経口投与し、腸内細菌叢を除去したマウスと、正常なマウスを用いて、盲腸内容物のメタボローム解析を行いました。
その結果、腸内細菌叢除去マウスでは、正常なマウスと比較して神経伝達物質合成に関係するアミノ酸の代謝経路に有意な変動が認められました。
特にビタミンB6が有意に減少し、神経機能を調節するセロトニンが枯渇した一方、神経細胞の活動を抑えるグリシンとγアミノ酪酸(GABA)には有意な増加が認められました。

続いて、脳波と筋電図を指標として睡眠を解析すると、腸内細菌叢除去マウスでは、正常なマウスと比較して日中(マウスの睡眠期)のノンレム睡眠が減り、夜間(マウスの活動期)にはノンレム睡眠とレム睡眠が増えており、睡眠・覚醒の昼夜のメリハリが弱まっていました。
脳波を分析すると、覚醒中の脳については有意な違いは見られなかったものの、大脳皮質の活動が活発なレム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波が減少していることが分かりました。
以上のことから、腸内細菌叢の除去が睡眠の質を低下させる可能性が示唆されました。

研究チームは、今後、どのような代謝物質・情報伝達経路を経て睡眠に影響を及ぼすのか、また睡眠不足に陥ったときにどのような作用をもたらすかなど、更に研究を進めていくと述べています。

メタボローム解析:有機酸やアミノ酸、短鎖脂肪酸など、腸内細菌の代謝産物を網羅的に解析する手法。

筑波大学:腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20201117200209.html

 

 

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